第28話 マーガレット王女の側仕えは本当に大変です
マーガレット王女の側仕えは大変だ。放課後、部屋に行くと早速用事を言われる。
「数学の宿題がいっぱい出たの」
確かにプリントには何問もあるが、1枚だけだ。いっぱいなのか? 答えを教える方が早いけど、それでは駄目だ。マーガレット王女に解かせて、詰まっている所で、使う公式のヒントを出す。時間がかなり掛かったが、全問解けた。
「ペイシェンス、疲れたわ。紅茶を淹れて。貴女のも淹れるのよ」
特別室にはミニキッチンが付いている。メイドのゾフィーが出してくれた金の縁取りのある茶器で、紅茶を淹れる。前世でも紅茶が好きだったし、高級な茶葉なので香り高く淹れられた。
「紅茶、淹れるの上手ね。グレンジャー家では自ら紅茶を淹れてるの?」
家ではエバの薄い紅茶しか飲んでないよ。まだ茶葉まで生活改善はできてないんだ。嗜好品は優先順位が低いからね。
「いえ、でも嗜みとして淹れ方は知っています」嘘じゃないよ、前世だけどね。
「あっ、この曲を練習してね」
楽譜を渡された。ペイシェンスも知らない曲みたいだ。
「新譜ですか?」
「そうなの、音楽クラブは新曲を作っているの、素敵でしょ。ペイシェンスにも新曲を作って貰うわ」
前世の楽譜と少し違う所もあるけど、ペイシェンスの知識で読みながら弾く。
夕食を共に食べてから、今度は本の朗読だ。ハノンは夜なので配慮されたみたい。
CDプレイヤーとTVが欲しいよ。トホホ
次の朝、私は鐘が鳴る前に起きた。何故なら、マーガレット王女を起こして、身支度させなくてはいけないからだ。
「マーガレット様、起きて下さい」と何度言っても起きてくれない。生活魔法で起こせないものかな? 低血圧で朝が弱いのは身体の血液の流れが悪いからだと前世の記憶を引っ張りだす。
『起きて下さい!』
血液の流れが良くなるイメージでダメ元で唱える。起きてくれた。
「おはようございます」
「おはよう。ペイシェンス、何をしたの? とってもすっきり目覚めたわ」
そんな事言う割に、ベッドでまったりしている。私はイギリス貴族のドラマを思い出した。朝、メイドがお目覚めの紅茶を運んでいた。暖かい飲み物で、身体を目覚めさせてみよう。
時間を短縮する為に『お湯を出して!』と唱えてポットにお湯を注ぐ。ああ、やはり良い茶葉は香り高いね。明日からはちゃんと紅茶を淹れてから起こそう。
「マーガレット様、お飲み下さい」
ベッドの上で紅茶を飲んでいるマーガレット王女に『綺麗になれ!』と生活魔法をかける。
「紅茶を飲んだら着替えて下さい」
「着替えるのも生活魔法でしてくれたら良いのに」
なんて事を言いながらも、紅茶を飲み干すと、しゃきとした様子でベッドから降りて、着替えてくれた。やれやれ、これで髪を整えたら良いだけだね。
『カラ〜ン、カラ〜ン』
今朝は朝食の鐘が鳴る前に身支度ができてホッとする。
「何だかお腹が空いているわ。紅茶を飲んだからかしら? 変ね」
「暖かい飲み物で身体が目覚めたのでしょう」
昨日はほとんど朝食を取らなかったマーガレット王女が、ほぼ残さず食べていた。私は完食だよ。
「今日は音楽クラブだから、授業が終わったら教室に来なさい」
人使いが荒いよと文句をつけたいが、これも
火曜日は古典、数学、魔法学、ダンスだ。古典はもう少し勉強しないと駄目だ。ペイシェンスってマジ優秀だけど、頼りっぱなしは情けないよ。数学は終了証書早く取りたい。
お昼は、何故かキース王子まで魚を選んだ。リチャード王子が魚を選んだから真似したのかな? 勿論、私は魚だよ。
「魚も食べられないことはないな」だなんて、キース王子ときたら生意気。なかなか可愛い性格だよ。皆様、高評価で良かった。不味いのを『美味しい!』と食べていると思われるのは辛いもの。
魔法学は多くの学生が飛び級していた。2年も1年も。授業内容を変える必要があるんじゃないかな? なんて事を考えたり、他の事を考えたりしていた。そう、スイーツについて。今日のデザートも甘すぎて、流石の私も完食を諦めたレベルだったんだ。高い砂糖や卵が勿体無いよ。自分好みのクッキーとかケーキとか食べたいよ。エバにレシピ教えれば作ってくれそうだけど、お金がいるんだよね。
ダンスは……何も言いたくないよ。2年生になって、親しくしている学生いないんだよ。まぁ、1年生でもさほど親しくしていなかったけどね。飛び級したルイーズはここでももてていたね。私はどうせガリ勉のチビですよ。女子の方が少ないから、相手はいるけど、上手い人とは組めなかった。それは悲惨だよ。ダンスってリードが上手ければ、何とかなるところがあるからさ。言いたくないと言ったけど愚痴っちゃったね。
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