お題:心臓、クッキー、毛布
「し、心臓?」
私は困惑していた。
錬金術師として薬品などを作っていた私だが今回のレシピは難しいと思う。
何せ、材料に心臓って書いてあるんだもの!
師匠、いつも変な材料書いてるけど、今回に至っては全く分からない!
心臓を使う風邪薬って何だよー!
くそう、考えろ。師匠のいつもの言葉を思い出せ!
―――むお? まだ傷薬も出来ておらんのか!?
ああ、ダメだ。師匠のイラつくあの顔しか出てこない!!!
なんで私はあの師匠の元で頑張ろうと思ったのか。
ああ、もう嫌みったらしいあのクソジジイ!
って、今はそんな場合じゃ無い! 依頼主の風邪薬を明日までに完成させないといけないんだ!
「早く、この薬屋から独立する為にも!」
「まあまあ、クッキーでも食べて落ち着くんじゃ」
「はあ、なんですか師匠。私は忙し―――」
視線を向けると、そこにいたのは白い髭を蓄えたジジイ、では無く、年齢一桁代だろうと思われる少年がいる。
誰、この可愛いショタは!!!
「僕ぅ~、どうしたのかなぁ?」
「いや、さっきの会話でワシだって分かるよね?」
「え?」
どういう事だ?
見た目可愛いのに、なんかよく分からない事言われたぞ?
そんな私の方を見て「マジかぁ~」という美少年。あ、可愛い。
「というか、何で悩んでたんじゃ?」
「え?」
私、何か悩んでたっけか?
……っ!
「そうだなぁ。君の名前も何も知らない事だなぁ。どこ住み?てか、ラインやってる?」
「ワシはここの主人、パイルドゲインじゃ」
「じゃあ、ゲイルくんね」
「普通略すなら最初の数文字じゃないか? ……まあいい。そんな事よりもじゃ、さっきは何で悩んでたんじゃ。紙を見ながら」
「え?紙? …ああ」
そういえば依頼のレシピ見て悩んでたんだった。
って、ちょっと待って! この子私の事意識してる……?
え? ちょ、ちょっと待って! そ、そんな! ダメだよ。まだ、私何も知らないのに!きゃっ!
「どうしたんじゃ。身を屈めて。というより、これワシのレシピじゃないか! レシピ見て悩むってどういう事じゃ」
「だって、心臓ってあるから準備できないなってお姉さんがっかりしちゃって」
「心臓?」
そう言って紙に目を通すショタ。
ああ、あんな真面目な視線やばいぃぃいいいい!!!!!
でも、毛布とかにくるまって芋虫!!!とかやって年相応の行動も見たい~!
「もしかして、心臓って、このハツの事か?」
「そうなのよ。心臓取ってくるなんて私怖くて出来ないもの。でも、私のハートはあなたにゾッコン!」
「……まあ、説明不足だから仕方あるまいか。これ、魚の事じゃぞ?」
「……へ?」
「じゃから、魚のハツじゃ!」
「ええ!? 本当!? じゃあ、ちょっと市場でお姉さん買ってくるわね!」
「うむ、行ってくるが良い。あと、鮫の肝臓もよろしく」
「もう! 分かったから大人しく待ってるんだよ? じゃあねぇ!」
そう言って私は意気揚々と家を出た。
ふふ、返ったら美ショタがいるなんて幸せじゃない!
あ、でも待って。あの子が頼んだ鮫の肝臓って何に使うんだろう?
……ま、いっか!
そういう事で私は市場へ行ってハツと鮫の肝臓を購入!
さあ、帰るわ!
「ただいま~! 良い子で待ってた~?」
「お帰り、お姉ちゃん!」
「お、お姉ちゃん?」
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん!?
「はふぅ―――」
薄れ行く意識の中、頭の中でこだまするお姉ちゃんの言葉。と意識顔切れる前に聞こえた「こやつは全く」という声。
ああ、ショタにおねぇちゃんって呼ばれるなんてぇ~!
目を覚ますと、私は床で寝ていた。
簡易な布をかけられてはいるが。
「気がついたか」
と、目の前に現れたのはショタ、じゃなく
ゆ、夢だったのか……。
「どうしたんじゃ気を落として」
「良い夢を見てたんです! ああー、もう……」
「そうかい」
そうかいじゃない! 爽快でもないし!
もう、不快~!!!!
「って! そう言えば依頼の薬!!」
「これか?」
師匠が出したそれは紛う事なく風邪薬。
「え? 師匠?」
「全く、作業中に寝るんじゃない。あと少しで成分が変わるところじゃったぞ。ほれ、途中までとは言えお前が作ったんじゃ。責任持って届けに行くんじゃ」
「はい!」
そうして私は、薬屋を後にする。
「はあ、全く、万能薬の開発中に偶然とはいえ若返りの秘薬が出来るとは。レシピに残すかどうか困ったもんじゃい。まあ、
窓越しに手のかかる弟子を見送りながら、老パイルドゲイルは静かに揺れる椅子に腰掛け目を閉じた。
~Fin~ ってするとオシャレだよね!
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