第15話お話ししよ


駅までの道のり。


やはりまだ早朝なこともあって高城の家を出た時は、予想していた通り人が少なく、車の往来もトラックやタクシーが偶に通る程度だった。


ただ、それも駅に近づくにつれ段々と増えてきた。


数人の制服姿の高校生グループがのろのろと歩く僕の隣を駆け足気味に抜き去っていった。


(どこの高校かな)


半分意識が覚醒し、半分が眠っている――半覚醒の状態で僕はふとそんなことを思った時。


ドンと、最後列で走っていた人に、僕の肩がぶつかり、よろめいた。


「――ッ」


「あっ! ごめんなさい! って、ん?」


ぶつかった瞬間、止まって僕の方に手を合わせて来て謝ってきたが、その途中に何かに気がついたように言葉を止めた。


「もしかして――巧君?」


「……黒川さん」


「えーやだー。巧君じゃん! 何でこんな所にいるの?」


「それは……」


知り合いだった。


頭がボォーとしてあまり回っていない状態だったので、ボソボソと返事を返してしまったが、そんな事は黒川さんにはあまり気にならないのか、テンションが高い。


「晴海ぃ! どーしたのぉぉ! 早く来ないと電車行っちゃうよぉ!」


 中々、改札口を潜ってこない『黒川』さんを急かすように、グループ仲間の一人が、構内に響き渡る高い声で、呼びかけてきた。


正直、今は一人になりたい気分だったので、ホッとしていたが、


「先行っててぇ! すぐ行くからぁ!」


「えー!? 分かったけど、早く来なよー!」


黒川さんは、僕の方を悪だくみするかのようにニシシと笑いながら、グループメンバーに先に行くように促した。



☆★☆


「お話しよ」


――黒川さんに手を引かれて、僕は通行人の邪魔にならないよう改札口前柱に居たが、何を話せばいいのだろうか。


頭が動かなくて、何も浮かばない。


黒川さんも、自分から誘ったのに、僕何か言うのを期待しているのか、口をキュッと窄めて、待ちの状態に入っている。


ほとんど停止した脳をフルに稼働させて、捻りだしたのは、ありきたりの事。


「黒川さん。……東雲ヶ丘に通っているんですね」


「! そうだよ。私、東雲に通ってるんだよ。言わなかった?」


「初耳です」


黒川さんが着ていた制服は知っていた。


清楚な雰囲気の白いセーラーに、大きな桜柄のリボンが印象的な制服。


「良いでしょ、この制服?」


そう言って、胸につけられている東雲ヶ丘の校章のリボンを僕に見せてきた。


「…えぇ」


「心が籠ってなーい! 何か、感想とかないの?」


「特に…何も…」


「サイテー。それって一番言ったらダメだよ? 巧君、彼女いないでしょ!」

 

「居ないですよ。そんなの」


「だろうねー」


……馬鹿にされたような気がしたのは気のせいだろうか。













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