第1章
1.ギルドで出会った大剣使い。
「さて、今日は何をしようか!」
――翌日。
ギルドでベネットと待ち合わせをしてる最中、伸びをしながらボクはそう口にした。とりあえず、ボクの故郷である街――アルカに向かうには、それなりの路銀が必要になる。
生活費も考えると、それなりに長い期間を冒険者として過ごすことになりそうだった。
「まぁ、そんなに急ぐ必要もないし。ゆっくりと頑張れば良いか」
しかし、それを悲観することはない。
学園時代の生活に比べれば、自由に過ごせる今は理想だった。
なんだったら、地元で跡を継ぐまではここで頑張っても良いかもしれない。ボクはそんなことを考えながら、ふと依頼――クエストの貼り出されている掲示板を見た。すると、
「ん、あの人どうしたんだろう?」
仏頂面で掲示板を睨みつける、一人の剣士が立っていた。
背には大剣。筋骨隆々とした巨躯。長い黒髪を後ろで束ねた強面の彼は、顎に手を当てながら必死に考え込んでいる。
何か訳ありだろうか……?
「あの、どうされたんですか?」
「……!」
そう思いつつ声をかけると、男性は驚いたように息を呑んだ。
しかしすぐに眉間に皺を寄せると、鋭い眼差しでボクを睨みつける。
「いいや、気にするな」
そして短くそう言った。
だけど不思議だったのは、なぜか視線を泳がせていること。若干の挙動不審にボクはさらに首を傾げて、なんとなく彼の見ていた物へと目をやった。
すると、そこにあったのは――。
「……パーティーメンバー募集?」
新しい仲間を募る、依頼書とは異なる用紙だった。
パーティーを組むにはいくつかの手順があり、ボクとベネットのように、偶発的に出会う方がまず少ない。むしろこういった募集をかけて、募るのが普通だ。
そして彼はいま、これを見ていた。
ということは――。
「もしかして、仲間を探しているんですか?」
「う、うむ……! 実はそうなのだ!」
訊いてみると、男性は腕を組んで頷いた。
「先日、とあるパーティーを抜けることになってな。生活費を工面する以上、ダンジョンへは潜らなければならないのだが、一人では……」
続けてそう語る。
その話を聞いて、少し考えた。
ボクのパーティーに足りないのは、前衛専門の人材だ。自分は魔法が主な武器だし、ベネットは身軽で陽動には向くが、一撃の力は乏しかった。
だったら、これも一つの縁なのかもしれない。
「それなら、ボクのパーティーに入りませんか?」
「なに……?」
こちらが提案すると、男性は驚いたようにこちらを見る。
そして、しばしの間を置いてからこう言うのだった。
「あっははははははははははは! 少年よ、キミは良い拾い物をしたな!」
大仰に腕を広げながら。
「このガンヅ・リーシャスが、力を貸してやろうではないか!!」――と。
――――
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