第78話 集団討伐で疲れた
騎士チームが魔物を囲い込んで、集団討伐の場所に追い込んでいる。
それを飛び越して、魔法使いチームが待機している場所に行きながら、横に逸れた魔物を討伐する。
「あっ、もう魔物が到達しそうだ!」
アルーシュ王子が叫ぶけど、ゲイツ様は慌てない。
「あちらには、サリンジャー達がいますから、もう少し数を減らしましょう」
えええ、それって言っていた事と違うのでは?
横に逸れた魔物は討伐したのに? 横を飛んでいるパーシバルも首を傾げている。
「騎士チームの後ろから攻撃します!」
えっ、そんなことをしたら、魔物達が集合地点に暴走しそうだよ!
「それは!」
パーシバルやアルーシュ王子も、危険ではと疑問を投げかける。
「上から、殲滅する勢いで討伐すれば良いだけです。それを逃れた魔物は、魔法使いチームに任せましょう」
「全然、計画とは違うけど、良いのでしょうか?」
パーシバルとアルーシュ王子、それにザッシュも同じ意見だけど、ゲイツ様に反対はし難いみたい。
「計画は、あくまでも計画にすぎません。それに、少し数が多すぎますからね」
騎士チーム、頑張って集め過ぎだよ! 去年の集団討伐の時より、魔物が二倍はいそう。
「さぁ、サッサと討伐して、魔法使いチームに合流しましょう」
まぁ、数は減らした方が良さそう。それに上からの討伐の方が狙いやすい。
騎士チームを飛び越して、集団の後ろを走っている魔物をかなり討伐してから、魔法使いチームに合流する。
「ゲイツ様、遅いです!」
ここを任されていたガリアーニさんはかなり精神的に追い込まれていたみたい。
「このくらいできないでどうするのです! さぁ、飛べる人は飛んで攻撃! そこから逃れた魔物を皆で討伐しなさい!」
えええっ、まだ飛ぶの? 私は、体力的に限界に近いんだけど。
「ペイシェンス様は……地上で! ルーシーとアイラと一緒にお願いします」
パーシバルは、私と一緒に地上に居ようとしたけど「サッサと行きますよ!」と言われて飛ぶ。
私は、これまで常にゲイツ様かサリンジャーさんに護られていたんだなぁと、飛び立った後ろ姿を見ながら実感した。
そんな感傷に浸っている暇はない! ここのチーフはガリアーニさんなんだろうけど、指示をするのに慣れていないみたい。
ゲイツ様の命令に従うのに王宮魔法使いは慣れてしまっているのだ。
「ええっと、魔物をなるべく遠くで討伐した方が良いのだ……」
それは、全員が知っている。騎士チームは、左右に別れて魔物が逸れないようにしている。それと、飛行隊との連携について、気をつける事を言わなきゃいけないんじゃないの?
うん、カリスマ性と傲慢さで魔法省はゲイツ様の言うがままになっている。これ、凄く拙いんじゃないの?
「ペイシェンス様、私達はどうしたら良いのでしょう?」
ルーシーも不安そうだし、他の魔法使いチームのメンバーも、ガリアーニさんの自信が無さそうな態度を敏感に感じとっている。
「ガリアーニ様が言われた通り、なるべく遠い地点で討伐すれば良いだけですわ! それに、空からはゲイツ様や飛行隊の皆様が討伐して下さるから、こちらは思い切って魔法を撃てば良いだけです!」
これまで、横にゲイツ様やサリンジャーさんがいて、いつもそう言ってくれていた。だから、安心して魔法が撃てたんだ。
「さぁ、魔物が見えてきましたわ! どんどん、討伐しましょう!」
「「「おおお!」」」
えっ、凄い大声! なんか、鼓舞しちゃったのかしら?
まぁ、そんなことは後だよ。ドドドドドッと魔物がこちらに押し寄せている。
やはり、騎士チームの後ろから攻撃したから、魔物達の勢いが凄いよ。
「横一列!」
少しこちらに来る魔物の勢いを削ぎたいから、剣を鞘から抜かずにルビーでレーザー攻撃を横一列にする。
王宮魔法使い達、学生達、そして冒険者達も各自魔法を撃つ。
上からの魔法攻撃、地上からの魔法攻撃、左右に逸れそうな魔物は、騎士チームが各自討伐している。
ドカーンと、ゲイツ様が空中から大魔法を撃つと、私たちの立っている地面も揺れる。
私は体幹が弱いから、よろめいちゃった。
「ペイシェンス様!」
ベリンダが支えてくれたから、転ばないで済んだよ。
「ありがとう! 後、もう少しだけだわ!」
ただ、魔法使いチームは、魔力切れの学生達も多い。正面から魔物が走ってくるのを受け止めていたから、恐怖心で魔力をより多く使ったみたいだ。
「皆様、少し休憩して回復薬をお持ちの方は飲んで下さい」
私は、魔力はまだあるけど、体力は限界だ。
それなら、残った魔力で大魔法を撃ちたい。
「レーザービーム!」
剣を横に振り切って、魔物たちを一列討伐した。
そして、その剣を反対に振り切りながら、もう一列討伐する。
ぜぃぜぃ、後は飛行部隊と王宮魔法使い達に任せよう。
ベリンダに支えられて、やっと立っている状態だ。
「ペイシェンス様、回復薬を飲まれては?」
そうだね! ポシェットから上級回復薬を出して飲む。少し元気が出たよ。
「そうだ! 柚子茶を飲みましょう」
小さな保温瓶に柚子茶を入れていたんだよね。
他の人は、まだ少し残っている魔物を討伐しているけど、体力の限界なんだ。
「ペイシェンス様! それは、何ですか? とても良い香りがします」
空からゲイツ様が飛んできた。
「柚子茶ですわ」と答えたけど、あげないよ。
「えええ、それは箱に入れてくれていますか?」
討伐も終わり、皆、疲労困憊なのにゲイツ様は元気だね。ガリアーニさんや、他の魔法使いチームの恨みの籠った視線など気にもとめていない。
鋼の精神バリアは見習いたいかも? それに大きな山になった魔物! これ、どうするんだよ!
「さぁ、馬車を用意していますから、帰りましょう!」
ベリンダと一緒にゲイツ様の馬車に乗せて貰ったよ。だって、
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