お題:ビー玉、絶叫、名前

 西暦二千えっくす年。

 世界各地で正体不明なビー玉が降り注いだ。

 ガラスで出来ているその丸いビー玉は地面に触れるやいなや音を立てて割れ、破片が散らばりその音に驚いた犬の吠えた声で寝ていた赤ん坊が泣き、育児ノイローゼとなっていた親たちは悲惨な絶叫を奏で、世界は混沌の渦に巻き込まれた。

 そのビー玉に当たり負傷した者は少なくなく、皆が天気予報を見て、ビー玉が降る日かどうかを確認していた。

 それに目を付けたのはかの有名な会社。アンブレラを作る会社である。


 その会社は対ビー玉専用アンブレラを開発。名前をビー玉避け傘と命名し販売すると、瞬く間に売れていった。


 その撥玉性は素晴らしくなんと当たったビー玉が傘を突き破る事は無く撥玉性のお陰でビー玉は綺麗に地面に落ちていくのだ。

 これには世界各国の大統領四つ目も絶賛の声をあげた。


 だが、悲劇はここから始まった。


 傘の撥玉性に目を付けた国により戦争が勃発。最初は小さなビー玉みたいな戦玉は瞬く間に敗れた袋から転がり出すビー玉の如く広がり、第一次ビー玉避け傘大戦という名前の戦争へと変わっていった。

 それは最早ビー玉をビー玉で転がす戦いといわれ、悲惨な事に犠牲者は1人にものぼったと言われている。


 当時を知る人々は口を揃え、「え?そんな事があったんですか?」と言っていた。

 それから約二年後、西暦二千○っくす年。傘は更なる性能を兼ね備えた。

 それは撥玉性の性能はそのままに傘の開閉式と折りたたみ式という画期的な構造で持ち運びが便利になったのだ。

 だが、またしてもそれは戦争の引き金となる。


 それは第二次ビー玉避け傘大戦と呼ばれた。

 その戦争は更に過激さを増し、子供達が傘を持ち、道ばたの雑草をまるで傘を剣であるかのように振るい刈っていったのだ。

 これにより約二三〇〇本もの雑草並びに細い木々、そして二本の傘が犠牲になるという悲惨な戦争となった。


 この事を今を生きる人一人に知っているかとアンケートをとった結果「知らない」との結果が出た。

 これには現教育委員会の方針がこの戦争を再発させようとしていると判断せざるおえないといえる。


 そうして第二次ビー玉避け傘大戦は幕をおろしていく。

 だが、空から降り注ぐビー玉に対してWBC世界ビー玉壊し隊が重い腰をあげ調査に乗り出すと意外な事が判明する。


 なんと当初空から降るビー玉には空間が空いている物だと思われていたのだが、ビー玉は空間どころか隙間無くガラスで出来ているというのだ。

 この発表に世界は騒然。料理を作り終えた主婦達がガスの火を止めるという事態にまで発展した。更には二つの家庭で料理の内容が被るという事態も起きているというくらい世界に衝撃を与えたのだ。


 これに関し専門家である近所のガラス精製所の職員は「いや、世界規模で見ればどっかの家庭は被るでしょ」とコメント。


 その発表から二ヶ月。世界を騒がせたビー玉の正体を探るためWBCはビー玉研究機関、BKKを設立。


 世界各国からその組織の設立に絶賛の声が上がるとBKKは声明を発表。


【まずはありさんの観察日記を作っていきたい】


 その声明に対し世界各国からは「蟻さんって言うの可愛い」と多数の声が上がったのは言うまでも無い。

 かくしてBKKは調査に乗り出し、蟻さんによって活動範囲や行動が違うというのを突き止め、更には蟻は蜂の仲間だというのを見つけたのだった。


 降り注ぐビー玉に関しては未だに原因は分かっていない。

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