第151話 早朝から
冬の朝、4時……まだ真っ暗だよ!
寝る前に暖炉に入れておいた薪を新しく何本か足しておく。
お腹にカイロを入れて、マントを着て、ロシアン帽を被る。防寒対策はバッチリだ。
「ペイシェンス、おはよう!」
朝からパーシバルは、テンションが高い。呆れていたら、キース王子とオーディン王子も眠そうな顔で降りてきた。
「おはようございます!
「こっちですよ!」
オーディン王子は、こちらに付いて来たそうだったけど、キース王子に騎士クラブの馬房にドナドナされた。
「罰掃除は、秋学期が終わるまでですからね」
パーシバルは笑っているけど、絶対に昼休みはオーディン王子に「
「ブヒシヒン!」遅い! って、早いよ!
サンダーは、もう餌と水はやってくれたみたい。
「ブヒヒン!」走りたい!
これは、全員が分かったみたい。
「鞍をつけて貰うわよ」
私がモタモタ付けるより、サンダーやジミーが付けた方が早いのに、嫌みたい。
「ええええ、少しは他の人に慣れないと!」と言いつつ、サンダーが差し出した鞍をパーシバルと付ける。
ほぼパーシバルが付けたのだけどね。
他のスレイプニル達も、何とか世話をしている騎士や馬丁達が手綱だけは付けて、横で引いて行くみたい。
「第一馬場に連れて行って下さい。兎に角、ゆっくりと」
後ろからは、他のスレイプニルが付いてくるし、早朝だから学生はいないとは思うけど、学園内だからね。
「ゆっくりと放牧場まで歩くのよ」
言い聞かせて、パーシバルに乗せて貰う。
「さぁ、歩かせて下さい」
後ろに乗ったパーシバルに言われて「歩け!」と命じたら。
「ブヒヒン!」わかっている! と偉そうな返事がきた。やれやれ!
「へぇ、こんなに広い馬場があるのね」
全く、運動クラブ方面は知らないからね。
「他のスレイプニル達が馬場の中に入ってから走らせて下さい」
それは、早く言って欲しかった。
「怪我をしなかったら良いけど……」なんて心配しているけど、パーシバルは気にしていない。
「ははは……、すぐに手を離しましたよ」
私は、早朝から乗馬なんかしたくないから、テンションだだ下りだけど、パーシバルは疾走感に笑っている。
馬場の中を小一時間、走りまくって、やっと満足したみたいだ。
「ブヒヒン!」
うっ、もっと乗馬の練習をしろ! って言われている気がする。
「私が一緒より、パーシー様だけの方が速く走れるわよ」
少し考えて「ブヒン!」良いだろうと嘶く。
馬場の端で、私はパーシバルに降ろして貰う。
「大丈夫でしょうか?」
サンダーとバレオスが心配そうな顔だけど、
それにスレイプニル達も付いて走り、なかなか迫力があるよ。
「そろそろ止めて下さい」
私も、寒いから止めて欲しい。
「パーシバル様、止めて!」と大きな声で前を走り去るパーシバルに言うけど、止まらない。
困ったなぁ! 起床の鐘が鳴ったよ。
「ペイシェンス様、
バレオスの忠告で「
「ブヒヒン!」もう、終わりか? と不満そうだけど、十分じゃないの?
「私は、これから朝食なのよ。それから勉強をしなくてはいけないの」
フン! って感じだけど、ゆっくりと一周して止まった。
ここから、ローレンス王国のスレイプニルとデーン王国のスレイプニルを捕まえたり、大変だった。
「よく自分達のスレイプニルがわかるわね」
私が感心していたら、パーシバルに呆れられた。
「自分が世話しているスレイプニルをわからない騎士や馬丁はいませんよ」
そうなの?
