第150話 女子勉強会?

 マーガレット王女とは、王宮で少しだけ会ったけど、1週間も側仕え無しで大丈夫だったのか気になっている。

「メアリーも疲れたでしょう。早く屋敷に帰って休みなさい」 

 メアリーは、服や下着などを片付けてくれていたので、労って帰らせる。


「ふぅ、マーガレット王女はちゃんと勉強されているかしら?」

 中等科2年生からは、文官コースの勉強もすると意欲を見せていたけど、王妃様は家政コースの単位を多く取らないと駄目だと言われたみたい。

「ペイシェンスです」と言ったら、マーガレット王女がドアを開けてくれた。

「ペイシェンス! 貴女は、とても大きな魔物を討伐したのね!」

 ああ、ビッグボアが学園に運ばれたのだ。

「あれは、ゲイツ様が横におられたから、安心して魔法を撃っただけですわ。それに、気分が悪くなってしまったのです」

 マーガレット王女は、くすくす笑う。

「ペイシェンスは、相変わらず自分の評価が低いわね。キースから学生チームのトップだったと聞いたわ。それに雪狼ニックスルプスを何頭も討伐したし、フェンリルも追い払ったのでしょう。素晴らしい活躍だわ! それに馬の王メアラスやスレイプニルの群れも捕まえたのよね。それで女子爵ヴァイカウンテスに叙されたのですもの」

 ああ、あの我儘な馬の王メアラスについて、マーガレット王女にちょっと説明しなくてはいけないのだ。


「ええ、それに関しては陛下に感謝しておりますわ。ただ馬の王メアラスは、まだ人に慣れていませんし、スレイプニル達も野生のままです。私がいないと暴れてしまうのです」

 マーガレット王女は、元々、スレイプニルは好きではなかったみたいなので、怒られるかな? 少し言い出し難い。

「朝は馬の王メアラスの世話と運動をさせないといけないみたいなのです」

 あっ、と驚かれる。

「ペイシェンスは、乗馬は苦手なのに大丈夫なの?」

 ふぅ、全員が私の乗馬が下手なのを心配してくれるよ。

「ええ、何とかパーシバル様も乗る事を承諾させたのですが、まだ私と一緒じゃないと駄目みたいなのです。なるべく、パーシバル様だけで乗れるようになって欲しいですわ」

 

 マーガレット王女は、少し考える。

「朝、ペイシェンスがいないのは、少し困るけど、なるべく私もリュミエラ様も自分で髪の毛を整えるわ。美容の修了証書を貰わなくてはいけないから、その練習だと思うことにしましょう」

 ええ、凄い自立心だよ。前は起こさないといけなかったのに!

