第46話

 (※アーノルド視点)


 もし、私に嘘をついていたのなら、絶対にナターシャを許すことはできない。


 私は彼女が嘘をついているか確かめるため、行動に移る決心をした。

 まず、彼女が眠りにつくのを待っていた。

 そして、夜になり、彼女は眠りについた。

 私はそれを確かめた。


 そして、針を一本持って、彼女の側に忍び寄った。


 手に持っているこの針を、思いっきり彼女に突き刺してやりたい衝動に駆られた。

 しかし、まだ彼女が嘘をついていると確定したわけではない。

 まずは、それを確かめるのが優先だ。

 私は彼女の手を取った。


 そして、彼女の人差し指に、針を刺した。


 刺したといっても、薄皮一枚だけだ。

 まっすぐ突き刺したわけではなく、横から薄皮をめくるように刺した。

 出血はない。

 しかし、少しだけ彼女の指の皮がめくれていた。


 血が出ていなくても、皮はめくれている。

 かなり小さいが、これは傷だ。

 つまり、万能薬で治せる。


 彼女は今は寝ているから、万能薬を飲ませることはできない。

 だから私は、翌日になって彼女が起きるのを待った。

 待ち遠しくて、眠れなかった。

 なかなか眠れなかったわけではなく、全然眠れなかった。

 そしてやっと、朝になった。


 寝不足で気分が悪いが、頭は冴え渡っている。


 私はナターシャの朝食を用意して、その中に万能薬を仕込んだ。

 それをテーブルに置き、ナターシャを席に座らせた。

 私も彼女の向かい側に座る。


 私は、彼女の手を取った。

 

 そして、その指先を見つめた。

 昨日の小さな傷は、残ったままだ。

 私はそれを確かめると、思わず笑顔になっていた。


「どうしたの、アーノルド」


「なんとなく、君の手を握って見たかったんだ」


「何それ、変なの。手なんていつでも握っていいわよ」


 彼女は笑っていた。

 そしてついに、朝食に手を出した。

 彼女は、万能薬入りの料理を、口へ運んだ。

 私はその様子を、じっと見ていた。


 万能薬が効かないと言っている彼女の言葉が本当なら、彼女の指の傷はそのままだ。

 しかし、彼女の言葉が嘘なら、指の傷は万能薬の効果によって消える。

 

 私は、じっと彼女を見つめていた。

 彼女が咀嚼して、料理を飲み込んだ。

 万能薬を摂取した。


 はたして、その結果は……。

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