参【夏の大三角】
探偵は机の上にこの街の地図を広げると、片手にペン、もう一方の手に二枚目の予告状を持って話し始めた。
「この三行はそれぞれ場所を表していたんだ」
「場所ですか?一体どういう……」
僕が呆気に取られていると探偵はある所に丸をつけた。我らが探偵事務所『陰居』だ。
「まず '陰の上に横たわる人間' だが、陰っていうのは恐らく家のことだ。陰がつく建物はこの街にはここ以外ないからな。
そして横たわる人間ってのは……」
探偵は説明をしながら予告状を僕に手渡した。
そして今度は自身のスマホで何かを調べ始めた。
「よし、ビンゴだ」
探偵はスマホを机の上に置いた。画面には外国 人向けの地図記号一覧が写っていた。
「あっっ」
「もうわかっただろう、つまりこの二枚目の予告状は場所にまつわる情報が書かれていたんだ。横たわる人間はホテルの地図記号だから……」
探偵は地図上で事務所の上にくるホテルを探し始めた。
陰の上に横たわる人間とは探偵事務所『陰居』の上のホテル(地図記号)という意味だったのだ。
「あった!帝刻ホテル!ちょうど、こないだまで竜王戦やってた所だ」
探偵は帝刻ホテルに黒ペンで二重丸をつけた。
「つまり、ここが狙われている場所」
「いやまだだ、次に……」
探偵は次には地図上の銀行すべてに丸をし始めた。
「円をのせた舌っていうのは恐らく、銀行のマークだ。円は¥って解釈で、お札が吐き出されているイラストを口と舌って表現したんだろ。
そして下にあるのは夕日だから……」
探偵は定規を使って丸をつけた銀行一つ一つの下にある建物を確認した。
そして何通りか試した後に茄子信用金庫の下に夕日がつく建物を見つけた。
先程、金次の番組を放送していた夕日放送局だ。
「つまり '円をのせた舌の下にある夕日' は銀行(地図記号)の下にある夕日放送局って意味だったんだ」
「よし、最後に三行目だ」
探偵は夕日放送局に二重丸をつけるとすぐさま三行目の'文の隣の大きな手紙'に取り掛かった。
「文っていうのは学校だろうな、そしてその隣にある大きな手紙っていうのは郵便局の地図記号だから……」
「あっ、茄子市郵便局 中央支店!」
文(学校の地図記号)の隣にある郵便局はここだけだった。
探偵はすぐさま二重丸をつけた。
「そして、最後の仕上げだ」
探偵は '帝刻ホテル' 、 '夕日放送局' 、 '茄子市郵便局 中央支店' である3つの二重丸を線で繋ぎ始めた。
するとそこに三角形が出来上がった。
僕はすぐさま三角形の中を凝視し、そして見つけた。
「三角形の中にある宝石店はここだけです!」
「よし、後は予告状の日時が来るのを待つだけだ」
言葉自体は前向きであるものの、探偵の顔は何やら曇っているように見えた。
気に入らないような、悲しんでいるようなそんな表情だった。
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