第165話 錬金術クラブ2回目の体験コーナー
木曜、マーガレット王女達は、午前中にドレスの仕上げをするそうだ。午後からはグリークラブと音楽クラブの練習だからね。
お昼は、パーシバルも私達も慌ただしく食べる。
パリス王子もクラブ活動は初めてだし、2つ掛け持ちだから、わちゃわちゃした感覚を楽しんでいるみたい。
それは、マーガレット王女とリュミエラ王女も同じで、グリークラブと音楽クラブの発表の練習について話し合っている。
アルーシュ王子とザッシュも錬金術クラブの体験コーナーに参加するみたい。
入部とか言われたらどうするのか、ちょっとだけ気が重いけど、カエサル部長の判断にまかせるよ。
私の錬金術クラブでの活動を制限しなくてはいけなくなるかも?
今でも、エクセルシウス・ファブリカ案件は、本当は家でした方が良いのだ。
マックスやエドは、秘密保持の書類にサインしてくれたけど、エクセルシウス・ファブリカに私が関わっているのは、広めない方が良いからね。
「お先に失礼します」
私は、2時間目の空き時間に、体験コーナーの準備を手伝っていたけど、3時からは音楽クラブの練習だから抜けちゃう。早めに行かなきゃね!
「大教室まで送りますよ」
パーシバルは、相変わらずエスコートしてくれる。
「お忙しいのでは?」
「いえ、学生会のメンバーに任せています。それに、前日に忙しいなんて駄目でしょう。今日はチェックするだけですよ」
相変わらず、パーシバルは人を使うのが上手い。
「収穫祭の発表は、見れます。いつも騎士クラブの試合とダブっていましたからね」
見るというか、運営しているのだけど、それでも嬉しい!
大教室の準備は、もうできている。
「ああ、ペイシェンス! 3時まではいてくれるのだな」
2時間目にも、そう伝えたのに、カエサル部長は、ホッとしたみたい。
「ええ、ハンナ様達やジェニー様達にも早めに来て下さいと伝えています。それよりルーシー様とアイラ様は良いのかしら?」
魔法クラブの新部長はアンドリューなのに、大丈夫なのかな?
「もし、アンドリューが錬金術クラブの体験コーナーに参加した件で、ごちゃごちゃ言うようなら、こちらのクラブに変わったら良いのだ」
ベンジャミン、それでは喧嘩になるよ。
「あの2人は討伐でも、魔法を撃つのが大好きみたいでしたから、それは無いと思うわ」
初等科のマックスも頷いている。
「ルーシー先輩とアイラ先輩は、アンドリュー新部長が何を言おうと気にしませんよ。それより他の男子部員の方が気の毒です」
アンドリューも、女子部員には甘いみたい。それに、あの2人なら「面倒臭い!」とはっきり言いそうだから、控えめに接しているのかも? とはいえ、かなり影響を受けて、錬金術クラブに感じが悪かったけどさ。
「一度、アンドリューをシメておこう!」
ええ、ベンジャミン! それは駄目なのでは? と思ったけど、ブライスも頷いている。
「彼奴、新部長になるのだと、少し図に乗っているからな。魔法クラブの下級生を自分の部下と勘違いしている。いっそ、アイラが部長の方が良いのでは無いか?」
おい、おい、私に模擬決闘を仕掛けた相手だよ。今は、友達になったけど、アイラは戦闘狂の傾向が強い。
魔法クラブがヒャッハー集団になるのはどうかな?
