第77話 集団討伐でレベルアップ

 早朝から、ビッグバードの巣を三箇所討伐して回った。ゲイツ様も珍しく初めから本気モードで、さっさと終わらせたよ。

「ペイシェンス様は、少し休憩しておいて下さい」

 基地キャンプに戻り、私は集団討伐までメアリーにお茶をいれて貰って休憩をとる。


 パーシバルは、ゲイツ様たちとお偉い様のテントで、集団討伐の話し合いだ。 今の学生会長はラッセルだけど、騎士コースの学生はパーシバルに従う癖がついているから。

 私は、ラッセルが文官コースの学生にちゃんとした指導者を付けるように頑張って欲しい。


 体力面が一番の弱点なので、エアマットの上に横になって休む。

 メアリーが心配そうに見ているけど、頑張って弟達の為にお肉をゲットするよ。とはいえ、家の分はもう十分あると思う。

 ただ、王都の孤児院に寄付しても良いし、親戚に分けても良い。それに、領地に運んでも良いのだ。

 特に、領地の教会には孤児がいるので、ちゃんと食べられるように気をつけなきゃ。


 ハープシャーにはシュヴァルツヴァルト程の魔物はいない。

 ローレンス王国の北部に位置する他の領地、それにモラン伯爵領で、北からの魔物は、ほとんど討伐してくれているからだ。

 まだ町の防衛壁も補修できていないので、凄くありがたいことだけど、冬場の肉が少ないとも言える。

 魔物が少ない地域なので、畜産をもっと重点的にやっても良いのかもしれない。馬も増やしたいし、そこはモンテス氏と相談しなきゃね。

 グレンジャーは海があるから、魔物も魚が取れる。でも、領民達は、魚より肉の方がご馳走だと思っているみたい。収穫祭の時、焼肉が人気で驚いたんだ。

 内陸部のロマノ育ちだから、私は肉より魚が贅沢に思えるんだよね。まぁ、前世が日本人だから魚好きだともいえる。


 そんなことを考えていたのだけど、うとうと眠っていたみたい。

「集団討伐に参加する者は集まってくれ!」

 集合をかける大きな声で目が覚めた。

「お嬢様、お気をつけて!」

 今日は、ポシェットの中に上級回復薬、チョコバー、チョコレート、それに小さな保温瓶に柚子茶を入れて持っていく。


 ベリンダと一緒に集合場所に向かう。

「ペイシェンス様、遅いですよ!」

 えええ、ゲイツ様が今日は本当に真面目に討伐しようとしている。

 まぁ、考えたら王宮魔法師なのだから、当たり前なのだけど、大雪にならなきゃ良いのだけれど。


「騎士と騎士コース、それと乗馬に自信のある者は、かなり北部まで行って、魔物を囲い込んで欲しい!」

 ガブリエル騎士団長の声に、そちらに志願する人達は集まる。

 リチャード王子、キース王子、オーディン王子、それにパリス王子もそちらに参加するみたいだ。

 ああ、ここにラッセルやフィリップスも入るんだ。ラッセルは、乗馬クラブだったし、フィリップスも乗馬クラブに誘われる程だものね。


「魔法使いと魔法が得意な者は、追い込まれた魔物の討伐です! 指揮は、私が取ります」

 ゲイツ様の声は、そんなに大声ではないのに、遠くまで拡散される。魔力が籠っているからだろう。


 ルーシーやアイラやアイーシャ王女、それにアンドリューや魔法クラブの男子学生。あっ、それに錬金術クラブのメンバーは、ここに参加するみたい。

 カエサルとかベンジャミンは、乗馬も上手いと思うけど、魔法使いコースだからかな? 


 冒険者達は、其々、騎士のチームについたり、魔法使いのチームについたりと分かれる。


「パーシー様、去年は横に逸れる魔物を冒険者達が討伐していたような?」

 パーシバルが笑って説明してくれる。

「今年は、それを私達が空から監視しながら誘導するのです。勿論、横に逸れた魔物は討伐しますよ。後ろに回り込まれたら困りますから」

 そうなんだ! 責任重大だよね。

「あら? でも、ゲイツ様は魔法使いチームの指揮を取ると言われていましたけど?」

「私は、飛行隊と魔法使いチームの両方の指揮を取ります」

 えええっ、ゲイツ様らしくないけど、これが普通なのかしら?


