第83話 バザール!
今日はバザールへ行くよ! 私のテンションは朝からMAXだ! だって、昨夜の香辛料入りの料理、とっても美味しかったんだもん。カレーじゃなかったけど、スパイスが効いていて、夏で食欲が少し無くなり気味だったけど、美味しくて完食した。
毎朝すると決めたからオルゴール体操をする。サミュエルとナシウスとヘンリーも一緒だ。
メアリーにハンドルを回して貰って始めると、アンジェラが庭に出てきた。
「まぁ、何の音楽かしらと来てみたら……ペイシェンス様、何事でしょう?」
アンジェラも魔素を吸収した方が良いよね。来年からは、多分、ジェーン王女の側仕えになるんだから、生活魔法を使う機会は増えそうだもの。
「これは魔力を高めるにも役に立つのよ」
あまり魔素の件は広めない方が良いみたいだけど、アンジェラにも呼吸方法を教える。
「もっと、もっと吸って、お腹の下にまで空気を溜める感じよ。吐くのは、ゆっくり、ゆっくりと」
呼吸方法はまだまだだけど、アンジェラは音感もリズム感も良いから、体操はすぐに覚えた。
「まぁ、こんな簡単な体操なのに、身体がほぐれましたわ」
うん、よく考えられているよね!
「毎朝、続けようと思っているのだ!」
サミュエル? もしかして、アンジェラが好きなのかな? 話に割り込んできたよ。
「それが良いと思いますわ」
アンジェラは……親戚の男の子として見ているみたい。うん、サミュエルもかなり引き締まってきたし、私的には可愛いと思うけど、アンジェラは面食いだからね。ゲイツ様の顔が好きだと言うぐらいだもん。そのうち、内面が大事だと分かってくると思うから、サミュエル頑張れ!
夏の朝だから「綺麗になれ!」と唱えておく。皆、スッキリした気分になるだろうからね。
朝食の後は、待ちに待ったバザール見学だ。
「リリアナ、気をつけて見学するのだよ」
ノースコート伯爵は館に帰る馬車に乗る寸前まで、リリアナ伯母様に注意していたけど、バザールには宝石も売っているからかもね? まぁ、宝石商ほど高価な宝石は売ってはいないけど、私でも買えそうなアクセサリーとか髪飾りとか売っているそうだ。ショッピングだよ!
私は弟達と同じ馬車に乗りたかったのに、リリアナ伯母様、ラシーヌ、アンジェラと同じ馬車だ。サティスフォード子爵とサミュエルとナシウスとヘンリーが二台目の馬車。そして、メアリーは使用人の馬車だ。
「ペイシェンス様、バザールには怪しい人も大勢いますから、離れないように注意して下さいね」
ラシーヌに注意されちゃった。そんなに迂闊に見えるのかな? それにメアリーが一緒だからはぐれたりしないよ。
バザールの手前で馬車から降りる。うん、バザールは商店が両サイドにあり、その道路には露天商がびっしりテントを張っている。それに、凄い人だ。
「こんなに大勢の人が買い物に来ているのですね」
朝食を食べ損ねた労働者が、露天で食事をしている。まるで台湾の夜市だ! 香辛料の香りでむせ返りそうだ。
「はぐれないようについて来てください」
領主であるサティスフォード子爵を先頭にして歩く。私は弟達がはぐれたりしないようにしようと思っていたけど、目があちこちに行ってしまう。
「お嬢様、子爵様について行かなくては!」
メアリーに叱られたけど、仕方ないよね。だって、屋台で食べているのお米に見えるんだもの! 急かされるから、横目でチラリとしか見えて無いけど、スプーンで食べているのご飯だよね? ああ、でもクスクスっぽいのかもしれない。
「分かっていますけど……あの食べ物は何かしら?」
メアリーは、令嬢は労働者達の食べ物に興味を示すものではないという顔をした。
「それは、後で子爵様に尋ねられたら如何ですか?」
まぁ、それはそうだよね。凄い人混みだから、確かにはぐれたら拙そう。
「ナシウス、ヘンリー、行きますよ」
なんてお姉ちゃんぶるけど、弟達の方が賢いね。目はきょろきょろしているけど、ちゃんとサティスフォード子爵の後ろを歩いている。
「あの商店に入られるみたいですわ」
バザールの中でも目立つ建物に一行は入っていく。中には何があるのかな? 浮き浮きしちゃうけど、露天商も見て回りたいんだけど、無理かな?
商店の中に入ると店主や店員が総出で出迎える。
「ヨハン、少し買い物に来ただけだ。普通に営業してくれ」
店主のヨハンに子爵は気を使わなくても良いと声を掛けたけど、応接室に通されたよ。お茶より、見て回りたいけど、お淑やかに伯母様とラシーヌとアンジェラと座る。弟達は子爵と座っている。
「ノースコート伯爵夫人、サティスフォード子爵夫妻、ようこそお越し下さいました。これは南の大陸で作っている新しいお茶です」
綺麗なメイドが香りの良いお茶を、少し変わった茶器で出してくれた。
「まぁ、花の香りがするわ」
リリアナ伯母様が喜んでいる。私も、お茶を飲む前に香りを楽しむ。これは……ジャスミンティーだ! ローレンス王国では紅茶だけど、お茶は加工で変わるんだよね? 飲むとスッとする感じ、好きだなぁ。
「これを少し頂きますわ」
ラシーヌとリリアナ伯母様はお買い上げ確定だ。私も欲しいけど、値段が分からないから保留なんだよね。家へのお土産に良いけど……なんて考えていたら「これは、ウィリアムも好きそうだから、お土産にしましょう!」なんてリリアナ伯母様が家の分も買ってくれた。学長に就任したから、仲直りするのかな? 前に訪ねて来た時は、サミュエルの件で悩んでいた事もあるけど、父親を無視していたからね。なんて考えていたけど、違った。
「家へのお土産は、私が買いますから、ペイシェンスは自分の好きな物だけ買えば良いのよ」
リリアナ伯母様、ありがとう! でも、米と香辛料は買いたい。
「あのう、露天で皆が食べていた穀物は何でしょう?」
ドキドキしながら訊く。キヌアとかクスクスだったらショックだな。いや、それも買いたいけど、やはり米だよ、米! 期待でドキドキしながらヨハンの言葉に集中する。
「お嬢様、あれは南の大陸から輸入されている米です。労働者には腹持ちが良いと好まれていますが……」
私が「お米!」なんて叫んじゃったから、ヨハンはびっくりしちゃったみたい。近頃、ペイシェンスチェックが入らないから、地がでちゃっているよ。
「申し訳ありません。家の書物の中に米の料理についての記述がありましたので、どの様な味なのかしらと前々から想像していましたの」
リリアナ伯母様も驚いたみたいだけど、グレンジャー家の図書室の蔵書が多いのは知っているから「まぁ、それなら米とやらも買いましょう」とお土産に追加してくれた。
ありがたいんだけど、私のバザール見学とは少し違うんだよね。露天商を巡って掘り出し物を見つけたりしたかったよ。
「ありがとうございます」とお礼は言ったけど、少しがっかりしちゃっていた。
それから商店の中を見て回ったけど、ローレンス王国の産物も取り扱っているみたい。私は値段チェックとかしているけど、アンジェラやサミュエルは興味は無さそう。
「あちら側に南の大陸から運ばれて来た品物が展示してあります」
店員に案内されて、別のエリアに来た。ラシーヌとリリアナ伯母様は、そこで半貴石のアクセサリーを選んでいる。宝石より安いのかもしれないけど、買える値段かな?
「お母様、何を買われるの?」
アンジェラは、宝石をいっぱい持っているのにと不思議に思ったみたい。
「この様に安価な半貴石は王都ロマノでは手に入り難いの。ちょっとした御礼とかに重宝するのよ。さぁ、子供達は退屈でしょう。外の露天を見て来ても良いわ」
ラシーヌは、その半貴石をちょっとした御礼にあげると言うけど、あげる相手はサティスフォード子爵家よりも格下だったり、他家の使用人なのかな?
「私も見てみたいわ!」
アンジェラは女子力が高いからね。私もちょこっと見てみたい。
「わぁ、キラキラしているわ」
宝石とは違うけど、半貴石って素敵だよね。前世でも普段につけるアクセサリーとして使っていたなぁ。アンジェラは、アクセサリーを見ているけど、私はごちゃっと小箱に入れてある半貴石の方に惹かれる。
「これはお安くなっています」
店員さんに勧められる。悩むなぁ、形を整えて穴を開けたら、ビーズとして使えそうなんだよね。小物とかに刺繍と一緒に付けたら可愛いし、リボンにつけても良い。
「では、透明なのと青色と緑色と黄色とピンクの小さな石を買いますわ」
メアリーに支払って貰う。アンジェラは、ピンクの半貴石がついた髪飾りを買って貰っている。
「メアリー、エバにお土産を買ったら?」
勧めてみると、メアリーも本気で見だしたよ。
「これなんかどうかしら?」
木彫りのバレッタに小さな半貴石が付いている。
「メアリーと違う色にしたら良いと思うわ」
赤毛のメアリーには濃い茶色のバレッタ、茶色の髪のエバには黒いバレッタ。
「ええ、そうしますわ」
メアリーがとっても嬉しそうで、私も幸せな気分になる。
「ペイシェンス様は小さな半貴石を沢山買われたけど、アクセサリーは良いのですか?」
アンジェラに気を使われたけど、リリアナ伯母様からアクセサリーはいっぱい貰ったからね。王都でリボンを買ったら、半貴石をつけて髪飾りを作るつもりなんだ。
「ええ、それより弟達は子爵様と外に出たみたいですわ」
それに、私もバザールを見て歩きたい。米だけでなく、香辛料も買いたいからね。
「ペイシェンス、アンジェラ、外に出るなら、護衛と侍女を連れて行きなさい。すぐ側の露天商にパトリック様もいると思うから、一緒に回りなさい」
ラシーヌとリリアナ伯母様の買い物は時間が掛かりそう。女性の買い物が長いのは前世も異世界でも一緒だね。
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