お題:灰、透明、小鳥

 私、小鳥広子ことりひろこ、高校二年生! 今をときめく十七ちゃい!!

 今日は学校の七不思議である闇夜にさ迷う吸血鬼を探しに来ました!


「ねえ、広子。どこに向かって何してるの?」


 と、怪訝そうな顔をして私を見てくるのは友達の霧ヶ咲きりがさき希有きう

 同じクラスの子なんだけど、肌が白くて目が赤いっていうファッションの女の子だよ。


「ふっふっふ、希有。よくぞ聞いてくれまんた! 私は今、学校に忍び込む理由を述べることで通行人の皆さんにも分かりやすくかつそういう理由かーと納得させるために言っているのですのよ!」


 そう、私は何も変人だからさっきの言葉を言った訳では無いのがこれで分かってもらえただろう。


「まあ、意味は分からないけど、そんな大声で言ってたら―――」

「ほう、そういう理由で立ち入ったか。小鳥」


 え?この声は―――


 そう思い見やると、そこには生徒指導教員、鬼の源五郎と謳われた教師、鬼の源五郎が立っているではありませんか!!


「な、なじぇ、鬼の源五郎がここに!? 貴様には家から外に出れないよう、トラップの玄関先のエロ本置きを仕掛けたはずッ!!!!」

「分かってないな小鳥。良いか? 世帯持ちは、エロ本では興奮しないッ!!!」

「なっ!?」


 しょ、衝撃の事実だった。あの鬼の源五郎、結婚してたのかッ!!!


「え? 先生、一つ聞きたいんですがそのポケットに丸めて入れている本は……?」

「霧ヶ咲、お前は何も見なかった。良いな?」

「あ、はい」

「という訳だ、夏休みにはこういう馬鹿が校内に入り込むため見回りに来る俺の事も考え立ち去れッ!!!!」

「なんの!!」


 私はすかさず体を後ろに引き鬼の源五郎の手をかわし、


「くらえ! 昨日のキャンプの思い出に持ち帰った炭火焼きの残骸の灰!!!」

「ぐあ!? 前が!!」


 偶然ポケットに入れていた記念の灰で源五郎の視界を奪うッ!!

 くそ、折角の思い出なのに。くっ、しかし、役に立ったぜ私の思い出!!

 さらば近所のキャンプ場2021年の思い出ッ!!


「ちょっと、広子! 何もそこまでしなくても―――」

「ええい! 問答無用のはげちゃびん! 行くよ! 希有!」

「あ、ちょっと!!」


 そうして私は希有の手をとり共に校内へと入り込んだ。


「はあはあ、ここまで来れば、追いかけて、来れまい」

「いや、昇降口の入り口の鍵閉めたくらいでそんな。というか、広子、なにかと賑やかなくせに体力は無いわよね」

「う、ううう、うるさいな! 現役帰宅部、元美術部兼漫画部兼手芸部を舐めるんじゃ無いよ!」

「どれも兼部してやめるなら一つにすれば良かったのに」

「いいから、さあ、さ迷う吸血鬼を探しに行くよ!!」


 と言うことで懐中電灯片手に……。


「てか、学校なんだから電気付けながら行けば良いよね」

「え?」


 ポチッとな。


 わあ、明るい!


「よし、希有行こう!」

「え? え? いや、言いたいことは色々あるんだけどさ、雰囲気とかさ、広子はそれで良いの?」

「え? 何が?」


 明るくて何が不満なのだろう??

 あ、もしかして!


「なに? 希有、まさか今日化粧し忘れてあんまり見せたくない顔とか?」

「化粧はしてないから。はあ、広子がそれで良いなら良いわよ」


 は? 化粧して無くてそんな綺麗な顔とかふざけんな!!!


「どうしたの広子、そんな顔して。ほら進むわよ」


 納得いかないが、本題はそこでは無い。くう、後で見てなさいわよ!

 あんたを超える超絶ボンキュッボン美少女になってやるんだから!! ぐぬぬっ!!