「それに、ペイシェンスも女子爵ヴァイカウンテスになったのだから、乗馬ぐらいできないと困ると思うわ。練習しなさい」

 うっ、その通りなのだ。


 でも、朝食の7時までには、寮に戻るつもりだし、ちゃちゃと髪の手直しはできそう。

「お勉強をなさっていたのですね!」

 机の上には、家政数学の教科書が置いてある。

「ええ、リュミエラ様も頑張っていらっしゃるし、負けられないもの」

 やる気は良いけど、パリス王子を諦めてくれた方が、私的にはホッとするのだけどね。


 夕食までにリュミエラ王女と一緒に勉強しているのを見ながら、私はロシアン帽を縫う。

 ふう、やはり2人分は無理だから、雪狼ニックスルプスの毛皮が届いたら、パーシバルのも縫おう。

 それと、毛糸のパンツも編まなきゃね! 今のドロワースも要改善だよ。何とかゴムみたいに伸び縮みする素材を見つけて、可愛いパンティにしたい。

 でも、毛糸のパンツも冬は穿くけどね! 前世の薄くて暖かい素材の一分丈パンツが懐かしいよ。

 あっ、無ければ作れば良いのだ! ふぅ、やりたい事や、しなくてはいけない事がいっぱいありすぎる。


 それと馬の王メアラスの世話にどのくらい時間を取られるのか、さっぱりわからない。

 ブラシを掛けたりしなくても、生活魔法でピカピカにはできるけど、スキンシップというか、精神的に繋がる事を求められている気がする。

 普通の馬とは、そんな繋がりは感じた事は、私は無かったのだけど、ユージーヌ卿とかパーシバルは少なくとも自分の戦馬と信頼関係を結んでいる気がする。

 それにオーディン王子は、勇者アンドレイオスとの絆が強そう。


 なんて事を考えながら、2人の勉強を見ていたのだけど、私も、そろそろレポートを纏めたりしなくてはいけないのだ。

「今夜は、ペイシェンスも疲れているでしょうから、夕食後はリュミエラ様と勉強会をするわ」

 確かに疲れているけど、夕食後も馬の王メアラスの所に行かないといけないのだ。

 本当に、パーシバルが一緒に行ってくれるのだけが慰めだな。


 夕食の鐘が鳴ったので、食堂に降りる。

「ペイシェンス、早く食べて馬の王メアラスの所に行かなくては!」

 ああ、パーシバルのやる気が眩しい。

「まぁ、夜も行かないといけないの?」

 マーガレット王女が呆れている。

「ええ、馬の王メアラスがここの馬房に慣れるまでは、寝る前に落ち着かせた方が良いと言われたのです」

 パーシバルと急いで夕食を取って、特別馬房に急ぐ。


「その帽子、可愛いですね」

 ロシアン帽を褒めてくれるパーシバル、とても優しい。

「寒いから、温かい帽子が必要だと思ったのです。パーシー様のも作りたかったけど、手持ちの毛皮がもうなくなってしまったの」

 パーシバルは、自分は大丈夫だと笑うけど、夜になって凄く寒い。朝はもっと冷え込むのだろう。


「ブヒヒン!」遅い、と文句を言われたよ。

「夕食ぐらい食べさせてよ!」と言い聞かせておく。

「綺麗になれ!」と掛けると、元々、ピカピカだったのが、余計にピカピカになったよ。

「綺麗なスレイプニルですね」

 パーシバルがうっとりとした目で馬の王メアラスを称賛している。

「パーシー様、馬の手入れとは、ブラシを掛けたりするのかしら?」

「こんなに綺麗ならブラシを掛ける必要はありませんよ。でも、スキンシップには良いかもしれませんね」

 そんな事を話していたら、サンダーが良い案だと助手のジミーにブラシを持って来させる。

「いつも、ペイシェンス様が生活魔法を掛けて下さるから、馬の王メアラスはブラシを掛けた事がないのです。ブラシ掛けに慣らした方が良い」

 私は、パーシバルに教わりながら、ブラシを掛ける。

「もっと強く擦っても良いのですよ」

 ふう、パーシバルはテキパキとブラシを掛けていくけど、かなり疲れる。

馬の王メアラス、気持ち良い?」

「ブヒヒン!」もっと強くだってさ。


「マッサージして貰っている気分なのかしら?」

 ブラシで擦ると気持ちよさそうに目を瞑る。

「さぁ、私が騎士クラブで当番していた時は、汚れや抜け毛をブラシで取り除いていましたが、馬の王メアラスの場合は綺麗ですからね」

 だよね! でも、まぁ気持ち良さそうなのは良かったよ。

「そろそろ寝る時間でしょ? 私も部屋で寝るわね」

 ブラシ掛けが気持ち良かったのか、馬の王メアラスはうとうとしている。

「ブヒヒン!」と許可が出たから、パーシバルと寮に帰る。

 

「寒いですね!」

 ゆっくり話しながら帰りたいけど、そんな事をしていたら凍えちゃうよ。

「走りましょう!」

 パーシバルに手を引いて貰って走る。ペイシェンス、走るのも遅い!

 はぁはぁ、息が上がったけど、寮に戻ってホッとした。


馬の王メアラスは元気か?」

 食事は終わったのに、何故かパリス王子とオーディン王子とアルーシュ王子とキース王子が食堂で待っていた。

「ええ、私は朝早いから失礼しますね」

 スレイプニル愛の深いオーディン王子と長話はしたくない。

 討伐から帰って、本当に疲れているのだ。

「パーシバル様、おやすみなさい」

 ふふふ……、寮の前でおやすみのキスはしたから、簡単に言って部屋に上がる。


 ゲイツ様に貰った腕時計のタイマーを4時に合わせて、眠るよ。

 やれやれ、明日からこの時間に起きなきゃいけないのかしら? はぁぁ……。

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