第84話 バザールで新しい食物ゲット!
私とアンジェラは、メアリーとミアを連れて商店から出る。
少し先の露天商にサティスフォード子爵と弟達の姿が見えた。ああ、なんか木刀っぽいのを選んでいる。男の子って木刀好きだよねぇ。
「おお、アンジェラやペイシェンス様も来たのか? ここの木刀は南の大陸で使われている
ヘンリーはわかるけど、ナシウスも2本も選んでいる。そんなの使うのかな?
「一本はマシューへのお土産にするつもりです」
マシュー? 木刀より食べ物の方が喜びそうだよ。
「そう、でも何か食べ物も良いかもしれませんよ」
まぁ、男の子の考えは理解できないから、マシューも喜ぶかもしれない。サミュエルも色々な
「これがバランスが良さそうだ。貰おう!」
言っている事は一丁前だけど、バランスとかあるの? 全然、私には分からないよ。ヘンリーとナシウスも選んだ木刀の代金を払っている。
弟達は自分で払っても良いのに、私はメアリーが支払うんだよね。令嬢はお金など持ち歩かないってのも変なシステムだよ。
「ペイシェンス様は、何か見物したい物はありませんか?」
サティスフォード子爵が気を使ってくれた。ラッキー! でも、お淑やかにしなきゃね!
「あのう、香辛料や珍しい果物とかを見てみたいですわ」
ここにベンジャミンがいたら「プッ」と吹き出しているかもね。
「ああ、それなら彼方の商店が良いでしょう」
しまった! 猫を被りすぎて、令嬢に相応しい商店に案内されちゃったよ。確かに、バザールは人が多くて貴族の令嬢が侍女や護衛を連れて買い物するのには不向きなんだよね。
「ここは南の大陸や東の方からの香辛料や食物を多く取り扱っているのだ」
一番に行った商店とは違い半貴石とかは扱っていないみたい。ここもローレンス王国の農産物とかを店頭に並べている。南の大陸に運ぶんだね。
「これはサティスフォード子爵様、この度はどの様な御用で」
わぁ、手揉みして出迎えられたよ。本当に手揉みなんてする商人、初めて見たな。
「いや、親戚の子ども達に南の大陸から届いた香辛料とか珍しい果物などを見せてやって欲しいのだ」
領主様の言葉で応接室に案内され、色々な香辛料が運び込まれてきた。私の考えていたバザール見物とは違うけど、知らない香辛料の説明を聞けるのは良かったかもね。
「あのう、サティスフォード子爵、昨夜頂いた料理に使われている香辛料を買って帰りたいのですが、宜しいでしょうか?」
お客様をもてなす料理のレシピは大切だからね。秘密にしているかも?
「ええ、料理人にレシピを書かせましょう。シムズ、いつも屋敷に届けている香辛料を出してくれ」
これで、あの美味しいスパイシーな料理をエバに作って貰える。父親も使用人達も夏バテかもしれないから良いよね!
シムズは、他の香辛料もテーブルに並べて説明してくれた。
「ウコン! 黄色い染料にも使うと聞きますわ」
カレーの黄色は
一時、カレー作りに父親が嵌まったんだよね。でも、最終的には母親のお家カレーが一番美味しいってことになってブームは去ったんだ。
ほぼカレーに必要な香辛料は手に入った。うはうはな気分だよ。ローレンス王国風にするなら欧風カレーかな? お米も買えたし、満足!
「さぁ、これは南の大陸で人気の果物です」
にまにましていたら、目が釘付けになった。
「メロン!」叫んじゃったよ。前世で一番好きな果物だったんだもん。
「ええ、よくご存知ですね」なんてシムズに呆れられた。
「いえ、実際に見たのは初めてですわ。書物で読んだだけですの」
ガラスの器にカットされたメロン! 少し小ぶりだけど、異世界に来て初めてのメロンだよ!
「去年も一度食べたけど、甘くて美味しかった。皆も食べてみると良い」
サティスフォード子爵に勧められて、フォークで一欠片、少し前世のメロンよりは甘味は少ない気がするけど、美味しい!
「これはローレンス王国では栽培できないのですか?」
「コルドバ王国の南では作っているとも聞きますが、あまり出来は良くないみたいです」
温室なら作れないかな?
「他にも果物はありますか?」
食いしん坊みたいで恥ずかしいけど、こんなチャンスは二度と無いかも!
「色々な果物や変な食物も運ばれてきますが、なかなか人気は出ませんね」
シムズは肩を竦める。私は、その人気が出ない果物や食物にも興味がある。
「これはカカオと呼ばれる飲み物の材料ですが、苦いし、ドロドロしてて売れませんね」
こ、これは、カカオ! 前世のスペインでは飲み物として飲んでいたみたいだけど、チョコレートができるかな?
「少し分けて貰いますわ」なんてお上品に口にしたけど、頭の中はチョコレートでいっぱいだ!
他にも果物を見せてもらう。勿論、味見もね!
