第146話 スレイプニル移動計画
話し合いが終わったら、急いで昼食を食べて、女子テントに行く。
「荷物は纏めてありますけど、これはゲイツ様の馬車に乗せて貰えば良いのですね」
荷物はそうだけど……はぁ、やはり
「ええ、メアリーはゲイツ様の馬車に乗せて貰って。私は
これは、スレイプニルの事を全く知らない私の考えだった。
「ゲイツ様も馬車で帰られないのですか?」
寒いのが嫌いなゲイツ様なのに珍しいね。
「ペイシェンス様、30頭ものスレイプニルを移動させるのですよ。あっ、全くその意味がわかっていませんね。
ふうん? なら、手綱を持って移動するのかしら?
「パーシバル、
いつも全力疾走だけど、初めて私を乗せた時は、少しだけゆっくりだったような?
「いえ、まだ乗せて貰っている状態で、私の命令は聞きません」
我儘なスレイプニルだよ!
「ペイシェンス様が一人で乗れば、
ちょっと! ゲイツ様、それは無理だよ!
「うむ、そうするしかないかもしれないな」
第一騎士団長がやってきて、無謀な話をしている。
「それは、無理ですわ。私は、ロマノまで一人で
パーシバルと一緒でも、途中で馬車に乗せて貰おうと思っていたのだ。
「だが、パーシバルがスピードを制御できなかったら、群れのリーダーに従う本能のままにスレイプニル達が暴走するかもしれない」
もう、スレイプニル達は勝手にデーン王国に帰れば良いんじゃないかな? 迷惑千万だよ!
「パーシバル、
それ、危険じゃん!
「駄目よ、そんな事をしたらパーシバル様が怪我をしてしまうわ」
でも、全員がそのくらい平気だと言う。
「馬から飛び降りるぐらいは平気ですが、その後、ペイシェンス様だけで大丈夫でしょうか?」
えっ、そっちを皆は心配しているの?
「うむ、ロマノまで馬を普通に走らせれば2時間で着く。スレイプニルや戦馬なら1時間半だ! そのくらい乗れるのではないか?」
第一騎士団長、お隣さんになるのに酷い! 近所付き合いしたくない気分だよ。ぷんぷん!
「ペイシェンス様、私達が並走しますから、大丈夫ですよ。それと、パーシバルと一緒に乗りたいのなら、
それしか無いのかな? あの頑固な
ぞろぞろと馬房に行き、
「
バレオスに頼まれたけど、私が無事に着くかの方が不安だよ。
スレイプニルの群れを一頭ずつ騎士が連れ出して、ヒラリと自分の戦馬に乗ると、従者が手綱を手渡す。
先頭に第一騎士団長、そして
後ろには30人のローレンス王国とデーン王国の騎士がスレイプニルを連れている。
それだけでなく、従者や他の騎士達も隊列を組む。
「これって、すごく目立ちそうな気がします」
パーシバルに訴えても、理解していないみたい。
「それより、
おお、そうだったよ! パーシバルが飛び降りたりしなくて済むようにしないとね。
「
「何と答えたのですか?」
パーシバルが聞くから、渋々答える。
「下手くそ! と馬鹿にされましたわ。腹が立つけど、本当の事だし……いえ、やはり馬鹿にされたままではいけないわ!
パーシバルは呆れていたけど、
リチャード王子も一緒に帰るみたいで、第一騎士団長の横につく。
「さぁ、出発だ!」
第一騎士団長の号令で、走り出す。
「うん、この調子なら大丈夫そうですね」
横で走っているゲイツ様がホッとしているけど、パーシバルは首を傾げている。
「ペイシェンス様、何をご褒美にあげると言われたのですか?」
えっ、前世ではよく馬にご褒美に角砂糖やにんじんをあげているシーンをテレビとかで見たけど、ここでは違うの?
「お砂糖とかあげないのですか?」
パーシバルは、そんなことは聞いた事が無いと笑う。
「ふむ、野生のスレイプニルにもペイシェンス様が美味しい物を食べさせてくれるのがわかるのですね!」
ゲイツ様は、そう納得しているけど、どうかな? 単に、私が1人でロマノに帰るのは無理だと思っただけかもね?
馬車では4時間近くかかったと思ったのに、1時間走ったらロマノが見えてきた。
パーシバルに後ろから支えて貰っているし、
王都にはスレイプニルを移動させると知らせてあるから、街道の両側に警備の兵が配置されている。
「この寒い中、大変ね」
兵とか騎士とか、私には絶対になれない職業だ。
「夜警とかよりはマシですよ。それよりも
えええ、パレードは嫌だと断ったのに?
「
「ブヒヒヒヒヒン!」
そのくらいわかっている! なんて偉そうな返事がきたよ。いや、常に偉そうなんだけどね!
「門に近づいたから、スピードを落とせ!」
第一騎士団長が命令する。団長が乗っている戦馬が少しずつ減速していく。
「
長距離走ったので、
どうせ、人が集まってて見たいと思っているなら、綺麗な状態の方が良いよね!
「ペイシェンス様、他のスレイプニル達も綺麗にしてやって下さい」
ゲイツ様に言われて、それもそうだなと気づいた。
「綺麗になれ!」
ブヒヒン! 前を走る第一騎士団長とリチャード王子の戦馬もピカピカになって嬉しいみたい。
「ペイシェンス、疲れませんか?」
パーシバルが心配してくれたよ。
「魔力は残っていますわ。でも、乗馬はもう当分は、したくない気分です」
くすくす笑うけど、こんなに長時間乗ったのは初めてで、すでにお尻が痛い。
耳元で「自分に綺麗になれ! と掛けたら、お尻の痛さもなくなるのでは?」と囁かれた。
ナイス、アイデア!
「綺麗になれ!」私とパーシバルに掛ける。
お尻の痛さが気にならなくなった。良かった!
北門の分厚い壁を抜けると、道の両側にはすごい群衆が一目スレイプニルを見ようと集まっていた。
警備している兵達と、押し合いになって大騒ぎだよ。
「
性格的には傲慢で縛りがキツイけど、黒いカールした長い鬣や、ピカピカ光るほどの黒い身体、馬嫌いの私が見ても立派だと思う。
「ブヒヒン!」当然だと、嘶くと、いつもより格好をつけて歩き出す。
「おお、8本脚のスレイプニルだ!」
「大きいなぁ! 戦馬よりも大きいぞ」
「なんて美しい馬なんだ!」
「良かったです。暴走したら大変だと心配していたのですよ」
パーシバルは、かなり気を使っていたみたい。
「私は、パーシー様が支えて下さっていたので、とても安心して帰ってこれましたわ。あれっ? 王立学園の特別馬房に行くのでは?」
パーシバルが笑う。
「これほどの見事な
げー、目立ちそうな予感!
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