第115話 悪夢

 目が覚めると夜の9時だった。


 いつのまにか眠っていたらしい。とりあえずテレビをつけると、ニュースが始まったところだった。アナウンサーが最初のニュースを読み始める。

 その内容は、俺にとって最悪のものだった。


 東証マザーズに上場するサクセスバイオが倒産しました。


「ウソだろ……。やめてくれ! それだけはやめてくれ!!」

 テレビに向かて絶叫すると朝になった。


 ノートパソコンで注文状況をチェックする。サクセスバイオには途方もない売り注文が殺到していた。

 売り注文がドンドン増えていく。100万、1000万、1億……。止まらない! 売りが止まらない!!


「俺が悪かった! やめろ!! もうやめてくれ!!!」


 ベッドの中で体がビクンと弾け、同時に目が覚める。

「夢か……」

 体中が汗でベトベトだ。時計を確認すると午後9時だった。


 恐る恐るリモコンに手を伸ばしテレビをつける。

 サクセスバイオが倒産したというニュースは流れない。ネットを検索してもそんなニュースはない。


 よかった。それにしても酷い夢だった……。

 

 ホッと息をついたが、心臓はまだバクバクしている。

「ハハッ……」

 口元から乾いた笑いが漏れた。いったい、なにやってんだ、俺は……。


 なんだかいろいろ馬鹿らしくなったので、コンビニに酒を買いに行った。昨日からろくに食べていないので、ツマミも買い込んだ。

 部屋に戻って酒とツマミを胃に流し込む。味はよくわからない。テレビのバラエティー番組を見ているが、内容はまったく頭に入ってこない。


 脳みそが、考えるのを拒否している。でもそれでいい。

 いくら悩んでも、俺の運命は変わらない。俺の力じゃどうにもならない。サクセスバイオの株価がどうなるのか。俺はいくらマイナスを出すのか。借金を背負うのか。


 もうなるようにしかならない。

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