「こら! 他所のクラブの部長選に口を出すのではない!」
カエサル部長が止めてくれたけど、マックスとベンジャミンとブライスは、目配せしている。
それぞれの学年の魔法クラブのメンバーを唆さなければ良いのだけれど。
不穏な感じがしていたけど、体験コーナーの参加者が来てからは、それどころではなくなった。
今回の大教室は、薬学の教室で、大きな作業台が設置してある。
予め、キックボードの部品が2セットずつ置いてあるよ。
そして、錬金窯も持ってきてある。
「錬金術体験コーナーにようこそ!」
女学生達と男子学生達が15人ほど集まったので、カエサル部長が説明を始める。
今回は、前の収穫祭の飾りよりは、作業工程が多い。
クラブメンバーは、各テーブルに付いて、作業をフォローする。
私は、女学生達のテーブルをあちこち掛け持ちだけど、ルーシーやアイラやジェニーやリンダは、打ち上げパーティに来ていたので、錬金術クラブメンバーと知り合いなので任せちゃう。
「難しいわ!」
ハンナ達は、カエサル部長の説明を聞きながら、キックボードを組み立ているのだけど、部品の多さに困惑している。
キックボードの土台に先ずはタイヤを2個取り付ける。
「ほら、この箇所にタイヤを入れて、ネジを締めるだけですよ」
折り畳み式にしたから、少し部品が多くなったけど、基本は、タイヤ2つをつけて、軸を差し込んで留めるだけだよ。
「この軸部分を錬金術でアレンジできます」
そう、今回はそこが錬金術チャレンジなんだけど、女学生達は、それどころじゃないみたい。
でも、何とか出来上がった。後ろの空きスペースで乗り方を教える。
「まぁ、楽しいわ!」
騎士クラブの2人は余裕で乗りこなしている。
「自転車は高価だけど、これは楽しくて良いな!」
うん! 弟達にもあげたいな。
「慣れたら、面白いと思うわ」
ハンナ達は、一漕ぎごとに止まっているけど、すぐに慣れそう。
ご褒美は、いちごチョコだよ。いちごは家の温室のをメアリーに持ってきて貰った。
チョコは、エバに頼んだけど、こちらも部費から出してくれたよ。
綿菓子でも良いという意見も多かったけど、同じ物はねぇ! それに、今度綿菓子を作る時までには香料を変えてみたい。
「これは? どうするの?」
ハンナや手芸クラブや料理クラブの女学生達は、洗ってあるいちごのヘタを持って、溶かしてあるミルクチョコの鍋にちょこんとつけるのも上手い!
「おひとり様、5つですよ! ここで食べても良いし、箱に入れてお持ち帰りしても良いです」
女の子達は、家に持って帰る方が多かった。
乾かして、箱に綺麗に入れてお土産にする。
男子学生は、その場で食べて「美味しい!」と喜んだが、あっという間になくなって悲しそうな顔をしている。
「ペイシェンス様、とても楽しかったわ。次の体験コーナーも参加したいです」
女学生達に、体験コーナーのパンフレットを渡しておく。
「まぁ、次はお洒落な魔導灯なのね!」
見本の百合の花の形の魔導灯のデスクライトを、女学生達は集まって見ている。
「このガラス部分の色を変えても良いのですよ」
見本は半透明の白だけど、ピンクや薄いブルーも可愛いと思う。
「やってみようかしら?」
やっと、錬金術にチャレンジしてくれそうで、カエサル部長も微笑む。
女学生達が帰ったら、フィリップスやラッセル達とアルーシュ王子とザッシュがやってきた。
こちらは、錬金術に興味津々みたい。
「おお、賑わっているな!」
次々とくる参加者達は、自分が組み立てたキックボードに乗って遊んだり、いちごチョコを食べたりと楽しんでいる。
「アルーシュ王子、ザッシュ様、フィリップス様達と一緒に説明を聞いて下さい」
そろそろ、音楽クラブに行かないとね!
「ペイシェンス、音楽クラブに行くのか? ミハイル、講堂まで送ってくれ!」
カエサル部長、過保護だよ!
「はい!」とミハイルは、一緒に講堂までついて来てくれた。
「ごめんなさいね」と謝るけど、ミハイルは首を横に振る。
「ペイシェンス様、学園の中でも気を付けなくてはいけません。パーシバル様が一緒なら安心ですけどね」
私だって拘束魔法を習得しているのだけど、まぁ、ミハイルとも話したかったから良いんだよ。
「ミハイルは、ロマノ大学で錬金術学科を選択するの?」
ミハイルは、少し考えて頷く。
「ええ、魔石のいらない機械も作りたいのですが、動力源が今のところは、魔石しかないですからね」
そうなんだよね。
「魔石に代わる動力源、それがあれば便利になるけど……」
なんて、2人で話しながら、講堂に向かう。
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