第96話 ショッピングは終わらない

 馬車には、リチャード王子、リュミエラ王女とサリエス卿、ユージーヌ卿。マーガレット王女、パリス王子と私とパーシバル。

 侍女達は別の馬車だよ。付き添う意味があるのかな?

 バーンズ商会にはすぐに着いた。

「ようこそ、お越し下さいました」

 バーンズ公爵の出迎えだ。それにリチャード王子とパリス王子は、答えているけど、マーガレット王女とリュミエラ王女は、ウィンドウディスプレイに気がいっている。

「バーンズ公爵、とても素敵な飾りですわね!」

 マーガレット王女のお褒めの言葉に、バーンズ公爵が答える。

「これは、錬金術クラブが飾り付けてくれたのです」

 全員の目が私に向いたよ。

「メンバー全員で作ったのですわ」

 店の中に入る前から、時間が掛かっている。

「あれは、何かしら?」

 マーガレット王女とリュミエラ王女の質問に、バーンズ公爵が答えているからだ。

「マーガレット、リュミエラ様、中にもいっぱい商品はあると思いますよ」

 パリス王子は、女性のショッピングに水をさしたりしないで、笑顔キープで待っていたが、リチャード王子は、中に入ろうと急かした。


 店の中でも、王女様方は、あちらこちらに目が行くみたい。貸切にしているけど、それでは一日中かかりそうだよ。

「あのウィンドウに飾ってあった商品は、バーンズ商会でも一推しなのです。こちらに展示しておりますから、どうぞ」

 バーンズ商会にも特別室が用意してあった。

 そこにはディスク型オルゴールが音楽を流しているし、ブロックや知育玩具、毛皮のコートや撥水加工されたマントなど、それを手に取って選べるように並べられていた。

「これをマーカスに買って帰ろう」

 リチャード王子が、大きいサイズのブロックを手に取って選ぶと、他の人達も、あれこれと買い物が始まった。

「ディスク型オルゴールは、良いわね! 寮に置いておきたいわ」

 マーガレット王女、毎日、放課後は音楽系のクラブ活動なのに、まだ音楽がたりないのですか?

 リュミエラ王女も欲しそう! リチャード王子がすかさずプレゼントする。

 そうなったら、パリス王子も「マーガレット様のは私がプレゼントしますよ」と言う。

 私とパーシバルとサリエス卿とユージーヌ卿は、側に立っているだけだよ。

 パーシバルはブロックを後で買えば良いって感じだね。


 それよりも、撥水加工のマントにパリス王子は目をつけた。

「これは良いな。冬の魔物討伐に役に立ちそうだ」

 バーンズ公爵が加工を引き受けている。そこら辺に置いてあるのは討伐関係だね。

「このマットレスは? こんなのを運んでいたら荷馬車が何台も必要になると思うのだが?」

 パリス王子の質問に、膨らます前のマットレスを持ってこさせる。

「おお、これなら良さそうだ! 私も買おう!」

 パーシバルが一言注意する。

「パリス様、学生のマットレスはこちらで用意しています」

 パリス王子は、少し考えて「やはり買っておこう」と注文する。

「冬の魔物討伐だけでなく、役に立ちそうだからな」

 まぁ、個人で狩りに行く時とかに使うのかな?

「皆様、マントの撥水加工は、お済みですか?」

 バーンズ公爵が質問した。パリス王子はさっき注文しおわったし、リチャード王子もパーシバルもサリエス卿もユージーヌ卿も済ませていると頷く。

「騎士団は終わったが、他の参加者はどうだろう?」

 それまで無言だったサリエス卿が一言発した。

「学生で、注文されている方のはほぼ終わりましたが、まだ知らない方もいらっしゃいますね」

 パーシバルとリチャード王子が「参加者に周知徹底しておく」と同時に答えた。

「そうした方が良いでしょう。あの時期の雨は冷たいから、濡れたら身体が冷えますからね」

 冒険者は自己責任みたいだけど、冒険者ギルドに宣伝のチラシを置いたら良いのかもね。あとで、パウエルさんに言おう!


 知育玩具は、リチャード王子がマーカス王子に全部買ったし、リュミエラ王女も国の弟や妹にと買った。

 パリス王子は、女の子用のブロックとカルタと分数の知育玩具を購入した。カレン王女にかな?

