第13話 勇者になろう!③
それから、次の日になってアランは、とうとうお金が尽きてしまう。仕方なくホテルを出ていく事にし、彼は夜の異世界で一夜を過ごさねばならなくなった。…………だが、だからといって外で寝たくはなかった彼は、とりあえずダスティンと初めて出会ったバーに寄る事にして、そこで今夜の寝床について考えていた。
「…………」
彼は、黙ってこの店のいっちばん安い酒を一番小さいサイズで頼んで、飲んでいた。…………正直酒の味は、いまいちだった。だがしかし、それでも今のお金を全然持っていない彼にとってこれは、かなり嬉しい誤算だった。正直、酒を一杯でも楽しめるだけのお金がまだ残っていたという事がこれほど喜ばしいものだったとは、前の世界では想像もできない事だ。
「…………」
彼は、手に持ったグラスを一度テーブルにおいてジーっと考える。
――しかし、やはりこの状況をどうにかできる方法は思いつかない。
「お金があればなぁ…………」
そうして、彼が大きくため息をついたその時……彼の隣に誰かが座ってくる。
「…………はぁ~い」
その人は、長身で長くてサラサラした金髪が特徴的な少し低い声をした女性だった。
「あなたは!」
彼女の存在に驚き、彼は軽く頭を下げた。
「…………どうしたの? そんな暗い顔しちゃって。…………あっ、もしかして
「…………いや、アイツは別になんもやってない。ただ、その…………そうじゃなくて…………」
そう言うと、彼は下を向いて何も言えずに沈んでいった。
女性は、アランの絶望しきった顔を見て少し心配そうに尋ねる。
「どうしたの? …………あっ、もしかしてお金かい?」
「…………」
「…………なるほどねぇ。そりゃお金がないと困るよねぇ。うんうん」
女性は、腕を組んで納得したような感じで頷いてくれた。…………本当にたったそれだけだったのに、彼にとってこれがこの上なく嬉しかった。
少しして女性は、手に持ったグラスをテーブルに置いて話し出す。
「…………だったらさ、うちくる?」
「え?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます