2話:葛藤の末?

 一般的に、勝ち組をどう定義されるだろうか。


 それは単純に見えて、実は非常に難しい問題だと思う。結局のところ、それは主観でしかないからだ。


 例えば自分は負け組とか言っている人であっても、他人から見れば勝ち組に見えていたり。俺勝ち組と言っている人を見ていて、勝ち組なのかと首を傾げることがあると思う。恐らくあると思う。


 だからこそその人にとっての勝ち組やら負け組やらは、必ずと言っていいほど異なっているのだ。俺からすればイケメンは勝ち組だし、運動できる奴も、頑張る奴も勝ち組だった。


 そして、彼女がいる奴も例外ではない。


 そんな風に勝ち組とか負け組とかを考えている間は、恐らく負けの領域から出れないのだとは分かっている。


 結局、負けとか勝ちとか言っている間は、誰かに対して羨ましい感情とか妬ましい感情を抱えているし、そのうえで勝ち負けを己の中で定義して、敢えてそこで自身を負けだと決めつけるほど、おかしなことは無いのではないのだろうか。


 そしてそれは恐らく承認欲求の一環だろうが、それを恥じらうことなく自慢できることのように、ぺらぺらと話すことは流石に恥ずかしいと思い、はっきりと大声で言ったことは無いが、俺は個人的に自分が負け側にいる人間だと認識していた。


 しかし、それも今日で終わる予感がはっきりと今している。


 その原因が、このラブレターと思われるもの(推察)。これから中身を見て正解を出すのだが、正直言って、もうそれ以外の線はひとまず考えないことにした。


 朝の時間も徐々に過ぎてゆき、皆が登校をしている中、トイレの個室に籠り、そして手紙の封をはがし始めた。


[ピリッ ピリッ]と、丁寧にどうにかして破れないようにそっと

 少し時間がかかってしまうが、こうやって丁寧にやるのは


 人間の嵯峨なのかもしれない


 本来であれば、早く中を見たいのだが

 それでも、速度よりも丁寧さが必要だった。


 そして、その蓋が開く。


 中には、1枚の便せんが折りたたまれて入っていた。

 特に特徴的な装飾はなく


 ただの、便せんが1枚

 しかし、丁寧に入れられているのを見ると

 性格がよく表れているのかもしれない。


 その便せんを見て、より興奮してきたのは言うまでもないが

 ドッキリにしては、結構手が込んでいると思う


 わざわざ、ここまで丁寧にする必要があるだろうか。


 まぁ、重要なのは便せんの中身

 そのため、丁寧に開く。


 すると、きれいな丸文字が目に入ってきた。


 ――――――――


 -三田雄大君へ-


 今日の放課後、西校舎屋上で待ってます


 -水田花-


 ――――――――


 中身は、思いのほかシンプルなもので

 少し驚いたが、必要な情報がすべて入っていた。


 この学校の西校舎屋上というのは、今あるトイレや教室のある

 校舎と同じで、そこから屋上へ繋がっている階段は一つしかない。


 しかし、屋上は解放されていなかった気がする。


 近年の学校において、自殺防止などの目的から

 校舎の屋上の開放をしていない学校は多い


 そして、このの学校もまた

 そのような観点からか、もしくは悪戯防止のためか

 屋上は確か開放していなかった


 しかし、それはあくまで聞いたことのある程度の情報に過ぎないので

 分からないが、解放されているのだろうか?


 そして、次に水田花という名前が書かれていた。


 これによって、恐らく告白以外の可能性や悪戯、ドッキリの可能性が再浮上する


 まさか、手は込んでいたけれど

 一方で、最後の最後でポカをしたらしい。


 水田花は、本学年でも有名な人の一人であり

 そして、学校全体にも名前が知れ渡っているという、ものすごい人だ。


 この第一学年には、百合の花園と呼ばれている人たちがいて

 その一人でもあった。


 百合の花園という、なんとも男子の考えた理想の桃源郷は

 この学園の、高嶺の花達が戯れているところからきているらしく。


 他に、氷の御堂みどう

   日の若葉などなどがいるらしい。


 よくわからないが、そういうのがある。


 ちなみに、氷やら日やらはイメージからきているらしく。


 氷の御堂も、溶かすのが水田花という存在である。


 ちなみに、花の水田というそのままのキャッチコピーがついている。


 そんな百合の花園の面々というのは

 男子からモテたり、はたまた女子からもモテる人もいるが

 お断りごめんというのは、通例で


 誰とも付き合わないのに、好かれている

 付き合わないから好かれている。


 みたいな、イメージがある


 そんな中でもずば抜けているのが

 彼女、水田花であった。


 学校の最初のテスト、入試においてトップの成績を飾っていて

 それにより、校長の前で、文章を読んでいたのは覚えている


 他にも、元々女子高に居たのに

 何故か、共学のこの学校に来たことや


 運動神経が良いことなど、様々な話が広がっている


 まぁ、向こうからしたら、恐らく迷惑なんだろうと思う


 そのイメージのせいで、ある意味レッテルなどが張られ

 付き合いたい人と、付き合えなかったりとか、百合を崩さないために


 そんなことを、考える必要もありそうだし。


 女子高から来たことや、完璧な面が女子に好かれない原因になったりもしている。


 それから、もう一つの疑惑があり

 それが、最も、噂の中では黒い。


 それが、ということである。


 もし、彼女のような人がいれば

 入試でも目立っていただろうが、誰もその姿を知らない


 イメージチェンジで来たにしては、それもまた可笑しい話ではないか

 などと、噂の種があるのだ。


 そんな彼女は、自身の噂について、どこまで耳に入れているのか

 そして、そんな噂をしている人たちが彼女にどこまで聴かれているのかは

 定かではないが


 そんな、色々な面で完璧だったりとか理想があったりとかしている


 水田花本人が、わざわざ手紙をくれるだろうか


 恐らくない。


 天地がひっくり返って

 微塵の可能性であり得るが


 何か、裏に他の人がいたり

 もしくは、そもそもが男子によって作られたドッキリの可能性もある。


 しかし、だからと言って行かないという選択肢はない。


 もしここで、悪戯をしている男子がやっているとしても

 水田花 応じない男、三田雄大として名前を広げかねない


 そうなった場合、向こうに対しても不名誉だろう。


 まさか、ただの陰キャが彼女の誘いに応じず

 どの立場で、生きてるんだということになる。


 それは、避けなくてはいけない。


 そして、もう一つ下心があるとすれば


 彼女と、お話がしたい

 これは、ほぼほぼ本音で


 感覚的には、アイドルに近い

 普段会えないアイドル(人気)と目の前でお話しできる機会があれば

 少ししてみたい、というか興味があるだろ?


 そんな感じの感覚だった。


 総合して、この約束事には、応じるという結論が出たのだが

 未だに、頭の中で悩みは払しょくできない。


 質の悪い悪戯の可能性だとか、もしかしたら付き合えるかもなんていう

 そんな風な妄想が、頭の中で渦巻きつつも


 スマートフォンで時間を確認する。



 どうやら、そろそろ教室に向かった方がよさそうだ。



 そうして、しばらく下ろしていた腰を上げた。


 どうするかは、もう少し考えるかもしれないが

 とりあえず、教室に行かなくてはならないのは事実だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る