救わない糸
おしゃんしゃい
覚悟なき特攻
あれはまだ小学生の頃だった。
当時はエアコンはまだ贅沢品(少なくとも我が家では)で、夏になると扇風機を出し、我々は……などといっていた時代の話。
その日も暑さに弱い私は、扇風機の前に陣取り、首振りもせず風を独占していたのであった。それが後の悲劇を巻き起こすとは知らずに……
まだ小学生であった私は年に一回は必ずやる遊びをやっていた。紳士淑女の皆様方はやったかどうかわかりかねますが、扇風機の前で喋ると微妙に声がエコー?ビブラート?変声?といった効果が付与されるのです。そして、その昔の映画の影響なのでしょうか?出典は把握しておりませんが、【ワレワレハウチュウジンダ】と喋るのが流行ったのです。私も小市民ゆえ流れ流されそれを飽きもせずやっていたわけです。
扇風機に顔を近づけ、大きく口をあけワレワレ……
夢中であったがゆえ気が付かなかった……
都会でもあり得るが、田舎よりの土地だった為、それは日常的に起こり得る事であったのだ。だがしかし、よりにもよってこのタイミングである必要性は無かったであろう?
天井より糸を垂らし、スルスルと降りてくる八本足のヤツは、本来ならば無事に着地するか、風にのって別天地へと飛んで行くところだったのでしょう。
扇風機の後ろよりに降りてきたがため、蜘蛛の糸ごときでは耐えられなかったのでございます。
スッと吸い込まれる様に扇風機の中に消えて、僅かに異音を残した後、私の顔めがけて何かの残骸が飛び散りました。
虫ではないヤツは、我こそが宇宙人だとでも言いたかったのか?命をかけて私の口を封じました。
天上からの糸は救いの糸らしいですが、天井からの糸は滅びの糸だったようです。
そして、何が起きたか理解する事を拒否していた頭が動き出したあと、私は洗面所へとかけていきました。
オマケ
【人】という表現は、見た目を表すとして、蝿はその性能的に元々地球上の生物では有り得ないという話を読んだことが有ります。もし、何らかの要因で宇宙から飛来した種であるならば、蝿こそ宇宙人なのかな?と思います。ただ、人型である必要はないと思うものの、やはり宇宙【人】と表現すると違和感があるので宇宙生命体でしょうか。人が知的生命体という意味に近い使い方なのだとすれば、我々が知らないだけで、既に宇宙人は共存しているかもしれませんね。
救わない糸 おしゃんしゃい @urawaza
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます