第23話
(※ナターシャ視点)
アーノルドは、少し散歩に出かけてくると言って、部屋を出て行った。
「ふぅ……、危なかったわ……」
私は大きくため息をついた。
何とか誤魔化すことができた。
私としたことが、うっかりとしていた。
いつもは読みたい本があれば、私がアーノルドに頼んで、彼が本棚から取ってくれていた。
そして、今日はずっと三巻を読んでいた。
今までなら、こんなに長時間本を読んでいたら疲れてしまっていたけど、万能薬を飲んで体が元通りになったおかげで、長時間本を読むことも苦ではなくなっていた。
そして、ちょうどアーノルドが出かけている間に私は、三巻を読み終えた。
いつもなら彼に頼んで第四巻を取ってもらうけど、彼は出掛けていなかった。
そこで私は、自分で第四巻を本棚から取った。
普通に続きが気になっていたから、何も気にすることなく、第四巻を取っていた。
しかし、さっきアーノルドに指摘されて気付いた。
私が第四巻を読んでいたら、おかしいのだ。
彼に本を取ってもらわないと、私は次の巻が読めないのだから。
それなのに、三巻を読んでいたはずの私は四巻を持っていたら、彼が不思議に思うのも無理はない。
私の些細な行動が、彼に疑いを持たせるきっかけになる可能性があることに、ようやく気付いた。
今後は、気をつけないといけない。
そして数分後、私はある問題に直面していた。
第四巻を読み終わったのだ。
アーノルドは、まだ散歩から帰ってこない。
彼が帰ってくるまで、本棚にある第五巻はお預けになってしまう。
気になるなぁ……。
この後どうなるんだろう……。
主人公は無事なの?
あの伏線は、次巻で回収されるの?
だめだわ、続きが気になって仕方がない。
私は仕方なく、四巻を本棚に戻し、第五巻を手に取った。
べつに、問題はない。
私もそこまで馬鹿ではない。
アーノルドが散歩から戻ってくる前に、五巻を戻して、四巻を持っていればいいだけの話よ。
そうすれば、彼に疑われる心配もないわ。
そう思っていたのに……。
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