5話:放課後の事実と友人との別れ
無駄な時間というのは、無駄だとわかっていても過ぎてしまう。
一方で、必要だと思う時間や、楽しい時間というのがあっというのは
あっという間に過ぎてしまうと感じるのだ。
人には、等しく時間が与えられており
それは誰に対しても、同様に過ぎ去っていく
しかし、一度振り返って見返したとき
同じ1日を比べても、その充実感とか、やり切った感はその人によって
否、同じ人であっても
日によって、全くもって異なっているものだ。
今、それをはっきりと感じていた。
今は放課後で、考えればあのラブレターが顔を見せ
頭の中には、あのラブレターの存在が現れ
まともに、授業を受けれていた気がしない。
今日の授業についてを、はじめに聞かれても
恐らく答えることができないくらいに
今日の授業は一切、集中ができていなかったように思う。
というのも、この後の展開に妄想を膨らませたりとか
万が一に対して、どう応じるのかとか
そのような、実際に起こってみないとどうにもできないようなことを
ひたすらに考えていたということは、はっきり覚えているのだ。
人は、それが無駄と分かっていても
分かりつつ、やってしまってしまう生き物で。
真面目に、集中しようとしても
すぐに、軌道がそれて
結果として、集中できない状態にあった。
いっそのこと真面目に、このラブレターについて考えるかなんて
思考の切り替えもできず
結果として、どっちつかずな1日になってしまい
しかし、後悔がないわけではなく
勉強すればよかっただとか
そんなこと考えてないで、真面目に受けていればとか
あとで、香に教えてもらわないと
という気持ちが、芽生えて無くならない
しかし、今はそれどころではない。
既にタイムリミットは迫っている
心臓の音が少しずつ大きくなっているように感じる
彼女、もしくは彼らが
どのタイミングで、屋上にくるのかが読めない。
しかし、これ全てが嘘の可能性を未だに払拭はできない
先生に先回りさせている作戦や
しかし、俺が悩んでいることによって
先に帰っているかもしれないなどと考えると
どのタイミングで、行くのが適切か分からない。
そんな風に悩んでいると
「おう、雄太
お前今から帰るだろ~
俺部活だからー」
「じゃーなー」と、いつものように
はじめは、部活に行こうとする。
彼は、今運動部に所属していて
ほとんど、放課後は練習がある。
昔は、朝練があったらしいが
先生の都合などで、なくなり
しかし、朝早く来る習慣が抜けず
朝は早くから学校にいる。
「うい~」
そんな風に、適当に返事を返す毎度のことで
こういう関係が、友達としてベストだと俺は考えている
そして、学校用のカバンと、もう一つ大きなカバンを背負い
はじめは教室から出ていった。
『あ、はじめ先輩
今日もよろしくお願いします』
『おう、今日も頑張ろうな!』
はじめの出ていった方向の廊下から
後輩とのやり取りが聞こえる。
確か名前は、三井だったか
はじめの身長が低いのに対し
後輩である三井の身長は高く
見た時に、どっちが先輩か分からないなんてことがあった気がする
三井は、やる気があるのか
健気なのか、ほとんどの場合はじめを迎えに来ている
恐らく、両方なのだろう。
そして、もう一人
「あ、私も行くわー雄太、また明日ねー」
手を振りながら駆け足で
はじめの後に、続くように、香も出ていく
香も、運動部に所属していて
何部かは、覚えていない。
「おう、また明日~」
そんな感じで、二人との別れを済ませると
ここに、友人はいなくなる。
しかし、問題は何も解決していない。
むしろ、ここからが問題なのだが
どうするべきだろうか
しかし、分かっている
もう考えていても、仕方はないのだろうと
ひとまず、友人と別れの挨拶をしたが
どうするかという問題は、解決していない。
帰りの挨拶が終わってから
時間は、刻一刻と過ぎている。
「よし、そろそろ行くか」
多分だが、もう来ているか
もしくは、居ない場合帰った可能性もある。
もし、そうじゃなければ、少し待って
俺も、帰ることにしよう。
どこまでが悪戯で、どこからが本当か分からない。
時刻も書かれていなければ
場所も、開いているか不確定な屋上
未だに、良くはわかっていないが
これに悩まされているよりも
気持ちとしては、早めに済ませて家に帰りたいという気持ちが現れだしている。
長々と、学校に居たくないタイプの俺にとって
この時間は非常に無駄で、本来であれば、今頃電車に揺られているところ
なんとなく、ペースを乱された気がして
少し、イラっとしてしまいそうになるが
それは、それでおかしいことに気づき
笑ってしまった。
よし、行こう
どうなっても、これでこの話はおしまいなのだから
決着を付けようと、決意して教室を出た。
そんな俺を見る視線は無かったように思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます