第25話
(※ナターシャ視点)
ふぅ……、アーノルドも、納得してくれたようね。
なんとか、誤魔化すことができたわ。
いきなりアーノルドが部屋に入ってきた時は焦った。
彼が屋敷に戻ってきた気配を感じたら、五巻を戻して四巻を手元に置いておこうと思っていたけれど、本を読むのに夢中で、彼が帰ってきたことに気付かなかった。
彼が部屋に現れた時はかなり焦ったけど、私は平静にしていた。
私が不思議そうに彼のことを見ていると、彼も自分が勘違いしていたと思い込んでくれた。
本当に危なかった。
些細なことがきっかけで、私に万能薬が効いているということがバレてしまう。
気を引き締めないといけない。
「さて、明日のことだけど……」
私たちは、明日のデートでいく場所を決めた。
そして、翌日になり、私たちは町を歩いていた。
本当は今なら、アーノルドと並んで歩くことができる。
しかし、そんなことをするわけにはいかない。
確かに、それは夢見てきたことだけど、そんなことをすれば、私が病弱でなくなったとバレてしまう。
優先事項は、私が病弱だとバレないようにすることだ。
そのためなら、憧れていたこともあきらめることができる。
それに、アーノルドに嘘をつくことだってできる。
すべては、私たちの幸せな生活を守るため。
「応援しています、頑張ってください」
「新聞の記事を見ました。きっと、何か希望があるはずです。くじけないでください」
私は、たくさんの町の人たちに声を掛けられた。
今や私は、有名人になっている。
万能薬が効かなかった人として、世間から同情されている。
励ましの言葉をかけられたり、時には援助のようなこともしてくれる。
私たちは、予定してたいたカフェに着いた。
そこでサンドイッチを頼むと……。
「あ、私、あなたのこと、いつも応援しているんです。お店のサービスということで、料金は結構ですよ」
店員は笑顔で言った。
最近よく、こういうことがある。
まあ、本当は既に体は完治しているのだけど、当然そんなことは言えない。
周りのみんなも優しくしてくれるし、得なことばかりだ。
体が完治していることは、絶対に誰にもバレないようにしないといけない。
もしばれたら、私は終わりだ。
でも、正直言って、バレる心配なんてない。
検査は拒否できるし、私がヘマさえしなければ、体が完治していることが証明されることはない。
そう思っていた。
しかし、検査以外で、私の体が完治しているか確かめる方法があることを、この時の私はまだ知らなかったのだった……。
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