エピローグ

「ということがあったのよ」

 助手席に乗る妹・見事みごとに話し掛けるアリサ。

 アリサの運転するシビック・タイプRは調布市内を走っていた。天候は少し強めの雨。母・雷鳴から見事を学校まで迎えに行くように頼まれたのだ。

 赤信号で一旦止まるシビック。


 一方、ジトっとした目で姉を見つめる見事。

「何?どうしたの?」

「お姉ちゃん、何か悩み事とかあるの?」

 怪訝そうな表情の見事。

「えっ?何で?」

 妹からの思わぬ問いかけにキョトンとするアリサ。

「だって、この前もそんな感じの変な作り話を聞いたから・・・」

 見事は姉を案じたような表情で話す。


「ちょっと!私、気を病んでる人扱いなの?私の話を信じてないの?」

 妹の反応にショックを受けるアリサ。

「だって、異世界へ行ったとか言うし、それって深夜アニメとかの設定?」

「違うわよ!本当に競輪の神様はいるのよ?」

「ネッシーとかみたいに?」

「ネッシーじゃないわよ!競輪の神様!け・い・り・ん・の・か・み・さ・ま!」

 必死に訴えかける姉とは対照的に、見事は不安げな様子。


「わかったわ。そういうことにしておくわ。でも、何か悩みがあるなら、私やママに相談してね?」

「もう、本当の話なんだから!見事ちゃんなんて知らない!」

 プイっとそっぽを向くアリサ。

「お姉ちゃん、ちゃんと前を見て!」

「えっ?ああ、ゴメン・・・」

 結局、今回も競輪の神様の話を信じてもらえそうにない。けど、やっぱり競輪GPの熱狂は異世界でも変わらなかった。それは自分だけが知っている秘密だ。

 信号が青になり、シビックは再び発進した。


        「競輪の神様と非実在の競輪予想師 パート3」 完

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