第32話 発見

 ──その化け物は、象のようなとても巨大な動物の胴体を持っていた。

 ――その化け物は、ライオンの顔に悪魔のような恐ろしい形をした牛の角を生やしていた。

 ――その化け物は、雷をまとった巨大な鳥の羽と鋭い牙が特徴の巨大な大蛇を尻尾として持ち、炎を纏った猪のような動物の足と龍のように長い首も持っていた。



 ……………一言で言うなら、それはまさにギリシャ神話に出てくるキマイラって感じの恐ろしさだった。






 しかし、前の世界の神話に出てくるキマイラと違って今、目の前にいるこの合成獣はアランの想像をはるかに超えていた。

 なにせこのキマイラは、現実世界の神話に登場したものとは、全然違う。羽にはビリビリと、触れただけで感電してしまいそうな位にはっきりと雷が見えていて、しかも何故かこのキマイラの足はゴウゴウと青い炎が燃え盛っている。


「…………おっ、おぉ! すげぇ迫力だ! コイツを俺が…………。よっしゃ! いくぜぇぇぇ!!!」


 ――叫ぶと同時に、アランはグレネードランチャーを構え、いきなりキマイラの顔面目掛けてぶっ放した……!!


「ギゅゥルルるオオオぉぉォぉぉぉォォぉぉああア!!!」

 キマイラの顔面に弾がぶつかると同時に、爆発が起こる。その爆発と共にキマイラは物凄い大きく煙が黙々するその空間で雄たけびをあげだす。




「……へへっ。......もっいっぱぁーつ!!」


 アランの手に持つグレネードランチャーから凄まじい発射音が鳴り、再びキマイラの顔面を爆発と煙が覆いつくす。――キマイラは、動物の本能的に顔をフルフルと横に振って、煙をはらおうとする。

 ────そして、さっきと同じように大きく叫んでいた。




「…………へへっ! 隙ありだぜぇ! ごちゃまぜ野郎ォ!」

 キマイラが、再び臨戦態勢を取りだす前に、アランは手に持っていたグレネードランチャーを背中にしまい、ガンベルトから2丁の拳銃とマグナムを取り出し、キマイラの背後に回った後、大蛇の顔面目掛けてそれらを限界まで撃ちまくった。







「…………!!」

 しかし、彼が銃弾を撃っていると、大蛇はクネクネした動きでそれらを躱して、アランのすぐ傍まで詰め寄った!


「…………やっべ!」




 ――あっという間に、彼の体は大蛇に縛られてしまい、そのまま地面から足が離れていってしまうのだった。



「んぐぅ…………!!」

 彼の頭に着けていたヘルメットと、背中にあるグレネードランチャーが地面へ落ちる。


 ――――まずい!


 そう思った彼は、すぐに詠唱を唱えだす。



「クローポ・クリフォティーゴ!!」


 その瞬間、彼の体の筋肉が更に、より膨らみだす…………!! 





 ――――体に巻き付いた大蛇の体の圧力が少し弱まったその瞬間、アランは思いっきり体全身に力を込めて、大蛇を払いのけようとする。








「…………グジュるぅぅぅぅしゃアアアアアアアアァァァァ!!!!」


 大蛇は、苦しそうな鳴き声と共にアランの体を離れた………。それと同時に、それまで宙に浮いていた彼の体が急落下していく。

「いってぇ! ………ったく危ない所だったぜ! まっ、けど俺の身体強化魔法の方が上っていうのが、今の出はっきりと分かったぞ。ブラ公!」


 彼は、すぐに地面に落ちていたグレネードランチャーを拾い、一度距離を取った。


 ――――そして………。



「こっからは、魔法攻撃で行くぜぇ!」


 刹那、アランの右手が光りだす……。




「………オラァ! いくぜ! トンドロ・アトリブートォォォォ!!」



 ――――右の掌から光の球が生まれ、光の球体から次第に強い電力エネルギーが溢れ出す。雷は、徐々にその威力を強めていき………そして、アランの手を完全に離れる頃には、雷の球体と化したそれは、掌サイズだった頃がまるで嘘のように大きくなっていて、そしてその巨大化した雷の球体から凄まじい音と共に一閃の落雷が、キマイラに向かって神の裁きと言わんばかりの勢いで走り出す………!!











 雷がキマイラの体に当たると、その瞬間………目を焼くような強い光がアランの視界を一瞬だけ奪う。




「…………やったか!?」

 ――アランが目を開けると、そこには驚くべき光景が広がっていた。



「…………なっ!?」



 ――――あれだけの手ごたえと威力だってのに、マジかよ!?



 なんと、そこにはさっきと変わらない無傷のキマイラが立っていた。………キマイラの背中に生える雷を纏った羽が、怪しく上下に動いた後、キマイラは再び雄たけびを上げだす。




「…………雷は、効かねぇ感じか!?」


 アランは、キマイラの羽を睨みながら、更に距離をとるべく、ダンジョンの奥へと後退する。


 しかし………。


「…………ドビゅるゥゥああアあァァァ!!!!」


 キマイラは、彼を追い続ける。――足に纏わる炎をゴウゴウと燃やしまくって、合成獣はそのスピードを加速させ続ける。



「…………フラーモ・アトリブート!」


 彼は、追いかけてくるその合成獣へ魔法をぶつけまくった。……右手から熱を帯びた球体を出現させ、それを掌からキマイラに向けて浴びせる! しかし、獣の足は全く止まる事を知らず、彼を追い続ける。





 ――――くっそ。こうなったら、これで……。


「…………ローコー・アトリブート!」


 アランの掌からゴツゴツした岩でできた球体が出現する。――そしてそれが、徐々に硬さを増して行き、彼の手を離れる頃には、とてつもない大きさとなって、キマイラの燃える炎の足に向かって放たれた。




「……頼む。これで、足止めを…………」











 ――――しかし、その攻撃も無意味に終わる。




「…………!?」


 キマイラの炎を纏った前足がアランの放った巨大な岩の塊を弾き飛ばす。その岩の塊は、相当硬かったためか、そのまま岩はダンジョンの大きな壁へとぶつかっていく……。







 ――――ドガンッ! と岩の塊が衝突する音が洞窟内の全域に響き渡り、そこから物凄い勢いでダンジョンの壁が岩の塊によって破壊されていく…………。




「…………なっ、まっまじかよ!?」


 そのあまりに突然の事に、彼は驚いてすぐに身体強化の魔法を自分にかけて、安全な場所へ逃げ出す。













 ―――ダンジョンの壁の崩壊が終わりを迎える頃、逃げ終えたアランの元に何か異様なものが落ちてくる………。



「…………こっこれは!?」


 アランがそれを拾ってみると、彼は途端に驚いて、口をぽっかりと開けるのだった。






 ――――それは、何か看板のようなものの切れ端のようだった。そこには、彼がここ最近何度も見続けてきた何となく読めるこの世界の文字は書かれていなかった。



「…………」







 ………………そこには、明らかに漢字で「電気街」と書かれていたのだった。



 


 

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