139 合同チーム2


 ヤルモとイロナの夜の営みについて遠回しに注意していたクリスタは、テントを張り直そうかと思ったが、男手が増えたことでもう終わっていたからその場に残ることにした。


「絶対に覗くなよ?」

「聞きたくない! わーわーわーわー」


 食事の席では、ヤルモも恥ずかしいから釘を刺すが、声と耳を塞いでバリアするクリスタ。オルガとのガールズトークでは盛り上がるくせに、オッサンからは詳しく聞きたくないようだ。

 ヤルモもあまり言い過ぎるのも恥ずかしいからか、それ以上の追及はやめていた。


 そうして食事を終えたヤルモはイロナとテントに入ろうとしたら、パウリに呼び止められていた。


「今日の戦闘、感動したッス! 盾職でもあんなにモンスターを倒せるんスね!!」


 どうやらパウリは、ヤルモからアドバイスをしてもらいたいから呼び止めたようだ。


「あ~。今日のは忘れろ。アレは、ソロで戦う時の戦い方だ」

「いえ、忘れられないッス! 自分もヤルモさんのようになりたいであります!」

「俺みたいになるな。なったが最後、お前は死ぬぞ」

「え……どうしてでありますか?」

「まず、弱いからだ。自分の身も守れないヤツに、俺の戦い方がマネできるわけがない」


 ヤルモが説教するとパウリは暗い顔をするので、簡単な助言に変える。


「いいか? これは本来の俺の戦い方じゃない。マネするなら、もっと下の階の俺を見ろ。話はそれからだ」

「わかりましたであります!」


 パウリが下がると、イロナの待つテントで横になるヤルモ。すると、イロナが首に手を回して来た。


「主殿の戦い方か……マネするのは難しいだろうな」

「まぁ一朝一夕でマネされたら、俺のこれまでの時間はなんだったんだと思うよ」

「しかし、勇者はそこそこ形になっていただろ?」

「あ~。そういえばそうだな。……勇者ってのは、パクるのも天才なのかもな」

「我の戦い方を見せていけば、行く行くは……クックックツ」

「いや、イロナの動き、見えないから……」


 ヤルモがツッコムが、勇者との死闘を夢見たイロナの怖い笑いは止まらないのであっ……


「おっと。今日の仕事を忘れていた」

「ちょっ! 勇者たちのテントが近いか、ら……あ……」


 いや、性奴隷としての仕事を思い出したイロナの笑いは止まり、その代わり、二人から気持ち良さそうな声が漏れるのであったとさ。



 翌朝は、ヤルモとイロナはスッキリ。クリスタとオルガは寝不足。その他はいつも通り。どうやら寝不足の二人はヤルモたちが漏らす声を聞いてしまい、悶々としてしまって眠れなかったようだ。

 しかし、今日の予定もこなさないといけないので、夜営の撤収をしたら気合いを入れて前進する。


 地下21階からはモンスターが少し強くなっていたので、クリスタは皆の意見を聞きながら作戦を細かく変えて進む。その苦労を見ているくせに、ヤルモとイロナペアはモンスターを一蹴。勇者パーティより早くに蹴散らしてしまう。


「うぅぅ。戦闘速度が上がらない……」

「みんなレベルがバラバラなんだから仕方がないだろ。無理して速度を上げるなよ」

「わかってるよ~」


 やはり、たった二人で同じだけのモンスターを自分たちより早く倒されたら、勇者パーティとしては気になるらしい。そのせいでクリスタに邪念が生まれ、さらに戦闘速度が落ちるのであった。



「言わんこっちゃない」

「だって~」


 地下40階のセーフティエリアでは、ヤルモの説教。クリスタが作戦をミスって、何度もパウリが瀕死にまで追い込まれたのだから、この説教は当然なのだ。


「だってじゃない。これが接戦だったら、パウリが落ちた時点でパーティは瓦解するんだぞ」

「でも、ヤルモさんたちが早いから……」

「俺が早いんじゃない。イロナが恐ろしく早いんだ。俺なんてただのオマケだ」


 ヤルモが説得するが、クリスタはあまり納得していないようなので、違うアプローチをしてみる。


「25階までは100点満点だったのに、早さを意識してからは台無しだ」

「そんなに点数高かったの!?」

「あ~あ……あの調子で行ってたら気分よく褒められたのにな~」

「うっそ~。それならそうと、早く褒めてよ~」


 クリスタは「褒めてくれたら無理して飛ばさなかった」と言っているが、ヤルモは「褒めていたら調子に乗って飛ばしていたのでは?」とか考えている。オルガも同じ考えをしていたらしく、ウンウン頷いていた。

 しかし褒められていたと知ったクリスタは、今日の反省会をして、明日には褒めてもらおうとするのであった。



 翌日……


 ヤルモとイロナは今日もスッキリ。リュリュだけは寝不足で、クリスタたちの女子テントから出て来た。


「な、なんで……リュリュはいつもそこで寝ているのか??」


 いくらイロナとお楽しみをしていても、ハーレム展開を許せない心の狭いヤルモは焦ってしまう。


「いえ……昨日、変な声が聞こえていたから怖くって……」


 どうやら今回は、ヤルモとイロナの営みはリュリュしか聞いていなかったようだ。


「パウリがいるから怖くないだろ??」

「パウリさん、寝たらピクリとも起きないんです~。それも、目を開けたまま寝てるからもっと怖いんです~」


 そりゃ、おばけが出ている最中に、相方は目を開けたまま爆睡中では怖いのであろう。なので昨日はオルガに招き入れてもらい、ふくよかな物に包まれて寝たらしい……


「リュー君のエッチ……」

「羨ましいであります!」


 もちろん、リュリュに気のあるヒルッカも、一般的な男のパウリも、リュリュの行為は許せないのであった。

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