 悔し涙をこらえ進むと、噂のトイレに辿り着く。


「ここだよ。希有、ここに七不思議の」

「そこは花子さんでしょ? 全く、吸血鬼が目当てなんじゃ無いの?」

「いやいや希有。七不思議は順を追わないと。そう! そして花子さんは、―――5つ目の怪異」

「じゃあ、最後の方じゃ無いの。最初はなんなのよ」

「え? 最初、最初は―――」


 あれ? 最初なんだっけ? ……あっ! そうだ!


「最初はトイレの花子さんだ」

「……は?」

「そしてその次もトイレの花子さん」

「いや、広子。ちょっと待って。花子さん以外の他の七不思議は?」

「え? 花子さんの他? 七番目の吸血鬼だけど?」

「いやいや、ネットとかでも学校の怪談6つ全部花子さんの怪異なんて聞いたこと無いわよ!?」

「えー? でも本当の事だし」

「本当って、ちょっと七不思議言ってみてよ」

「えーとね」


 と、私は希有に七不思議を語る。


 遊ぼうと誘ってくるけど最新の遊び知らない花子さん。

 マ○カで勝負しかける花子さん。

 スマ○ラで勝負しかける花子さん。

 二宮金次郎と秘密のデート花子さん。

 歴代校長の七番目の校長の肖像画に相合い傘を描く花子さん。

 スマホ持ってパパ活してる花子さん。

 学校をさ迷う吸血鬼。


 以上がこの学校で囁かれてる七不思議だ。


「ちょっと、絶対2番目と3番目怪談的なネタ無かっただけでしょ!」

「いや、2番目は6○らしいよ? 3番目は流石に3D○だけど」

「せめてWi○にしなさいよ」

「いや、私に言われても」


 そんなやり取りをしつつ最初の花子さんのトイレへ。

 電気をポチッとな。

 そして明るくなったトイレの最奥聖域にて儀式を始める。


 扉をノック。16ビートを刻みつつ―――


「へいへいそこの可愛い嬢ちゃん。俺と一緒に遊びましょい!!!!」

「え? それで合ってるの?」

「そう書かれてたよ?」


 そんな会話をしていた時だった。

 キィィイイと音がして、扉が開いた。


「へいへい! 私と遊ぼうぜぃ!」


 そんな声が聞こえて、トイレの中にはおかっぱ頭の花子さんがイケイケな格好で帽子のツバを逆に被ってラジオを片手に立っていた。

 まじパネェッス!!!


「え? 何その格好? 古くない? というか何その格好?」

「え? ふ、ふふふ、古い!?」

「希有!?」

「え?」


 やばい。希有が言ってはいけない事を言いやがった!!


「謝って! 希有、今すぐ!」


 私は震える花子さんを指さし希有に言うけど、希有は「え?え?」って言ってる!!

 これは間に合わない!!


「私、ふ、古いの!? 折角勉強したのに!!! うわぁーん!!」


 ついに花子さんが泣いてしまった!!


「やばい!! 確か七不思議によると―――」

「よ、よると?」

「花子さんは消えたように見せかけて透明になって最近の話題を探しに図書室に立てこもるらしくてそうすると七不思議が図書室の花子さんに変わってしまうんだYo! そうすると七不思議変更に伴って一日更新待たなくちゃ行けなくなるんだよ!?」

「……あ、そ」


 希有の白けた表情と何かが脇を駆け抜ける感触で察知した。

 ああ! 変わってしまった! 七不思議がぁ!!!


 そうして私達の七不思議巡りは終了した。

 くそ、くそう。


「まあ、また明日来れば良いんじゃない?」


 悔しくて肩を下ろす私に希有はまあまあって感じで話しかけてきた。元はと言えば―――


「学校、楽しかったか?」


 その声に顔を上げるとそこには『鬼』が立っていた。

 花子さん、今度会えたら透明になる方法教えてクレメンス。

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