140 合同チーム3
地下40階のセーフティエリアで少し揉め事はあったが、勇者一行は出発。今回はクリスタがスピード競争をしていないが、パウリが足を引っ張ることが多くてかなり苦戦している。
「も、申し訳ないッス……」
地下50階まで進んだものの、お昼休憩の際に、パウリは悔しそうにクリスタに謝っていた。
「前も言ったでしょ? レベルが低いだけだからパウリのせいじゃないって。その分、私が頑張るから任せて!」
「勇者様……」
クリスタが励ましていたら、空気を読まないヤルモが声を掛ける。
「そろそろ班分け変えよっか?」
「え……いま、いい雰囲気だったんだけど……」
「雰囲気で解決はできないだろ」
「そうだけど~~~」
クリスタも解決策はないのだが、言ってしまった言葉を飲み込めないので納得がいかない。しかし、教師のヤルモには逆らえないので渋々話を聞いている。
「見てたけど、後衛もMPがきつくなってるだろ? 俺が入るから交代で抜けてくれ」
「「はい!」」
「私は??」
「勇者は……俺も指揮下に入ろっか? 上手く使ってくれよ」
「うっ……自信がない」
「パウリが二人いると思えばいいんだ。あとは大して変わらない。頼んだぞ」
「うん……」
パーティ編成が決まると、休憩を終えて出発。順番では、次はヤルモとイロナペアだったのだが、ヤルモは抜けているのでイロナが一人でモンスターの群れに突っ込んで行った。
「はやっ!?」
「な? 俺はオマケって言っただろ?」
一人でモンスターの群れと戦っているのに、落ちたスピードは三分の一程度。ヤルモがいない分大きく動けるから、本来のイロナの戦い方に戻ったので早く倒せたようだ。
「いまさらだけど、イロナの戦い方、よく見ておけよ。イロナと戦う時の参考になるはずだ」
「どうして私はあんな化け物と戦わないといけないんだろう……」
「俺に聞くな。俺もターゲットに入ってるんだ」
ヤルモとクリスタが仲良く肩を落としていたらイロナが戻って来たので、慌ててドロップアイテムを拾う。それから進んでいたら、オークジェネラルの群れに遭遇したので、準勇者パーティが戦闘を開始する。
「ヤルモさんとパウリで前進! ヒルッカちゃんは私とその後ろ。リュリュ君は詠唱が終わり次第ぶっぱなして!」
「「「はい!」」」
「おう!」
オークジェネラルも前進し、距離が詰まるとリュリュの広範囲攻撃魔法。そこそこダメージは入ったが、一匹も脱落はしていない。
それで怒ったオークジェネラルは足早に突撃。ヤルモとパウリが盾を構えて力いっぱい耐える。ただ、ヤルモは弾き返したと同時にパウリを支えていた。
「ヒルッカちゃんは近くのをお願い!」
「はい!」
ヤルモが弾き返してくれたおかげでオークジェネラルの隊列は乱れたので、クリスタとヒルッカが飛び出る。
クリスタは遠くのオークジェネラルを走りながら斬り裂き、ヒルッカはパウリが押さえているオークジェネラルを数度ナイフで斬ってすぐに離脱。ヤルモたちの後ろに戻った。
「いまだ。斬れ!」
「はいッス!」
パウリに押さえられていたモンスターは、ヒルッカに斬られて一瞬怯んだところをヤルモの指示。パウリもこのチャンスに一撃入れていたが、死ぬほどのダメージは入っていなかったので、ヤルモがトドメを刺していた。
「すみません……」
「気にするな。またすぐ来るぞ!」
パウリが申し訳なさそうにするがそんな場合ではない。クリスタが反転しようとしている。
「リュリュ君!」
「【ウインドランス】!」
勇者が合図を出した瞬間、詠唱を終えていたリュリュが援護。勇者を追おうとしたオークジェネラルは出鼻を挫かれる。
「お疲れさん」
「まだまだ。つぎ来るよ!」
ヤルモの後ろに戻ったクリスタは、労われても集中力は切らない。オークジェネラルが突っ込んで来たので声を張り上げる。
そうしてまた同じ展開に持ち込み、次々とオークジェネラルは倒れる。クリスタが残り僅かのオークジェネラルを殲滅するようにと指示を出し、残り一匹になったらヤルモは行動を起こす。
「ヒルッカ、パウリ。ほら? 最後は二人で倒せ」
「「ええぇぇ~……」」
二人が嫌そうな声を出した理由は、ヤルモがオークジェネラルを羽交い締めにして連れて来たからだ。
「足だけは気を付けろよ」
「「はい……」」
こうして二人は、バタバタしているオークジェネラルに交互に斬り付けて息の根を止めるのであった。
「イロナさんも規格外ですけど、パパも大概ですね……」
「本当に……力が強すぎるッス。……え? 親子なの!?」
コソコソとヤルモの常識の無さを語る二人であったが、ヒルッカがヤルモのことをパパと呼んでしまったがために、パウリを混乱させるのであった。
ヤルモがクリスタたちのパーティに属することで攻撃力が上がり、上手く立ち回ってくれるので戦闘速度は上昇。
その上、パウリやヒルッカにも経験値が入るので、地下60階のセーフティエリアに着く頃には、そこそこレベルが上がっていた。
「師匠! 勉強になりました!!」
そのせいで、食事の席ではパウリに持て
「お前には早くレベルを上げてもらわないと困るからな。じゃないと、俺がいつまで経っても抜けられない」
「師匠は勇者様の先生と聞きましたが、自分なんかよりも、師匠がこのままパーティに残ったほうがいいと思うのですが……」
「こういうの面倒なんだよ。勇者と一緒にいたら、自分のペースを乱される」
パウリとヤルモが喋っていたら、クリスタが聞き捨てならないと入って来る。
「確かに迷惑掛けてるけど、なんだかんだ言って、ヤルモさんも最近楽しそうにしてない?」
「俺が……楽しそうだと??」
「うん。出会った頃は、全然喋ろうとしなかったじゃない? 笑顔も増えたよ」
「そう……なのか」
今まで騙され続け、ずっと一人でダンジョンに潜り続けたヤルモだ。イロナと出会ってから、話し相手が5人も増えた。自分では気付かない変化があったのだろう。
クリスタに指摘されて、ヤルモは自分が楽しくしていたかもしれないと気付かされたのであった。
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