起
今にでも「グワァァ」と叫び声を上げそうな、化け物としか形容できない生物を目の前にフィリヤ達はいる。
「いい、フィリヤ?これが世界の崩壊の影響で生まれてしまった悲しい生き物。…もう休ませてあげましょ。」
「そんな可哀想な…いや、可哀想ではないか」
フィリヤは順々とこの状況に慣れていっていた。
ちなみにこの化け物は、先程お化け屋敷もびっくりの登場をして、彼女ら(主にフィリヤ)の心臓を脅かしている。
そして、誰かさんの甲高い叫び声に釣られて他にもこんな化け物が現れないように、今すぐにでもここから離れたいところ。
ということで絶賛戦闘開始なのだが…
「ファリアってー!やっぱり強いのー!?」
悲しき化け物相手に蹴りを入れているファリアに語りかける。
「えぇー!人並みにはねー!」
ドゴッ、バキッ、と化け物くんから奏でられる悲痛な音の合間に返事が聞こえる。
危ないからという理由で遠目から戦闘を見守るフィリヤは、思わず「うわぁ…」と声を洩らす。
だってグロいんですもの。
サンドバッグ状態の化け物くんは、ある程度殴られた後、動かなくなる。
「さて、戦闘終了ってところね」
「お、お疲れ様…」
「………ちょっと引いてない?」
「いや、別に、ソンナコトナイデスヨ」
隠す気のないカタコトで返答する。
「言っとくけどね、これからはそんな事言ってられないような危機が、普通に襲ってくるんだからね」
ため息とともに、愚痴のように言う。
「やっぱり…さっき言ってたみたいに?」
「そうね…少なくともここから出るには、あそこにいる奴をなんとかしなきゃだし…感じるでしょ?」
「うん…なんとなくだけど、強い…オーラ?みたいな…」
「じゃあ、さっきも行った通り、当面の目的はあの場所にいる奴を倒す、もしくは無力化すること。OK?」
「OK!」
元気の良い返事を合図に、二人は歩き出す。
二人が悲しき化け物と出会う数分前
フィリヤの体力が完全に回復したことで、二人は歩き始める。
「こうやって見ると…随分と廃墟、って感じだよね」
「えぇ、そうね。分かってると思うけど、この世界はもう滅んでるわ」
「うん………。っえ?」
唐突に告げられた残酷な終了宣告に、戸惑いを隠せない。
「ちょっと待って!世界が滅んだ、って…嘘でしょ!?この場所だけ、とかじゃなくて!?」
「あぁ、やっぱり気づいてはいなかったのね……そうよ、この世界は滅んだ、これはもう変えようのない事実なのよ」
冷淡に、それでいてフィリヤをパニックにさせないよう優しく。
それからフィリヤが落ち着くのを少し待って、何が起こったのかを伝える。
曰く、何らかの方法で一度世界は滅ぼされた。
人類然り多数の生物が絶滅した。
そうでない者は…後にフィリヤ達が見ることになる、悲しい生き物、となってしまった。
理性を失い、身体はボロボロ、とうに人とは言えない姿になりつつも、かろうじて命を繋いでいる。
そんな中、フィリヤだけが偶然にも助かってしまった。
そして、フィリヤの願う声に導かれたのが、ファリア、というわけだ。
「言うまいか迷ってたんだけどさ、ファリアって何者なの?」
好機、とばかりにフィリヤは最も重要な質問をぶつける。
「私は…世界を守る存在、の様なもの。本来は世界の異常事態を止めるために、私を呼ぶ願った存在とともに異常を防ぐ。…なんだけど今回ばかりは異常も異常だった。なんせ一度世界が滅んだあとなんですもの。」
難しい授業を受けるかの様に、必死に頭を整理しながらファリアの話を聞く。
世界の異常事態だなんて、スケールが大きすぎてまだ実感がわかない。
でも、やっぱりファリアが嘘や冗談を言ってるようには思えなかった。
「それって、神様ってこと?」
「そう、そうね。君たちの言う神なんだよ、私は」
その言葉を噛みしめる。
そんな彼女を見て、ファリアは微笑む。
(あぁ…
「フィリヤ、今私達が向かうべきはどこだと思う?」
少し暗くなった雰囲気をかき消すため、いつもより明るく話しかける。
「そうね〜、………えっとー、世界は滅んじゃったんだよね?………何処に行けばいいの!!?」
ファリアの努力虚しく、事態の深刻さは際限なく彼女らに襲いかかる。
「とりあえずはね、この世界からの脱出をしなきゃいけない。言うなれば別の世界に逃げるってことかな」
「…!できるの!?」
「当然、というかそれしかできることがないわ」
ファリア曰く、それが最終手段なのだと。
「あの大きな塔が見える?かろうじて建物としての姿を保っているあれ。おそらくあそこにこの異常事態の黒幕がいる。それを倒してから、別の世界でゆっくりとこれからどうするかを考えると良いわ。」
どこか、ファリアの言葉はどこか他人事で、まるで「別の世界には一緒に行けない。」と言っているみたいだった。
でも、フィリヤにそれを指摘する余裕も勇気もない。
時は戻って、悲しき化け物との戦闘終了後
目的の塔が目前に迫っていた。
何回かの戦闘はあったが、どれも危機と呼べるものではなかった。
しかし、人生というものは残念ながら、そう平坦には進んでいかないのだ。
「よぉ、嬢ちゃん達。こんなところで何してる?」
残念なことに、フィリヤの叫び声に釣られて出てきたのは、化け物達だけではなかったようだった。
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