第一章:始まり

1話:1枚の手紙

 告白される人というのは告白する人に対して少ない。


 それは、告白される分母がいて告白する分子がいるからに他ならない。

 そして、一方で多数の人から恋心を抱かれる人も当然いる。


 俺はそんなイベントとは無関係で、事実として同じような人は多いと思う。


 言ってみれば俺は、の人ではないのだ。

 小中高大の学校という箱の中でモテる人は決まってくる。


 少なくともだったり、気質のある人よりは、だったりだったりの方がモテるとは思うし当然需要は高い。


 しかし、今はオタクというのが


 それは、恐らく時代と共に少しずつ変わってきた事実で、しかし実際は、昔からだろうと思う。


 少し昔を見たら強い人がモテたりだとか、お金持ちがモテたりだとか。その時代によってモテる人というのは少しずつ変化してきているのは事実だし、その背景には、人の営みと需要の変化があって、だから対象の変化はなのだと思う。


 昔と今を比べると、今はになった。

 稼ぐようになって...というよりは稼げるようになって


 結果としてお金持ちの価値は昔よりも低くなる。その一方で、家庭的な男子が魅力になりつつある。


 そんなことは、少しずつ変わりつつ現代にも影響を与えている。しかし、こと学生においてはその事実は異なる。もっと、単純な所にモテるだとかモテないとかの問題が出てきている。


 小学校の時は足が速い人がモテた。中学校の時は運動できて賢い人がモテただろうし、高校生も同様と言える。


 大学になっても大きくは変わらないが、その中にコミュニケーション能力や、求められるようになったりする。


 そして、そのためにもしくは、そこで《努力をする人》》、もしくは、結果として


 それは必然的なことであって、


 しかし、その上で俺はを怠っていた。だから、その人たちとは違う道を歩んでいるということを、納得しつつも認めることはできないから、今こうして愚痴を言うことになっている。


 感覚的に言えば、皆同じような意見ではないだろうか、しかしながら人生の歯車はどのように動き出すのか分からないらしく、運命は等しく人々にチャンスをくれるらしい。


 それをこのハートのシールの付いた、手紙の袋が証明している。


 その昔、福沢諭吉という人は

「天の上に人を造らず天の下に人を造らず」と言ったらしいけど、まさに、その通りだと今なら思う。


 今ここで、福沢諭吉に感謝を...とかしてる場合じゃなくて、今まさに目の前に俺の何かを変えるものがあるのは確かで、もしかしたら、これで大きく人生が変わってしまうかもしれない。


 そんな期待の高いイベントがとある学校の朝に行われていた。


 この学校の下駄箱というのはロッカーで外から内側は見えない。


 それ故に学年で人気の男子とか女子とかの基に、ラブレターやらチョコレートが入ってくることは事実として認知していた。


 俺の友人二人も、その経験者で実際に、困っちゃうな~とか言って、別に自慢しているわけでもなく、単純に困っている姿を見たことがあった。


 それを見た時、俺はどんな反応をすればいいのか非常に困っていて、はっきり覚えているのだ。


 自分が困らない、しかも本来恨むべきことを友人であるがゆえに恨みにくい。そんな心境で眺めていたが、実際に自分に来てみると困るどころか高揚感が止まらなくなっているのを感じる。


 心臓のポンプは急激に働きだして、なんだか宝くじにでも当たったような、もしくは悪いことをしてるんじゃないかというくらいに、


 まぁしかし、そんなことを言っていても色々拭えない可能性が未だにあった。


 例えば誰かと間違えた。もしくは俺を通してその友人二人に渡してほしいだとか、そういうことは普通にあり得ることで特に後半に至っては、時々いや流石にロッカー伝いではないけど、ある分にはあったからまだ先走ってはいけない。


 そして他の可能性もあり得る。例えば悪戯だとか嘘告だとか、俺の読む作品では俺のポジションにいる奴はそういうのを受ける傾向がある。それで後々に笑われたりとか、そうやって身分カーストの高い方々は楽しむらしい。


 ここで勝手に詮索して想像してまえば、下手をすれば落ち込むどころか、明日の希望を閉ざしかねない状況にある。


 それは、絶対にダメだろ。


 想像で先走ってしまい、恥を掻けばどうなるのか...


『あいつバカだなー、お前みたいな奴にラブレタ―が来る分けねぇだろ、ガハハハハ』


 みたいな感じになっても、おかしくはない。まずは、宛名を確認して...


 -三田 雄大君へ-


 そこには紛れもなく俺の名前が書いてあった。そしてその字は丸文字で、少なくとも男が書いたとは思えなかった。しかしながら、それで男の可能性を払拭はできない。


 ただ、ただまぁ少しいい気持になっても許されるだろう。


(ひゃっほ~)


 今にもスキップしそうになる、これがラブレターを貰う気持ちなのか。先は見えないけど、それでも嬉しいことに違いなかった。


 今すぐにでも中を開きたい気持ちがあるが、何故か何処かから目線を感じる。正直言なことを言えばロッカーを開けた時から感じていたものだ。

 

 恐らく勘違いだろうし、これラブレターで敏感になっているだけかもしれないが、それでも一抹の不安と、この後から人が増えることを考えると、ここで開くのは得策ではないと考える。


 一方で教室で開くとそれはそれで問題が出てくることが想像できる。友人二人のこともあるが、他のクラスメイトがいるところで、これを開くと自慢に見えちゃうかもしれないし。


 そうなれば、やはり教室まで戻るよりも他の場所で開き自分で処理をするのが適切だろう。振るにしたとしても受け入れるにしたとしても、俺は男であり相手に恥は欠かせない。


 そのため、どこで今からどこでこれを開くかを考える。そこで出てきたのはトイレの個室だった。トイレの個室で開けば誰にも見られないし覗かれることもない。


 また自分で処理をして、そして何かあればそれがあったという事実だけにできる。もしそれで良いことになれば、報告だって"実は..."という形で簡単にできる。


 我ながら完璧じゃないか?


 幸いなことに俺の教室の近くにはトイレがあるし、そこで開いて教室に帰り、なんでもない顔をできる。


 よし、これで行こう。


 とりあえずの予定はできたし、この先についても考えれた。不安はあるが、この際正直明るく考えておくことにしよう。そうしないと本気で不安しか残らないし。


 そんな風に考えつつ、廊下へと歩き出した。


 俺はその時真剣にこの後のことについて考えていた。故に俺を追ってくる、その背後の視線には気づいてはいなかった。

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