Chapter 1.12 カルーア東部記念病院
Chapter 1.12
カルーア東部記念病院
「よう、来たか」
リアは病院に入ってすぐにある柱に寄りかかり、腕を組みながらルクスの到着を目に捉えた。
「悪い、待たせたな」
「いや、こっちこそ悪いな。突然呼び出しちまって」
リアは柱に寄りかかるのをやめると、ルクスに軽く現状を説明する。
「今はラークさんの治療を担当している主治医を待っているところだ。この先の個室で話を聞く予定になっている」
「わかった。そこにいけばいいんだな?」
「ああ。いま主治医の方が忙しいみたいでな、用事が済み次第こちらに来るってよ」
リアとルクスは個室に足を運ぶ。
「で? 電話で言ってたけど、なんだよ、面倒臭いことって」
「ああ、後で話す。そっちはどうだったんだ? 職場での聞き込みは」
「シーヌさんと職場の話は概ね一致していたよ。ラークさんの身に何かが起きたのはおそらく最終出勤日前日の職場からの帰宅途中。日付はおそらく五月十九日。今からおよそ一ヶ月前だな。職場の環境は良好で人間関係のトラブルもなかったと思う。仕事で思いつめて身体を壊したわけではなさそうだな」
「なるほど、とりあえずそのセンはなくなったのか」
リアが言っていた個室前に着くとリアは扉を開け中に入る。室内はそれほど広くなく、向かい合って椅子が二つ置いてあり、その間には小さなテーブルが並べられていた。
「さっき聞いたんだが、この部屋は患者本人やその家族に色々説明するために使われているみたいでな。いくつかこういう部屋があるみたいなんだが、今日はたまたまここが空いているから使わせてもらうことになったんだ」
「なるほど。ところで、ラークさんには直接会えたのか?」
「いや、個人情報やらなんやらの問題でまだ会うことができていない。仕事でくれば一発だったんだろうが、そうもいかんしな」
置かれたソファに腰掛けながらリアはルクスに説明する。
リアもルクスと同様で仕事で来ていない為の弊害にあっているようだった。
「じゃあ誰から話を聞いたんだ?」
「受付で本部の
「恐がらせなかったろうな」
「あのな、人を狂犬みたいに言うんじゃねえよ」
リアはハァ、とため息をつく。
どうやらここに来るまでの間に色々面倒臭い目に遭って来たんだろうなと推測できた。それはおそらく人の命を預かる病院という特殊な場所で、仕事でもないのに仕事じみたことをしなくてはならないがゆえに生じたのだろう。
そう考えれば、自分は職場の聞き込みでよかったなとルクスは思った。入る前は強面の冒険者相手に話を聞かなければならないと思っていたが、いざ中に入ってみれば優しい人たちばかりで非常に話も聞きやすかった。スキンヘッドの強面おじさんに襲われたことを除けば、話が聞きやすいところだったんだなと、今更ながらほっと胸をなでおろす。
「それじゃあ、リアが言っていた面倒臭い事ってのはその看護師から聞いた話か?」
「ああ。まあ、ラークさんの話とはちょっとズレるんだけどな」
そう断りを入れ、リアは看護師から聞いた話の説明を始めた。
「ルクスは廃用症候群って名前、聞いたことあるか?」
「ハイヨウショウコウグン? なんだそれ、病気の名前か?」
「ああ、そうだ。この病院ではその病気がすごい流行っているみたいでな。この一ヶ月で二、三十人ほど出たらしい」
「二、三十人?」
その言葉を聞いて、ルクスは目を丸くする。
一ヶ月でその数が発症するとなると凄まじい勢いのように感じたのだ。
「感染症か何かなのか?」
「いや、感染とかじゃないらしい。でもすごい勢いで増えている。そんで一ヶ月前から流行っているってことになると、ラークさんが入院した時期と一致していると思わないか?」
「ああ、確かに。てことは、ラークさんの病名がそういうことになるのか?」
「いや、そこら辺は濁された。看護師からはあくまで個人情報に触れない程度しか話が聞けなかったからな。けど、まあ、そういう話がその時出たんだから、アタリだろ」
そんな話をしていると、扉からコンコンとノックの音が聞こえる。
リアが軽く返事をすると、お待たせしましたという言葉と同時に、一人の白髪混じりの初老の男が個室の中に入って来た。
「どうも、ラークさんの主治医をしております、ノットです。よろしくお願いします」
「自分はリア、こちらはルクスと言います。二人とも本部の
「いえいえ。ですがその、自分がなぜ呼ばれたのかいまいちわかっとらんのですよ。よろしければ、説明お願いできますか?」
「ええ、そうですね。まずは自分たちがここに話を聞きにきた経緯を軽く説明しましょう」
リアはここまでの経緯をノットに向けて説明を始めた。
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