お題:曇天、空気、体温計
空を覆う雲の上にある世界。天界。
そこでは昔、やばい議論が広がっていたというのは皆さん知っている事だろうが、その発端はご存じだろうか?
この事を知っている人は眉を顰める悲惨な内容まで知っているだろうが、ここは知らない者のために教えておこう。
事の発端はある地上から帰った天使が言った、体温計は水銀よりデジタルの方が便利だという話からだ。
最初は家族内での考えさせられる話程度であったが、その話が友達や親類に広がり議論が始まり白熱し、相反する者達の間では凄まじい空気感を生み出していったのだ。
そうして議論が世論となったある日、事件は起きた。
なんとデジタル派の者が水銀系派の者に襲われたのだ。
その現場を目撃した者の話では、襲われた天使は無残にも尻を出した状態で、ケツに水銀系の体温計を射されたまま放置されていたのだという。あと、体は熱く、示されていた水銀計の値も高かった。
その事件から数日。回復した天使にどの様に襲われたのか、犯人は誰なのか。天使長は問いかけるもその天使は心の傷が深かったらしく、顔を下げ手で覆い何も語らなかったという。
そこから天界は二分された。水銀派の者、デジタル派の者。そして、神様に仕える者という構図に。
その常態が長く続き、両陣営の関係は嵐の前の曇天の如し。そして時を同じくして各陣営ではオシャレなデザインの体温計が次々生み出されていった。相手陣営に対抗する形で。
その当時を神様は、呆れながらにこう振り返る。
「いやー、凄く面倒くさかった。天罰するぞっ☆って言っても聞く耳持たなかったからさぁ。それにあの子、熱出たけど自分の好きな体温計使いたくないからあの水銀の体温計使って直腸検査してただけなんだよね~」 と。
そのまま、拮抗した緊張感と不安な空気の天界。このまま二分されたままの世界になってしまうのかと思われていたが、状況が一変した。
そう、そんな事をしていたが為に本来の仕事をする天使が減り、地上では神の祝福の運び手が一気に少なくなり、信者が減少するといった事態が起きたのだ。
それにより天界は一時的に荒廃してしまう。
だが、見かねた魔界の者や妖怪達の手により、人間達が神にすがるように仕向け、なんとか神の祝福の威厳を取り戻した。
これにより天界は元の状態に戻り、天使達一同は今回のことを反省し、この様な議論や争いを起こさないようにしようという話し合いが行われ今に至るのだ。
今のところそんなくだらない議論が始まることは無く、この話は戒めも込めて生まれたての天使等に言い聞かせる童話のような立ち位置の話になっているのだ。
そしてこの出来事は天界の黒の歴史書「
そんな歴史を乗り越え、天界は今も平和に雲の上にあり、皆に神の祝福を届けながら、常に皆を見守っている。
「そういえばさ、地上でお菓子食べたんだけどさ、やっぱり美味しいお菓子はタケノコだよね?」
~Fin~
※『猛き棒』とは?
その昔、ある一体の天使がもたらした災悪とされる。
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