「明日は大雪になりそうですからね。ワイバーンも羽根を休めてくれると良いのですが……兎に角、空中と地上の両方の魔物が同時に来るのは避けたいから、少しでも多くの地上の魔物は討伐しておかないといけません」

 あっ、それは本当に困るね。そう思って頷いていたら、ゲイツ様に睨まれた。


「ペイシェンス様、銀ちゃんは近づいているのでしょうか? 空からはワイバーンが、地上にはフェンリルが魔物をこちらへと押し出して困ります!」

 それは、本当に困る。

「銀ちゃんにちゃんと言わなくては! スレイプニルの群れを見つけたみたいで、馬の王メアラスも少し落ち着かないのです。他の群れにはリーダーもいるのではないでしょうか? 喧嘩にならなければ良いのですが」


 ゲイツ様は、馬の王メアラスが他のスレイプニルに負けるわけはありませんと笑った。

「ブヒヒヒン!」『負けない!』

 まぁ、馬の王メアラスが他の群れのリーダーに怪我させないようにしなくてはね!


 飛行部隊のうちガブリエル騎士団長は、今日は騎士チームの指揮をとるからこちらには参加しない。リチャード王子に守護魔法のマントを返している。


 サリエス卿とユージーヌ卿、アルーシュ王子とザッシュは、飛行隊に参加だ。

 今日は、ゲイツ様も戦馬で待ち伏せ場所に向かう。


「騎士チームが魔物をここに追い込むまで待機ですが、油断をしないように! ガリアーニ、私たちが戻るまで指揮を取って下さい」

 前に、ゲイツ様の部屋でサーモグラフィースクリーンの素材について質問していた年配の王宮魔法使いだ。


「そんな不安そうな顔をしないで下さい。魔物の追い込みまでには、こちらに帰ります。先にくる魔物を討伐したら良いだけですよ! それと、空を飛べる人は、空中から魔物の動きを探索しなさい」

 ゲイツ様は、仕事を怠けてばかりだけど、実力は信頼されているみたいだね。


「さぁ、少し北部の魔物を減らしておきましょう! サリンジャーは、右側の逸れた魔物をお願いします」

 サリンジャーさんは、予め作戦を聞いていたのか、サリエス卿、ユージーヌ卿、王宮魔法使い三人と共に右側へと飛んでいく。

 サリンジャーさんって常にゲイツ様の側にいるイメージなので、少し変な気分になる。


「さて、ペイシェンス様、パーシバル、アルーシュ王子、ザッシュ! 少しレベルアップして欲しいですね! スピード重視したいので、手を繋いで下さい」

 ゲイツ様の差し出す手を私が繋ぎ、私とパーシバルも手を繋いだ。

 片方の手は、アルーシュ王子が繋いで、ザッシュと手を繋ぐ。


「さぁ、行きましょう!」

 空に飛び上がってから、ゲイツ様がグングンとスピードを上げる。

 ゲイツ様に引っ張られるように私たちも凄いスピードで飛んでいる。


「あっ、騎士チームです!」

 パーシバルの指摘で、地上を見ると、騎士たちが魔物を追い込んでいる。

「もう少し北まで行きますよ!」

 うん? 私達は、左に逸れる魔物を討伐するのでは?

「それは、後でしますよ!」

 そうなんだ! まぁ、ここはゲイツ様に任せよう。


 騎士チームを飛び越して、ずんずん北へと飛ぶ。そこには、囲い込みを逃れた魔物がバラバラといた。

「こいつらが、夜に基地キャンプに来ないように討伐します!」

 ゲイツ様が大きな魔法を撃ち、逃れた魔物を私達で討伐する。


「さぁ、左に逸れた魔物を討伐しに戻りますよ!」

 また手を繋いで猛スピードで戻る。空中からだから、騎士チームの位置もわかりやすい。

「ほら、各自、討伐開始です!」と号令を掛けて、自分はチョコレートバーを食べている。


 パーシバル、アルーシュ王子、ザッシュは、空から集団から逸れた魔物を討伐して回っている。

 私は、ゲイツ様の横から魔法で討伐する。やはり、飛び回るのは体力を使うからね。


「そろそろ、集団が着く頃です。帰りますよ!」

 帰りも手を繋いで、猛スピードだ。騎士チームを追い越しながら、ゲイツ様が大きなエアカッターで魔物の群れの数を減らした。

「皆もレベルアップして欲しいです」

 かなり疲れているみたいだけど、大丈夫なのかしら。

 

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