第39話

 (※アーノルド視点)


 私はナターシャに、なぜそんなに汗をかいているのか尋ねた。

 そして、彼女からの返答は……。


「これはね、とても怖い夢を見たせいよ。それでちょうど今、びっくりして目が覚めたところなの」


「そうだったのか……、可哀想に……」


 こんなに汗をかくなんて、よほど怖い夢を見たのだろう。

 私は彼女の返答に、納得した。

 そして、それから二日後、意外な人物がこの屋敷に訪ねてきた。


「あの、私、憲兵の者です。少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


 訪ねてきたのは、憲兵だった。

 私は驚いたが、彼を屋敷の中に通した。


「先日あった、強盗事件のことについて、お話を伺いに来ました」


「はぁ、強盗事件ですか……、この近くであったんですか?」


 強盗事件といわれても、いったい、私に何を聞くのだろう。


「えっと……、あなたは、強盗事件のことをご存じないのですか?」


 憲兵は、不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「ええ……、たった今、知ったばかりですが……」


「強盗事件があったのは、この屋敷ですよ」


「え!?」


 私は、突然憲兵から聞かされた話に驚いた。

 なんと、先日、私たちの屋敷に強盗が入ってきていたそうだ。

 すでに、その強盗は捕まっているという。


「えっと、この屋敷に、女性の方は住んでいませんか?」


「ええ、いますけど、どうかしたんですか?」


「その方もこちらに呼んで頂きたいのです。事情を伺いたくて」


「わかりました。ただ、彼女は身体が不自由なので、彼女の部屋に来ていただけませんか?」


「……わかりました」


 私は少しの間、憲兵に待ってもらい、ナターシャの部屋に行って事情を話した。

 彼女は驚いた表情をしていたが、憲兵を彼女の部屋に通すことになった。


「あの、先日、この屋敷に、強盗が来ませんでしたか?」


 憲兵がナターシャに質問した。


「いえ、来ていませんけど」


 ナターシャは不思議そうな表情で答えた。


「そうですか……、この屋敷に、高価な壺はありませんか?」


「ええ、ありますよ。ねえ、アーノルド、一階にある壺って、高価なものだったわよね?」


「ああ、そうだな」


 確かに、そんな壺が一階にあった。


「では、その場所に案内してもらえませんか?」


 憲兵が私の方を向いて言った。


「ええ、いいですよ」


 私は彼を、壺のところまで案内することにした。

 ナターシャの部屋を出て、廊下を歩き階段を下りた。

 そして、壺があるところまで移動した。

 しかし、私はそこで驚いた。


「そんな……、壺がない! なくなっている!」


 どういうことだ……、どうして壺がなくなっているんだ……。


「先日、この屋敷に強盗が入ったと言ったでしょう? その犯人が盗んだのが、ここにあった壺なんですよ」


 憲兵のその言葉に、私は驚いていた。

 この屋敷に強盗が入ったというのは、どうやら確からしい。

 私たちはまた、ナターシャの部屋に戻った。

 そして、壺がなくなっていたことを彼女に話すと、彼女も驚いている様子だった。


 ただでさえ、強盗がこの屋敷に入っていたことに驚いていたのに、さらに憲兵が、驚くような話をし始めた。

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