第20話 おうちデート

 高瀬雪穂は部屋の片付けをしていた。


 今日は柏木奈乃ちゃんとおうちデートだ。電話で私の家に招待したいと言ったら、奈乃ちゃんはとても喜んでくれた。

 言わないとフェアじゃ無いかなと思ったので、家族は出掛けていて二人っきりだということも言ってある。


 二人きりでおうちデートにOKってことは、そういう事よね?

 OK貰えたって事よね?!


 家族が朝早くにに出掛けてから、家の掃除を始めた。普段から掃除はしてある方だと思う。でも、奈乃ちゃんが来るんだもの、念入りに掃除しないとね。


 庭先、玄関、居間、台所、廊下に階段、トイレに洗面所、お風呂も掃除した。

 奈乃ちゃんが立ち寄るところはこんなものだろうか?


 そして私の部屋。

 ここは正直どうして良いかわからない。

 片付いてるし、掃除もしてある。


 ベッドのシーツや枕シーツも替えた。新品に!

 奈乃ちゃん、このベッド気に入って貰えるかな?



 悩んでいるのは部屋の装飾に関して。

 基本的に私の部屋は、好きなもの、可愛いもので埋まっている。

 壁も全面好きなものだけで埋まっている。写真やポスター。最近、カメラを買ったので、写真が増えた。

 いくらなんでも壁四面とも写真だらけってのは、奈乃ちゃんに引かれるかしら?

 今日だけはカメラオタクとかいわれるのを避けるため、壁の写真を減らすことにする。


 壁や天井に貼られている奈乃ちゃんの写真の中から、特にお気に入りの写真を数枚選ぶ。ポスターサイズに引き伸ばされた奈乃ちゃんの写真は何枚もあるけど、ポスターはA1サイズ一枚だけにする。印刷屋さんでラミネート加工のパネルにして貰ったお気に入りだ。バストアップの写真で、ほぼ等身大の尺度になっている。立った時に、実際の奈乃ちゃんとの身長差になる位置に飾ってある。


 厳選して奈乃ちゃんの写真の枚数を元の一割程度に絞りこんだ。

 今後も奈乃ちゃんを部屋に連れ込むなら、写真はあんまり増やせないかな?



 駅前に奈乃ちゃんを迎えに行く。


 今日も奈乃ちゃんは可愛い。

 白の半袖シャツに黒の膝上ワンピース。白のハイソックス。黒のローファー。と、夏に合わせて涼しげな格好。でも、露出を多くできない制限を課してるのかな。

 そしていつもの私が買ってあげたシュシュ型のブレスレット。いつも気を使ってもらってわるいわ。もっと沢山、可愛いアイテムを買ってあげなくっちゃ。


「おはよう、奈乃ちゃん」

「お早うございます。雪穂ちゃん」


 暑い中、奈乃ちゃんを歩かせたくなかったので、バスに乗る。待ち合わせ時間からバスの時間に合わせてあった。

 二駅で最寄りのバス停に着く。



「おじゃまします」

 奈乃ちゃんにリビングに入ってもらう。

「お昼ごはんにしよ!」

「え? 雪穂ちゃん、作ってくれるの?」

「ええ、下ごしらえ済ましてあるの」昨日からね。「奈乃ちゃんは座って待ってて。すぐできるから」


 スパゲッティーに、スティックサラダ、フライドポテト。細長い食べ物を揃えたわ。奈乃ちゃん、思う存分ハムハムしてね。



 食後に私の部屋に入ってもらう。

「え?……え……」奈乃ちゃんが二回、え?って言った。可愛い。

 私の自慢の写真。どの写真も、奈乃ちゃんをサイッコーに可愛く撮れてる!

 奈乃ちゃん、気に入ってくれるかな?


「奈乃ちゃん、これ見てほしいの」

 奈乃ちゃんにパソの前のゲーミングチェアに座ってもらう。

 ゲーミングチェアって言ってもゲームはあまりしない。動画編集に長く座ってるので最近買った。


 動画を再生する。


「……え?……」奈乃ちゃんが驚いている。

 奈乃ちゃんの自作PV。動画の勉強いっぱいした。奈乃ちゃんのPV作りたかったから。


 静止写真の組み合わせと、わずかにビデオ撮影した素材も使っている。

 後から見たときに、時代がわかりやすいように、今流行ってる曲をBGMに使った。


「……ビデオって撮ってた?」

「最近の一眼レフカメラ、ビデオ撮影機能が付いてるのよ」

 気付いてなかったのかしら?


「どう? 可愛くできてるでしょ?」

「……あ、うん」


「結構自信作なの。動画サイトに投稿してもいい?」

「待って!」




 柏木奈乃は待ち合わせの駅前に来ていた。


 高瀬雪穂ちゃんが既に待ってた。

 濃い青基調の派手な柄の開襟シャツ。黒のハーフパンツに黒のスポーツサンダル。

 上から下まで全部メンズじゃないの?


 ううん、ラフな雪穂ちゃんもカッコいい!


 今日はおうちデートだからラフな格好にしたのかな?


 雪穂ちゃんのおうちはちょっと大きかった。周りの家もちょっと大きいよね?

 もしかして高級住宅街?

 薄々感じてたけど、雪穂ちゃんってお嬢様?


 お昼ごはんは雪穂ちゃんが作ってくれた。

 スパゲッティーはすすったりするの恥ずかしいから、端っこからちょっとずつ食べる。

 スティックサラダもお洒落だけど、大きな口でかむのも恥ずかしいから、これも端っこからちょっとずつ食べる。

 なんか今日は食べるのに時間がかかるメニューなんだけど?



 食後に雪穂ちゃんの部屋に連れてかれた。


「え?」絶句する。

 沢山の写真が飾ってある。全部私の写真。ポスターみたいな大きい写真もある。

「……え……」

 こわい。こわいこわい。こわいのだけど?!


 見たところ私の写真が20枚くらいは飾ってある。

 いくらなんでも多すぎない?


「奈乃ちゃん、これ見てほしいの」

 パソコン用の大きなイスに座らされた。

 雪穂ちゃんは動画を再生する。


「……え?……」

 流行り曲に合わせたPVだった。アイドルのイメージビデオみたい。とても出来が良かった。雪穂ちゃんってプロなの? すごく凝り性なのかしら?


「どう? 可愛くできてるでしょ?」

「……あ、うん」自分のPVじゃなければ出来のよさを誉めたと思うけど……。

 自分のPV見せられるのって、とても恥ずかしいのだけど!


「結構自信作なの。動画サイトに投稿してもいい?」

「待って!」



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