Episode:4 真実と反乱

 イリミスとの協力関係を築いたことで、本格的に作戦会議が始まった。

 この会議には、数名ながら『反乱軍』の者も参加している。


「それでは、今一度我々の目的を確認しましょう」


 反乱軍の団長を務めている、マルクスが話を切り出す。

 どこから用意してきたんだが、巨大な机の上にこれまた巨大な地図を乗せて説明する。


「我々はこの地図の…丁度この川を境に争っています。」


 その川は、この島を見事両断するように流れている。


「戦力差はどれくらい?この国の状況を見ると、今にも敗北寸前ってわけじゃなさそうだけど」


「一般的な兵の数であれば、むしろこちらが優位に立っています。ですが、その…あちらには怪物の如き戦士が数名…」


「それについては私から、彼らは突然戦場に現れました。それまでの戦況は我々が有利で、支配地ももっと広かったのです。それが、このサベーレまで押し返されて、かと思えば彼らはパタリと戦場から姿を消したそうです。これが私がこの世界に来る数日前のことです」


(数日前のことなんかーい!)


「待って、イリミスが来るより先に敵は現れてたの?」


「はい、そうなのです。ファリアさんも気づきましたか」


 理解の遅いフィリヤだけが、イリミスとファリアの顔を交互に見る。


「初めは…戦争自体がこの世界における"異常"なのかと思ってた。でも、おそらくその神の登場がなんだ。」


「えぇ、そうです。そうすると生まれる新たな疑問が、何故彼らは現れたのか」


「……きっと強引な召喚によるものでしょうね、理性なんぞ消し去られてるでしょうに。…これではっきりしたわね、現状私達の目的はその召喚された神の討伐」


「はい、私達としても異論はありません。……ただ、フィリヤさん達がこの世界に現れたことは、おそらく彼らも気づいているでしょう。そう遠くないうちに、何かしらのアクションを起こしてくるはずです。」


 イリミス達が作戦を練っていた間、フィリヤが何もしていなかったかと言うとそうではない。

 先程マルクスが用意した地図を眺め、彼にこの島の現状を教えてもらっていた。

 専門的な話はファリアに任せっきりだが、こういった基礎的な情報ならフィリヤでも理解できる。


 現在、この島は二つの勢力に分断されている。

 イリミス率いる反乱軍と島の北側を支配する侵略軍(マルクス達はそう呼んでいた)

 元はただの勢力争いが発展した戦争だったのだが、そこに神々が登場し盤面を狂わせてしまったのだ。

 それに対抗する存在として、イリミスが呼ばれた。

 反乱軍にとって、一騎当千の如く彼女はまさしく神のように見えたのだそうだ。


「あれ?じゃあイリミスは誰と契約したの?」


 素朴な疑問を投げかける。

 丁度イリミス達の話もまとまったようだったからだ。


「あぁ、私に契約者たる存在はいませんよ。強いて言うならこの土地の嘆き、ですかね」


「ベリトロームみたいなものか」とフィリヤが納得仕掛けた時


「それはおかしい、ベリトロームが独りで呼ばれたのは、あの場所が既に滅んでいたからだ。通常の契約において神の単身での顕現はあり得ない!」


 広い玉座の間だったが、その場全体に響き渡るような声でファリアが叫ぶ。

 この場にいるもの全ての視線がファリアに集まる。

 そして彼女の視線の先には、 目を瞑り機会を伺い、口を閉ざす一人の少女がいた。

 綺羅びやかなこの場所に似つかわしくない、僅かながらの静寂を挟み、少女…イリミスは口を開く。


「えぇ、その通りです。……この世界も、崩壊を始めているのですよ」

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