038 ミッラの趣味
イロナの足技にタピオがノックアウトさせられた翌日……もとい! 上級ダンジョンをクリアした翌日。タピオは股間が痛くてしばらく動けなかった。
しかしノックの音で朝食が運ばれたのだと気付き、寝ているイロナを起こさないように気を付け、重たい体を引きずって朝食のワゴンを受け取る。
その時、「昨夜も凄かったですね。でも、もう少し声は小さくしてください」と注意を受ける一幕があった。
タピオは謝罪して部屋に戻ると、イロナを優しく起こして朝食を食べる。その席で、イロナは「昨夜はどうだった?」と質問していたが、タピオが「痛かった」と正直に言ったら、めちゃくちゃ落ち込んでいた。
「いや、でも、最初は凄く気持ちよかったぞ!」
イロナがあまりにも落ち込んで見えたタピオは焦って励ます。
「そうか! では、今晩もやってやろうじゃないか!!」
それが失敗。イロナが喜んで朝から夜のメニューを提示するので、結局は断って、また落ち込ませるタピオであった。そうでもしないと、タピオのタピオが取れるからの英断だ。
それから今日は、一日中ダラダラ。宿から一歩も出ずに、二人でベッドに寝転んで穏やかな時間を過ごす。
しかしタピオは、目の前に二つの膨らみがあるからつい手を伸ばして揉んだりしたものだから、イロナまでその気になってタピオのタピオを握り潰すので、それ以降は触れられなくなっていた。
夜の押し売りは断るタピオ。イロナが落ち込むと、昨日は三度も発散したからと言い訳していた。大ダメージでも、二回もイロナがしてくれたのだから感謝の言葉を送っていたので、なんとかイロナも納得してくれた。
翌日も、二人はお休み。イロナはダンジョンに行きたそうだったが、装備の手入れや買い出しがあったので、お
腕を組んで歩き、デートコースの武器屋に入り、イロナ用の剣を二本購入。A級ということもあり、ここでの武器では一番いい物だが、これよりいい剣を手に入れるには王都へ行かないと無いので致し方ない。
そのことで王都行きの話をイロナが思い出していたようだが、説得してなんとか納得させていた。
そして夜にはイロナの押し売りがあったが、ダメージを受けたままダンジョンに行きたくないタピオ。一番被害がなく、お互い満足のできる見せ合いっこで、窮地を脱して眠る。
翌日には、予定通り上級ダンジョンに潜る。タピオの装備は階層が増える前はしょぼいし、腕を組んで歩く二人は相変わらず他の冒険者に変な目で見られていた。
セーフティエリアでは勧誘もあったが、イロナが力で捩じ伏せ、逃げるように先へと進む。
一度潜ったダンジョンということもあり、タピオとイロナは完璧に最短コースを進み、無理のない程度で宝箱を回収する。
中層を越え、最深部のダンジョンボスをクリアしたのは、前回より12間ほど早かった。
「はい。これで本通行証が発行されます。あとはダンジョンボスを倒したら、どの町の上級ダンジョンでもフリーパスで入れますからね」
夕刻間近に冒険者ギルドに寄ったタピオたちは、いつもの猫耳受付嬢ミッラからドロップアイテムの料金と通行証を受け取った。
「また中層までの最短記録を更新していますけど、どうやっているのですか?」
「別に……普通にやっているだけだ。変な詮索はやめてくれ」
「あ、失礼しました」
冒険者に攻略の秘訣を聞くのは御法度。この情報は、冒険者が売ることのできる商品なので、ミッラがタダで聞くわけにはいかないから素直に謝罪していた。
「それとですね……お二人を探しているパーティが二組いるのですけど……」
コソコソと喋るミッラは、指でわっかを作っていたので、タピオはお金を支払って買わないといけない情報なのかと悩む。
しかし、自分を探しているとなると故郷での出来事が頭をよぎり、仕入れておかなくてはいけないとの判断となって財布を取り出した。
「我等を探しているとは、どのような人物だ?」
「じ、実はですね!」
空気を読まないイロナの質問で、ミッラはペラペラ喋る。かなり苦手意識を持っているので致し方ないが、そもそもお金を取って話すような内容ではなかった。
「こないだの周回パーティと、トウコってヤツのパーティね~」
「まぁ周回していたパーティは厳重注意しておきましたので、手を出して来たら報告してください。それで冒険者カードは剥奪になりますからね」
「そういうことか。助かるよ」
「いえいえ。再登録でお金が取れますので……。トウコさんのパーティは用件を言わなかったらしいですが、いい人たちなのでたいした用事じゃないと思いますよ」
「アレがいい人だと……」
ミッラと喋っていたタピオが嫌な顔をすると、イロナも同じ顔をして頷いていた。なのでミッラは、二人がからまれているのだと受け取るが、自分の記憶の中のトウコと
「女の人とは喋ったことはありませんけど、トウコさんはすっごくいい人ですよ。いっつもチップくれますもん!」
どうやらミッラの基準は、お金をくれるか否かで決まるらしく、悪い男に騙されないかと少し心配になるタピオであった。
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