第95話 ショッピングに行く前に
チョコレート作りや、サンドイッチは、エバに任せて、私は弟達と遊ばなきゃ!
だって、土日も一緒にいられる時間が少なくなっているから、隙間を見つけても遊ばないとね!
応接室の暖炉にも火が付いている。昼にパーシバルが迎えに来るからだ。
貧乏だった頃は、使う寸前にならないと暖炉に火は無くて、暖かくなるまで時間が掛かったよ。
「応接室が暖かいなら、ハノンを弾きましょう」
ナシウスもヘンリーも、凄く上手くなっていて、驚く。
「毎日、カミュ先生に教えて貰っていますから」
ナシウスの言葉にハッとした。前から練習をしていたけど、週末しか私は見てあげられなかったからね。
「ナシウスは、もう少し難しい曲に挑戦しても良いわね」
簡単な小品集は終わりだ。ソナタを思い出して、楽譜にしよう。これなら初等科は合格だと思う。
「ヘンリーも凄く上手くなっているわ」
身体強化が上手く使えるようになったのもあるけど、やはり指導してもらえると上達が速い気がする。
2人がにっこりと笑うから、私も嬉しくなる。
ドレスメーカーが来る前に、カミュ先生が息子さん達と会って帰ってきた。
「あのう、少しお聞きして良いですか?」
私は、少しだけ弟達の様子を聞きたいと思った。カミュ先生は、微笑んで了承してくれた。
「ナシウス様は、もう初等科2年レベルですわ。それに音楽も初等科はクリアしておられるし、美術、ダンス、乗馬、剣術も1年は合格でしょう」
ナシウスに関しては、安心しているよ。
「ヘンリーはどうでしょう?」
カミュ先生は、笑顔になる。だって、ヘンリーは本当に素直な良い子だもの。
「ヘンリー様は、とても真面目に勉強されていますわ。きっとお姉様やお兄様が優秀だから、良い影響を受けておられるのでしょう。この前、息子が剣術を教えに来ましたが、とても褒めていました。優秀な方に基礎を教えて貰ったみたいだと感心していましたわ」
サリエス卿に感謝だね! パーシバルにも!
カミュ先生と弟達が上手くいっているようで、安心したよ。
まだドレスメーカーが来ないから、前から考えていた物を作ろうと工房に向かった。
これも錬金釜の応用だけど、討伐のキャンプでも良いかも?
お湯が沸くポットを作ろう! それと、ティーバッグも欲しい。
マグカップに入れて、お湯を注げば温かなお茶がいつでも飲める。
私の寮の部屋には、ミニキッチンは無いから、ティーバッグの方が便利だと思う。茶葉を捨てるのってミニキッチンがないと、難しいもの。
「薄い紙でも良いけど、ガーゼで作ろう!」
私の大好きな高級茶葉メーカーのティーバッグは、ガーゼで作られていた。それを真似しよう。
三角錐に縫って茶葉を入れて、縫いとじて、凧糸を付ける。その先に四角い紙を付けたいな!
「お嬢様、ドレスメーカーが来るのに何をされているのですか?」
私のティーバッグの図を見て、メアリーが首を傾げている。
「これに茶葉を入れて、カップにお湯を注ぐと簡単にお茶が飲めるのよ」
少し考えて、メアリーは頷いた。屋敷では必要ないけど、寮やキャンプでは便利だと認めたみたい。
「これを内職として孤児院に委託しませんか?」
あっ、良いかもしれない! 帰ったら、ワイヤットに相談しよう!
問題のドレスメーカーが出来上がったドレスを持ってきた。やはり高い気がする。これが相場なのかもわからないから、モヤっとするのだ。
メアリーは10月に相応しい服装で出掛けられるので、ホッとしているみたい。
「パーシバル様は12時過ぎにお迎えに来られるの」
今日も早昼をサッと食べて、おめかしタイムだ。
ドレスは濃い青で、縫い目はとても綺麗だし、生地もたっぷり使ってあるから、お嬢様ルックには良い。
でも、やはりよくあるデザインなのに高い気がする。
それに合わせて、新しいコートも作った。
柔らかで軽いアリエースの生地の水色のコートで、襟元には白い毛皮が付いていて、可愛いけど、値段は可愛くないね。
余った生地と毛皮も置いていってくれたのは、嬉しい。
この生地も、毛皮もシャーロッテ叔母様から格安で貰った物だから、当たり前かな?
「この白の毛皮でボンボンを作って、リボンにつけましょう」
濃い青の生地でリボンを作り、真ん中に小さな白いボンボンを付ける。
「ふふふ、可愛い髪飾りになりましたね」
メアリーは本当にドレスや髪飾りが好きだね。
今日はステディリングの上に婚約指輪を嵌めて出かける用意はできた。
鏡でチェックしたけど、なかなか可愛いよ!
「靴が……」
私的には、冬場のお出かけルックに似合うのはショートブーツだと思うのだけど、白の絹の靴下に黒の靴なんだよね。
鮮やかに染めた水色の皮でショートブーツを作ったら、可愛いと思うんだけどな。
一度、パウエルさんに相談したい。
「パーシバル様がいらっしゃいましたよ」
さて、今日のショッピングはどうなるかな?
手土産のチョコレートの箱も用意して、パーシバルを待つ。
「パーシバル様、お待ちしていましたわ」
こんな場合も、父親に挨拶をしてから出かける。
サッと挨拶を済ませて、馬車に乗るけど、メアリーが一緒なのはわかるけど、モラン伯爵家の馬車なのに、グレアムも御者席の横に座っているよ。
今日は、サリエス卿とユージーヌ卿も一緒だから良いのでは? まぁ、リチャード王子もいるから、サボっていると思われたらいけないからかもね。
王宮にマーガレット王女とリチャード王子を迎えに行くと聞いていたけど、パリス王子とリュミエラ王女も既に着いていた。
王妃様の部屋で、王族勢ぞろいだよ。サリエス卿とユージーヌ卿は、王宮にも慣れているみたい。
私とパーシバルも女官に案内されて、部屋に通される。
「ペイシェンス、パーシバル、婚約おめでとう」
私は、王妃様に母の形見のティアラを貰ったお礼を言いたかったけど、目で制される。他国の王族の前でする話ではないよね。
私は、少しだけ深くお辞儀して、感謝の意味を込めた。
リュミエラ王女の横に座っていたリチャード王子が立ち上がって、手を差し出す。
「さて、全員があつまったのだから、行きましょう! リュミエラ様、お手をどうぞ」
リチャード王子は、テキパキと話を進めるね。
「ええ!」とマーガレット王女も、王妃様の前から早く逃げ出したいみたい。
すかさずパリス王子がエスコートする。
まぁ、今日は他のメンバー全員が婚約しているから、マーガレット王女をエスコートするのは、パリス王子になるのだけど……。
少し王妃様の微笑みが深くなった気がして、ゾクッとしたよ。
「サリエス卿、ユージーヌ卿、頼んでおきますよ」
二人は普段の格好に剣を帯びていた。店の中で騎士の格好は目立つし、邪魔だからね。
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