第29話

 街を抜けた先の道、生い茂る木々の連なる道を抜け自然に囲まれた森に差し掛かる。


 「車で進めるのはここまでだ、誰だか知らんが随分と距離を置くのが好きらしい。」

森の入り口に生える大木によって通せんぼされ、大きな道を塞がれてしまっている。さっきまで道路であった道が突然境目をつくり森に変わっている。これでは幾ら距離を取り人里を離れても気付かれそうなものだが、それでも尚ひっそりと暮らせているのであれば単純に人々に好まれない場所なのだろう。


「本当にここで合ってますか?」


「‥ああ、パトカーのカーナビだからな」

市民を守り秩序を保つ権力の所有物に誤報を認識させる筈は無い。間違っていたとすればラーメン屋の親父が教えた住所の誤りだ。


「仕方ない、ここからは歩いていこう」

パトカーを降り木の生える隅のを歩く。少し油断すれば簡単に転びそうな細道だがなぜこの場所を店主が知っていたのだろう?


「一度来た事があるんですかね、おじちゃん」


「..さぁな、住所だけ控えておいたのだろう。

仮にもお前の親だからな、子供に教えたくない事の一つや二つあっても無理はない」

刑事ゆえの視点だろうか、親が子に言えない事があるのが普通と捉えている。それが正式な感覚か、図るのは難しい。彼もまた、偏った普通を常識としてきたからだ。


「みんな普通でみんな異常ですね。」


「…何の話だ。着いたぞ、ここが城らしい」

木々少し掻き分けた先の広間にポツンと家がある。ここにルーツがあるというのか?


「入るぞ」


「勝手に入って大丈夫ですか?」


「‥権力がある。」

胸の小さな隙間から、警察手帳を取り出して見せつける。警察の証明を持ってすれば突撃も捜査の一環となる、便利なものだ。


「チャイムは無いか、仕方ない」

入り口の扉を思い切り蹴飛ばす、本人はあくまでも積極的なノックをしたつもりだ。


「…は、誰だあんたら?」

歯の抜けた痩せこけた女が唖然とこちらを見ては当然の質問をする。


「みればわかるだろう、警察だ」


「…はぁ〜? けいさつ〜!?」


「少し話を聞かせてもらおうか」

既に手帳は出している、あとは事に及ぶだけ


「一体何をあたしなんかに聞きたいってんだろうね、変な連中だよっ!」


「オレの過去についてです。ラーメン屋のおじちゃんから聞いてここに来ました、アナタなら全てを知っていると!」


「……」

察したのか黙こくって下を向いている。


「教えてもらうぞ、洗いざらいな」


「‥ちっ、わかったよぉ。」

観念したのかゆっくりと口を開いた

語られたのは、忘れられた幼少の記憶。


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