第2話

先日本棚を整理していたところ、奥からある原稿を見つけた。その原稿が1話目に記した『シーラ・ベルと雪の番人キラト』である。

作者は小学五年生の自分。つまり7年前の自分。"駅"を"験"と間違え、ひらがなは多く、分かりにくいところも多い。主語だって古文並みに省かれている。ドラゴンを簡単に倒してしまったり突然タクシーで瞬間移動してしまったりとツッコミどころも満載。更に主人公の名前が某ゲームのキャラから取られているのがなんとも言えない。

それでも『シーラ・ベルと雪の番人キラト』という作品を読んで何処か魅力を感じるのは、沢山の謎がこの作品に残されているからだろうか。

この後二人で何か事件を解決するのか?女神はどうなったのか?炎の番人はまた出てくる?シーラ・ベルも超能力を使えなくなるのか?その他諸々。

「これどういう事!?」と叫びたくなるくらい気になる謎が沢山あるのだ。みんなにこの作品を布教して考察大会なんてしたら絶対楽しい。

続編でその謎について言及されるのだろうか。きっとこの謎が次々と明かされる続編は最高に面白いに違いない。

しかし続編はない。多分当時の自分なら書こうと思えば書けたはずだ。しかしどれだけ探しても続編はない。

7年前の自分が続編を書かなかった経緯や理由は多分こうだと思う。

この物語は学校の国語の「物語の作者になろう」みたいな授業で書いた話だった。その授業の最後にクラスメイトの作品を読み合う時間があったのだが、自分の書いた『シーラ・ベルと雪の番人キラト』は誰にも読まれなかった。原稿用紙7枚のそれは周りにただの長い話にしか見えなかったらしい。【みてくれてありがとう!】の文字を見た人は誰もいなかったのだ。考察大会はもちろん開かれなかった。今思い出したが、先生に渡しても「長い」と言われ最後まで読んではくれなかった。

誰にも読まれなかったことがショックだったから、続編を書けばさらに長くなるから、だから続編を書かなかったのだと思う。単純に「これは授業で書いた話だから」と言って書かなかった可能性もあるが。


どうにかして続編を読みたい。どうすれば読めるのだろうか。今の自分が続編を書くか?いや、それは7年前の自分が書いたものにはならない。じゃあ諦めるか?いや、それはなんだか嫌だ。

ならこうするしかない。

自分が作中のキャラのようにちょうのう力「TP-テレポート-」を使おう。そして小学五年生の自分の元に行ってこう言おう。

「7年後の自分はこの話を読みました。あとカクヨムってサイトにこの原稿を載せたから多分他の人も読んでくれてます。だから続編を書いてください!!」

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『シーラ・ベルと雪の番人キラト』 旅音。 @tabi_666_

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