「これは船乗り達には人気なのですが、さほど美味しくはないのです」
椰子の実のジュースは、ほんのりとした甘さだからね。でも、中のココナッツは使い道が色々とあるんだよね。タイ風カレーも良いなぁ!
南の大陸かぁ、行ってみたいなぁ! 次々と出される果物の中にスイカもあった。夏といえばスイカでしょう!
椰子を栽培するほどの大きな温室はないけど、メロンとスイカはチャレンジしよう。カカオと椰子の実も購入決定だね!
「ペイシェンス、そんなに買って帰るのか?」
サミュエルが変な顔をしている。
「王都でも販売していますが、ここよりは高価になりますよ。お屋敷まで運びますから、どうぞご存分に購入して下さい」
シムズの言う通りだよ。王都より安いなら買わなくちゃね!
「ええ、これは留守番をしていた使用人達へのお土産に良いと思うわ」
私一人で食べる気は無いよ。ただ、メアリーが私が台所に行くのを嫌がるのが最大の難関だな。
考えていた様なバザール見物では無かったけど、色々とゲットできて嬉しい。なんて、浮かれて歩いていたけど、急に「カンカンカン!」と櫓の上から凄い音がした。
「これは、何処かの馬鹿が魔物を引き連れたまま港に入ろうとしているのだな!」
さっきまでのサティスフォード子爵とは違う厳しい顔で、護衛に私達を伯母様達が買い物をしている商店に連れて行かせた。
アンジェラやサミュエルは、慣れた様子だけど、私はドキドキしている。
「ナシウス、ヘンリー、大丈夫ですよ」なんて言っているけど、声が震えていないかな?
リリアナ伯母様とラシーヌと合流した。二人は鐘の音にも動ぜず、まだアクセサリー選びをしているけど、私と弟達はそわそわしている。
「ナシウス、ヘンリー、海の魔物は身体はでかいが、サティスフォード子爵達も慣れているから大丈夫だ。それより、今夜は魔物の肉が出るかもしれないな!」
魔物の襲来より、夕食のメニューを気にしているサミュエルの態度で、私達も少し安心する。
「アンジェラ、よくあることなの?」
アンジェラも平然としているので、尋ねてみる。
「ええ、本当は港に入る前に討伐するのがルールなのですが、たまに引き連れたまま入港する船もあるみたいです。お父様はよく怒っておられるわ」
港に魔物は拙いよね。何故、外海で討伐しなかったのかしら?
「きっと、船長も乗組員達もろくに魔法が使えない奴ばかりだったのだ。もう少し、魔法が使える人が増えないと困るな」
サミュエルもノースコート港をいつかは治めるんだもんね。
「カン カン カン」
さっきの急を告げる鐘の打ち方とは違って、間の開いたのんびりとした打ち方だ。
「討伐された様だな! サティスフォード子爵様は船長の事情聴取とかで忙しいだろうけど、ナシウス、ヘンリー、見に行くか?」
王都育ちで魔物を見た事が無いだろうと、サミュエルに誘われた。私も怖い物見たさで、見学したい。
「私は結構ですわ。母達とアクセサリーを見ています」
アンジェラは、醜い魔物など御免だと見学を断る。
「サミュエル、護衛達を連れていくのですよ。ペイシェンスも行くのですか? まぁ、仕方ないけど、気絶してもしりませんよ。メアリー、世話をしてね」
リリアナ伯母様も気がしれないって顔をしたけど、許可してくれたので、サミュエルと弟達と海の魔物見物だ。
大勢の野次馬達を護衛が押し退けて進む。こんなに人混みの中を歩くのは初めてだ。
「ああ、
鯨って前世でも大きかったけど、これは小屋よりもデカい。
「どうやって陸に上げたのでしょう?」
ナシウスの質問に、サミュエルが得意げに答えている。
「風の魔法で、陸に上げるのだ。航海には風の魔法が有利だから、港には風の魔法使いが多い」
こんなデカい魔物とヘンリーは戦うの? 無理じゃない?
想像しただけで血の気が引く。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
メアリーに支えられなかったら、倒れていたかも。
「おお、ペイシェンス様! 早く屋敷にお連れしろ!」
船長らしき人と話していたサティスフォード子爵が部下に指示をしているけど、もう大丈夫だよ。
「いえ、伯母様達が居られる商店に戻りますわ。人混みに酔ったみたいです」
サミュエルと弟達は、解体も見学するみたいだけど、それは遠慮しておこう。護衛が人混みを分けてくれるから、メアリーと一緒に商店まで戻る。アンジェラを見習えば良かったね。
なんて、反省したすぐ後から、どんな味なのか? なんて思っちゃうんだよ!
鯨って、前世でも一度食べただけなんだよね。鯨ベーコンとかだったから、王都のお土産にできるかな?
わくわくしながら屋敷に戻る。ナシウスとヘンリーは、初めて見た魔物に興奮している。怖いと思わないのかな? 私ならビビっちゃうけど? 異世界では、魔物を討伐するのも貴族の務めだから、ビビっていては駄目なのだろうけど、私は無理そう。
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