「ブヒヒン!」もっと勉強しろ! 偉そうだ。
何とか馬房に入れて、私は
「他のスレイプニル達には掛けなくて良いのですか?」
サンダーは頷く。
「人間の手で世話をされるのに慣れていかないといけないのです。でも、できれば数日は大人しくさせて頂ければ、有り難いです」
デーン王国の騎士や馬丁達は、スレイプニルに慣れているから、暴れるスレイプニルを何とか宥めて汗を拭いたり、ブラシを掛けている。
でも、ローレンス王国の騎士や馬丁達は、スレイプニルに接するのは初めてなのだ。
「大人しくなれ!」
大人しくなったスレイプニル達を、ローレンス王国の騎士や馬丁達が世話をしている。
「あのう、今日はお昼休みにも顔を見せて下さい」
サンダーが申し訳なさそうに言う。
えええ、縛りが厳しいよ!
「ええ、勿論!」
パーシバルは、嬉しそうに返事しているけど、私は寒い中、ここまで来るのはちょっと嫌だな。
でも、
それは、あちらの勝手だとは思うけど、やはり雪の草原を自由に走っていたのに狭い馬房に押し込まれているのは可哀想な気がする。
「ふぅ、私じゃなければ、もっと可愛がって貰えるのに……」
溜息しかでないよ。
急いで寮に戻り、制服に着替えてから、マーガレット王女の部屋に急ぐ。
「あああ、その髪型は!」
リュミエラ王女とセットしあったみたいだけど、目標が高すぎるよ!
いつもの片流しにしようとしたのだろうけど、コテの使い方が悪かったのか、妙に
リュミエラ王女の方も、マーガレット王女の力作パンクだ。
「なおします! 明日からは、普通のハーフアップから練習して下さい」
ササッとなおして、朝食に向かう。お腹ペコペコだよ。
「ペイシェンス様、お疲れではないですか?」
パーシバルが心配してくれるけど、
「朝は寒いですわね。パーシバル様も寒くありませんでしたか?」
パーシバルは、大丈夫だと笑う。
ふぅ、基礎体力の差なのか、私が寒さに弱いのかも。
「午前中は、ペイシェンス様と一緒の授業ですね」
それだけが救いだよ。水曜は国際法と経営学2だ。
「学食の改善プランは考えられたのですか?」
こんな会話だけでも、朝からの乗馬で肉体的にも精神的にも疲れていたのが癒される。
「まぁ、少し考えて纏め始めています」
うっ、パーシバル、仕事早いよ!
「私も、そろそろ纏めないといけませんわ」
アンケートの集計で何を不満に感じているかはわかったからね。
国際法は覚えなくてはいけない法律が一杯だ。ゲイツ様に暗記術を習わなきゃいけないかも?
ホームルームが終わったら、アルーシュ王子に呼び止められた。
「ペイシェンス、今日は学食の見学にザッシュと行くから、
ふうん、アルーシュ王子も結構真面目に授業に取り組んでいるんだね。
そんな呑気な会話をしている場合では無かった。
「ペイシェンス嬢、凄い活躍だったみたいですね! あのビッグボアを討伐されたのでしょう!」
フィリップスの賞賛に「私は、ゲイツ様に護って貰いながら魔法を放っただけですわ」と答えていたけど、騎士コースの学生からの圧が凄い。
「ペイシェンス様、スレイプニルを見せて貰えないでしょうか?」
ああ、それは困る。
「まだ人に慣れていないのです。世話をする方々に慣れたら、聞いてみますわ」
「あのスレイプニル達は、王家の預かりだ! 言っておくが、特別馬房に近づいたりしたら、叱責されるぞ」
一緒に討伐に行ったベンジャミンとブライスが騎士コースの学生を追い払ってくれた。
「はぁぁ、これってスレイプニル達が引き取られるまで、ずっと続くのかしら」
うんざりしていたら、ベンジャミンに笑われた。
「ペイシェンスは、フェンリルを追い払い
それは、そうなんだけどさぁ。
「そこがペイシェンス嬢の良いところなのです。お優しいから、周りの人が誤解してしまうけど、学生チームのトップなのだから、もっと自信を持って下さい」
フィリップスにも言われちゃった。
ホームルームから出たら、パーシバルのお出迎えだ。これは、嬉しいな!
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