19話見る目あるね!

☆★☆


あれからすぐ。


女性の店員さんがカウンター奥から注文した料理を運んできて、僕のテーブルに雑に、



「ご注文のオムライスとアイスコーヒーです!」


元気はつらつ、静かな店内とはお世辞にも似つかわしくない程の大きな声。


僕はあまりの威勢のよさに一瞬気後れして、


「ど、どうも」


と、ややどもってしまったが、それが悪かった。


一瞬、その店員さんと目が合った。


「「あ」」


店員さんと何故か声が重なった。


茶色の髪が肩までおろし、タンクトップ姿の彼女。

目もぱちりと大きく開いていて、肩と足の露出が激しい彼女。


反射的に目線を逸らして、何事も無かったかのように出されたオムライスを口に運んだ。


だけど、彼女はまだ僕の方をまじまじと視線を送ってきているのが分かる。


――そのままカウンター奥に消えるのではなく、あろうことか僕の向かい側の席にストンと座った彼女。


そして、両肘をテーブルについて、非難する様に言った。



「ねぇ君。未成年だよね? しかもこの辺の子じゃないでしょ? ダメだよ。こんな所にこんな時間にうろついちゃ!」


「……これ……何か隠し味でも入ってるんですか?」


話をそらすために、あえてそう言ったが、


「え!? 分かる? そうそれ! 私が入れたの。コーヒーミルク! ネットで見て試してみたんだけど……どう? 美味しい?」


「……え? ……ま、まぁ、コクがあって甘いなって……」


適当に言い放った言葉だけど、意外と的を得た質問だったらしい。

そのまま話を崩さないように彼女に合わせていると、彼女は上機嫌そうに、


「ふふーん。君、見る目あるね! 富岡さんもここにくるお客さんもみ~~んな貧乏舌でな~~~んにも言わないからちょっと腹が立ってたんだよね!」


「そ、そうなんですか……」


どうかこのまま話が有耶無耶になればいいのにな、と思ったが、ここで彼女は夢から覚めた。


自分に言い聞かせるように、首を横に大きく振って、


「ってちが―――う! 話を逸らすな!! 君はみ・せ・い・ね・ん! もー! 何で富岡さんもこの子、店に入れたんですか?」


僕らのやりとりなど興味なさげに背中を向けて、あいかわらず煙草を一人スパスパ吸っている「富岡」さんに困ったように話しかけた。


富岡さんは彼女に言われると、「静かにせぇ」と一言呟くと、


「ふんッ。金を払う奴は皆、客じゃい。その小僧の払う金でお前さんの給料もでとるんじゃろうが」


「……う、まあそれはそうですけどぉ……。君、名前は?」


たしなめられた?彼女は、諦めがついたのか、もう一度僕の方に向き直って、名前を聞いてきた。


「灰崎。です」


「そう、灰崎君。君。家は?」


「二、三駅離れた所にあります」


なんでそんなこと聞いて来るんだ?と思っていると、彼女は続けて嫌な事を言った。


「そう。じゃあ、それ食べ終わったら私が家まで送り届けてあげる」


「え」


それは困る。

でも、


「何がえ、よ。こんな時間にこんな所に居て親御さん心配してるわ」

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