お題:エレベーター、光、ロボット
やばい! どうしよう!
エレベーターの中。僕は緊張していた。
密閉された空間に僕以外にいるのは美人なお姉さん。
それだけでも、マセガキ筆頭といわれた僕には緊張する要素だけれども、それよりも、だ。
今、僕の目の前に映るのは光っている緊急停止のランプと、そして床に置かれた皿の上でエレベーターの光で輝く一貫の光り物。
全く理解が追いつかない。だけれども、それはそこに存在している。
さっき停まった階で坊ちゃんにあげようって酔っ払ったおじさんが置いていったんだけど、なんで明らかに回転寿司で見る様な皿に乗ってるの!?
え? さっきのおじさん、盗んできたんじゃないかなこれ!?
「あの、すみません」
僕がその寿司に悩んでいたら、綺麗なお姉さんが声をかけてきた。
それにとっさにビクッてしちゃったけど、な、なんだろう…?
「なんでしょうか?」
「食べないと。お寿司、悪くなりますよ?」
いや、そりゃ分かるよ?
僕だってこのままにしてたらダメだって言うのは分かるんだけどさ、だってこれ色々なんかやばそうなんだもの!
でも、こ、こういう時なんて言えば……。
「その様子から見るに、エレベーターの故障が気になるのでしょうか?」
考えていたらお姉さんがそう口にする。
「あ、えっと」
「無理もありません。あなたの様な少年ではこの事態では不安を持つ事もありますでしょう。たまごクラブ・ひよこクラブ・こっこクラブ・ペンギンクラブを全巻インプットしている私には分かります」
ドモッていたらお姉さんがそんな事を。
何言ってるのかよく分からないけど、なんかちょっと怖い様な……?
「ではエレベーター復旧するまでの間、不安を和らげるためにこういうのはいかがでしょうか?」
そういうと、お姉さんは手を前に出し―――、手から光が放たれ、それはお寿司を照らす。
何が起こったのか分からずに見ていると、それは子供が良く見る様な映像でそれがお寿司のネタに映っている。
けど、凄い乱反射して地味に眩しい!
というか、
「お姉さん、もしかしてロボットなの?」
「いえ、一部機械なだけです。他は生身の体です」
そう言うとお姉さんは光を出してる手を開けて色々なボタンや配線が見えているのを見せてくる。
「こういう感じですね」
「へ、へぇ……」
よ、よく分からないし、なんか怖いけど、なんかかっこいい。
「それにしても、エレベーターに二人っきり。これは、ふむ、そうですね」
そう言うとお姉さんは僕の方へと視線を向けてくる。
こ、これは!
お父さんのお部屋のベッドの下にあった漫画で見た事ある!
「お姉さんと良い事しませんか?」
「い、良い事って?」
「それはですね……」
お姉さんはキラリと僕とお寿司を見た。
その様子にツバを飲む。
「ロケットぱーんち!」
「凄ーい!」
凄い! 本物のロケットパンチだ!
ロケットパンチはエレベーターの扉にぶつかって凄い音を出したけど、本物だ!
僕が思い描いたロボットだ!
「次は、目からビーム」
「おおー!」
凄い! 本当にビームが出てる!
そのビームはエレベーターの天井に当たって穴を開けた。
……穴?
あ! あれなら穴から外に出てお家に帰れるかも!
「あれなら外に出られそう!」
「そうですか」
「うん! ありがとうお姉さん!」
「いえいえ」
「それじゃあ!」
そうして僕は天井の穴に手をかけて、お姉さんに呼び止められた。
振り返ると僕を見上げているのと目が合う。
「お寿司どうします?」
「あ、うーん? お姉さんにあげるよ」
「そうですか」
「うん! それじゃあ!」
僕は微笑んで見てくるお姉さんに手を振ってエレベーターを後にする。
良かったー。これでお家に帰れるよー。
☆☆☆
そのマンションには、昔、ロボット好きな少年がいたが小学校から帰る途中で事故にあってしまったという。
それに悲しんだ両親は少年の遺体を科学者に頼み欠損部分を補う機械と、ふと少年が言っていた綺麗な女の人にもなってみたいという願いも叶え、少年の体細胞を培養液で増やし使用した自立可動型ラブド……―――ガイノイドを作って貰ったのだという。
あと、なんか、マンション付近でその事故に遭った少年の幽霊も度々目撃されているらしく出るとかでないとかで専門家の間では意見が分かれているのだそうだ。
これにて終わる。
ほら、散れ散れ!
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