お題:穢す、デート、名字

 今日は今市太郎こんしたろう君との待ち合わせです。

 はあ、緊張してきました。今、何時ですかね?

 緊張を紛らわせようと時計を見ると、まだ集合時間の二十一時間前。

 ちょっと緊張して早く出過ぎちゃいましたかね。

 でも、遅れるよりはマシですよね。


 そうしながら私は今市太郎君を待ち続ける。

 でも、ふと想像しちゃいます。もし、今市太郎君が来る前に私の所にナンパが現れて、私を穢そうとしてきたらどうしましょう。

 でも、そういう時は今市太郎君が颯爽と現れて助けてくれたりなんかしたりして!


「うふふふふふふ……」


 想像したら笑みがこぼれます。

 ああ、早く来ないかな。ナンパ野郎。

 はっ!? 違う! 今市太郎君を待たないといけないんでした。


 危うく別の目的になりそうな思想を頭を振って追い払う。

 全く私ったら……。


「あれ? ソメンタベ、何、してるの?」


 この声は……!


 私が声の方へ振り返ると、そこにはフリフリのよく分からないスーツに身を包んだ同級生が一人立っていて、手にはデフォルメされた心臓ハート|の型と、星の型がついてる棒きれを持っています。


「ヨシノ、何故、ここにいるのですか?」

「あ、貴女には関係ないでしょ? 私は大切な用事があってここに来たの」

「へぇ、そうなのですか。私は今市太郎君とのの為にここにいるので、少し十七光年離れて頂けませんか?」


 シッシと追い払うように手を向けると、ヨシノは固まりました。

 まあ、確かに多少失礼でしたかね。ですが、今市太郎君以外のこの惑星の下等生物にはこれが丁度良いでしょう。


「何言ってんの? 私が今市太郎君とデートなんだけど? というか、宇宙人が他の惑星の人とデートってどうなのー?」


 ぐぎぎ! 痛いところを突きやがりましてからに!

 それに、なんですかこのドヤッていう顔! 凄く不快な顔です!


「何をおっしゃるウサギさんです! 私が今市太郎君とデートなのです!」

「そんな訳無いでしょ! 私が今市太郎君とデートなのよ!」


 ぐぎぎ! この雌現地人!


「分かりました。では、どちらが本当のデートなのか」

「はっきりさせようじゃない!」


 そういう事で私とこの人の決闘のために今市太郎君のご実家にお邪魔します!


「そういう事なので、今市太郎君」

「私達の勝負、正式な判決を」

「「決めて!」ください!」


 入浴中を狙って風呂場の窓から侵入した私達を前に固まる今市太郎君。

 と、今市太郎君が口を開く。


「あのさ、色々言いたい事あるんだけど。頭洗ってからででもいい?」

「勿論です!」

「はい!」


 そうして今市太郎君がお風呂で頭を洗っている間、私達は今市太郎君の太郎君をガン見していました。


 な る ほ ど !


「それで、勝負って、なんでそうなったの?」


 頭を洗い終えた今市太郎君が湯船に浸かりながら問いかけてくる。

 これは経緯を話した方が良いみたいですね。

 そうすれば彼もこの戦いに賛同してくれるはずです!


「実はですね―――」


 ☆☆☆


「いや、俺、二人と遊びに行きたくて誘ったんだよ?」


 その言葉にちょっとトゥンクしちゃいました。

 ま、ままま、全く。私のマイダーリンは仕方無いですね!

 って、ちょっと待って下さい。私が今市太郎君と結婚するとなると名字は変わりますから、ソメンタベ内藤ないとうになっちゃいます!

 ああ、そんな! こんなのって! 毎日パスタになりそうですね!!


「まあ、実を言うと肉屋で買ったハンバーグの中に当たりくじで三人一組ペア近所のなんかのやかたチケットが入ってたから、折角だしと思ってなんだけどね」


 そ、そんな理由だなんて! トゥンク……。


「ま、全く。それならそうと言ってくれれば良かったじゃないですか! 危うく変な行動に出るところでしたよ!」

「そうそう。そういうのは事前に言ってよね!」

「え? 俺、誘った時言ってたよね?」


 私達の言葉におろおろする今市太郎君ですが、全くなんでこの方は私の趣味嗜好が分かるのでしょうか。

 なんかの館、なんて曖昧なもの。絶対わくわくしますよ!

 これにときめかない者なんていないですよ!


「ところでさ、そろそろ言わないとと思ってる事があるんだけど、言っても良いかな?」

「なんでしょうか?」

「何?」

「あのさ―――」


 いったい何を言うつもりなんでしょう?

 ま、まさか!


「ここ家の中だからさ、土足はやめてね?」


 その言葉を聞いてハッとしました!

 そうでしたここはお風呂場。つまり、家の中です!


「すみませんです!」

「今、玄関に脱いでくるわね!」


 私とヨシノは慌てて玄関まで走り、靴を脱いで再度お風呂場へ。

 そこでは体を拭いている今市太郎君の姿。

 ああ、そんな彼の姿を見て私の欲望は暴発しちゃいます! 私は今市太郎君のリンスになりたいです!

 そんなこんなで汚部屋で着替えた今市太郎君。

 それをずっと見ていた私達。

 と、そんな私達の方をいたずらに笑いながら見てくる今市太郎君。

 な、なんでしょう? 凄く惹かれる顔です!


「それじゃあ、二人とも折角来たんだし、知育用菓子ねるねるね○ね作ろっか」


 その一言が私の人生を狂わせた。

 ああ、練れば練る程色が変わって―――、頭が更に良くなっちゃうのほぉー!

 ああ、更に、更に! 三番の粉付けて食べたら、……んー、私は三番の粉ない方が好きですね。


 こうして、私達は彼の家で知育用菓子を混ぜながら夜を過ごし、

 街の青少年保護の条例に違反した事で、今、刑務所ムショの中にいます。

 ふふ、全く。私の経歴を穢されるとは。 なんでも欲望のまま動くものじゃありませんね!

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