第3話

「おはよお、お兄さん」

「うるせえよガキは黙れ」

「お、お兄さん?」

何かがおかしい、子供ながらそう感じた。いつもなら笑っておはようと返してくれた。間違ってもガキは黙れなんて言わない人だ。家の中も空気が違った。

まるで、水の中にいるみたいだった。

「刈安、どこにいくの、面倒だから家にいなさい」

「お母さん、にいにいに、これ見せようと思って」

そう言って見せた。ラベンダーの絵だ。いつもなら褒めてくれた。

でも、この日は『いつもなら』は通じない、

「絵を描いていたのね、そんなものやめなさい」

「にいにいに見せるだけ」

「お前の絵は汚い、調子にのるな、にいにいの目も汚しちゃうからこうしないと」

母親はスケッチブックを家の前の池に突っ込んだ。

「もう、、、、、、やめて」

こんな家にいられない、ここは安全ではない、そうわかって家を出た。

なぜ兄と母親が変わってしまったのか、分かるには時間が必要以上にかかった。

ココロドリだ、悪魔と呼ぶ人もいる。

僕は、みんなは、ココロドリという謎の生き物に全て奪われた。


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