破滅...
八月三十一日、午後九時十五分。
此の夜、街が爆発した。
錆びた標識。返り血がこびり付いた交差点。
――
僕は
僕は爆風に
――良く晴れた、華火大会の夜。
中学最後の夏。
僕と僕の友人は、彼女の一人だってつくらず、男二人で
『中学最後』と大人は口を
真っ赫な林檎飴を買った。チョコバナナを食べた。
たった一人の友人と過ごす夏休みは最高に楽しくて、死んでもいいと思った。嗚呼、でも、まさか、本当に死んでしまうとは思わなかった。
ごめんなさい。僕は君に謝罪すべきだ。
僕はね、実は、爆弾魔の顔を見ているんだ。その事を伝えなかったから、君を死なせてしまった。伝えれば良かった。
紅、紅、蒼、橙、翡翠。
打ち上がる華火の音。市民の悲鳴。白煙。
今逃げたらまだ間に合うかもしれない、でも逃げなかった。何故なら、友人と共に死ぬなら本望だと考えていたから。それで構わなかった。
「
「司君」やっと振り向いた、雑音が大きすぎる。
「まだ、僕の傍に居てくれますか。」
「離れていても、近くに居るよ。だから――」
後に続く言葉は聞き取れなかったけれど、深く追求するのは止めた。必要無いと判断したからだ。
僕は笑った。顔をくしゃくしゃに歪めて、泣きながら笑った。
司も笑った。いつの間にか水滴が溢れていた。
――ごめん、やっぱり判らない。
艶々しく揺れる司の茶髪。顔が華火の白光に包まれる。
僕は気づいてしまった。司のすぐ側に岩塊が迫っていることに。
僕は反射的に手を伸ばした。無駄だった。
岩を避けきれなかった司は大きくのけ反り、後方に跳ねた。
躰が仰向けに宙に浮き、地面に頭部を強打した。
救急も消防も話し中。繋がらない。
足の先から毛が逆立つのを感じた。名前を呼ぶことしか出来なかった。
混沌としている意識の
唐突。
一瞬の、出来事。
美しい。
二度と意識が戻らんことを。二人に永遠の幸福を。
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