お題:どうしようもない、階段、銃弾
なんで、どうしてだ。
俺は今目の前で起きている事に頭を抱えていた。
そう、今日は大事な期末テスト一週間前のテスト勉強期間。
なのにも関わらず、授業を受ける俺の筆入れには銃弾が入っていた。ただ銃弾が入っているだけなら良かったが、それ以外全く無い。
銃弾じゃあ文字が書けない。
どうする、どうすれば良い……。
思考を巡らすが全く良い案が思い浮かばない。
だが、そんな俺とは裏腹に授業の時間。いや、俺の貴重な勉強時間が削れていく。
くそ! なんで今日に限ってなんだよ!
だが、悔しがったところで俺の勉強が進む訳じゃ無い。冷静になれ、俺。
そう思い、ふと窓の外を見る。
そこからは階段が見える。特に何もないのだが、見ているとなんとなく気が紛れるのだ。それに、今の時間は誰もいない。当たり前だ。今は授業中なのだから。
たまに女子生徒が登る時に
それが、その考えが間違いだった。
俺の視線の先には真実の口みたいな顔の奴が、フリフリの衣装を身に纏い可愛らしい杖を手にした魔法少女と対峙していた。
なんでここで!? いや、それよりもだ。
もし、戦闘が激化して校舎が破壊されてでもしてみろ。
そしたらテストが無くなり、俺がテストで百点を取って親に近所の肉屋の美味いかき氷を買ってもらうという約束が無くなる。
それは避けたい。どうする、どうすればいい……。
だが、悩んだところで一般人である俺がどうにか出来る訳は無い。
そう悟り、何も出来ない無力さと絶望ではぁーと溜息をつく。
そのせいで上を向くと、―――見てしまった。
魔法少女が戦っている階段の上の踊り場でトイレの花子さんが、身を隠すように陰からキラキラ光るうちわを持っているのを。
そこには『頑張れ!魔法少女☆キラキラハネムーン』の文字。
なんでだよ! なんで見知らぬ魔法少女にファンがいるんだよ!
というか魔法少女の名前! なんか、こう、もっと良いのあっただろ!
と、思わず言いたくなったが、今は授業中。俺のテストのため、俺自身が授業を妨害する事があってはならない。
そう思い、俺は深呼吸し心を落ち着かせる。
ふう、深呼吸したら落ち着いてきた。
『あのー、すみません。なんか持ってませんか?』
俺の見ていた窓に急に現れて、そんな紙を手に張り付くヒューマン型の宇宙人を見るまでは。
それを見て一瞬、窓から遠のくために動きそうになったが授業を止めてはいけないと咄嗟に体を止める。
なんでこういう日に限ってこんな事が起こるんだよ。というか、なんかって何だよ!
思わず言いそうになった。だが、ここで声を出せば先生が俺の行動が気になってしまい授業を止めてしまうだろう。
だが、今、手元には銃弾くらいしか……。
あ、そうか!
俺は閃き銃弾の中にある火薬を取り出し、紙に擦りつける。
そうして俺は、『なんかって何?』と書き宇宙人へと見せた。
すると宇宙人は顔を下に向ける。
下に何かあるのか?
そう思い俺も窓から下を見る。
そこには、朝俺がうっかり落としてしまったロコモコが花壇に咲いている。
それがどうかしたのだろうか?
あ、もしかして。
ある事を感じ取った俺は咄嗟に静かに鞄から箸を取り出した。
多分、この宇宙人はロコモコが食べたいが物が無いために食べれなくてここに来たんだろう。そう考えたのだ。
そうして俺はソッと窓を開けて箸を渡す。宇宙人は俺の箸を見て、ビクッとしたがおずおずと箸を受け取る。
なんかちょっと可愛いじゃないか。
俺がそう思った時だった。
急に学校のベルが鳴り響き全員がビクリと当たりを見渡し、俺が一番恐れていた事が、授業が止まってしまった!
いや、まだ、これから再開するかもしれない。
信じろ。奇跡を! 神を!
懇願する俺だが、次の言葉で俺の願いは絶望に変わった。
『緊急連絡、緊急連絡。現在、西校舎南口北通路東階段で魔法少女と怪人が戦闘中。在校生の皆さん、及び教員は魔法少女の応援、並びに教室からの避難を実施して下さい。繰り返します―――』
そうして俺のテスト前勉強、いや、テストは幕を閉じたのだった。
つまり俺の親の金でかき氷食べるという目的は終わりを告げた。
その変わりと言ってはなんだけど、今、俺は転校生と称して入学してきた宇宙人と魔法少女に何かと絡まれる日々を送っている。
はあ、全く。二人とも俺を挟んで顔を合わせる度に毎日毎日喧嘩して、はあ、どうしようもないな。
それと、なんか、トイレから出る度に後ろから妬ましい感情を感じるんだよなぁ。
お・し・り
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