「このゲームは何だ? 『人生ゲーム』?」

 バーンズ公爵が、全員にプレゼントしてくれたよ。

「収穫祭で遊んでみてください」

 綺麗なメイドがお茶を運んできてくれたけど、コルドバ王国の大使館でお茶会なので、一口飲むだけにしておく。

「店内を見てみたかったわ」

 マーガレット王女の気持ちは、よくわかるよ!

「では、サッと見学して、大使館へ行こう」

 リュミエラ王女も外へ出る機会は少ないだろうから、リチャード王子が気を利かせたけど、長くなりそうな予感!

 パリス王子は、諦めモードだよ。


 1階は、安価な商品がならんでいるけど、そこから時間が掛かった。私も興味があるけど、マーガレット王女もリュミエラ王女も初ショッピングだからね。

「まぁ、湯たんぽが置いてあるわ! リュミエラ様、これは良いのよ!」

「これは銀ビーズね、今度作るドレスに刺繍して貰いたいわ」

 テンション上げ上げの2人と違って、リチャード王子は、半分目が死んできているよ。

「2階もあるのだから、早く上ろう」

 鍋やフライパンや安いマントは必要ないだろうと、リチャード王子は上に上がらそうとするが、収穫祭用の飾りは1階にあったんだ。

「あら、あれは収穫祭の飾りではなくて? お母様も離宮に飾りたいと言われていたのよ」

 リチャード王子も王妃様には弱い。

「では、買いなさい」

 そんな事を言うから、延々と飾りを選ぶ事になったよ。

「私も国に送りたいのですが、良いでしょうか?」

 可愛いリュミエラ王女は、リチャード王子が買い物に疲れてきているのに気づいて、少し遠慮している。

「リュミエラ様、一緒に選びましょう」

 そう、そう、買い物は、横で見ていると疲れるけど、一緒に選ぶと楽しいよ。

 コードに灯がついた飾りと、オーナメント、離宮を飾るのはかなりいっぱい必要だね。

「マーガレット様、このオーナメントも可愛いですよ」

 パリス王子は、初めから一緒に選んでいる。やはり恋愛関係は強いね。

 店員が持っている箱にいっぱいの飾りを選んで、やっと1階は終わった。


 2階は、剣や、武具が多い。ユージーヌ卿の目が輝いているけど、マーガレット王女もリュミエラ王女も興味はないみたい。

 あっ、あちらには高級食器とか並んでいる。でも、今日は見るのはやめておこう!


 3階は、魔導具が多かったから、きっとサッと見て終わりだろう。

 パリス王子は興味があるかもね? でも、収穫祭用の一人鍋やチョコレートファウンテンまで展示してあった。

「まぁ、これは素敵ね!」

 チョコレートファウンテンに、マーガレット王女もリュミエラ王女も目が釘付けだ。

「チョコレートは、まだ販売量が少ないと聞いていたが?」

 リチャード王子が質問するけど、この前から3樽加工しているのだ。

「多く販売できるようになったのです」

 でも、これを売ったら、3樽ですまなくなりそう。

「これは買って帰らなくてはいけないわ!」

 チョコレートファウンテンと板チョコをマーガレット王女は購入決定だ。

「私も大使夫人に買って帰りますわ」

 やれやれ、リュミエラ王女も購入だ。


 板チョコを何枚も買っていたけど、そのコーナーには『お一人様、一枚限り』と書いてあるけどね。

 まぁ、私とパーシバルとリチャード王子とパリス王子とサリエス卿とユージーヌ卿は買わなかったから、4枚ずつでも良いのかも? それに侍女や護衛も含めると、何枚でも良いかもね。

 やっと買い物が終わったと思ったけど、一人鍋でもチョコレートフォンデュができると書いてある説明書きを見つけて、それも加えられる。

「まぁ、レシピもついているのね? チョコレートフォンデュだけじゃなく、チーズフォンデュ、ポトフ、鶏鍋というのも食べられるそうよ」

 パウエルさん、仕事が早いね!

 ユージーヌ卿とサリエス卿とパーシバルは、チーズフォンデュを食べた事があるけど、賢いから無言だよ。これ以上、長居は避けたいからね。

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