020 中級ダンジョン2
中級ダンジョン地下12階……
イロナは襲い来るゴブリンの群れを蹴散らし、タピオはゴブリンの攻撃を喰らっても無視して魔石を拾っていた。
「なんだあの二人……」
そこに偶然出くわした男女混合の冒険者パーティが呆気に取られて見ている。
「男のほう、ゴブリンに殴られるわゴブリンメイジの魔法も喰らっているよな?」
「女のほうなんて、剣も抜かずにゴブリンを蹴ってるぞ……それも、全部一発だ」
どうやらタピオとイロナの行動が異常すぎて、ずっと見続けているようだ。
「あ、終わったみたい……でも、なんで??」
「腕を組んだな……あの二人には、こんな危険な場所でもデートなのかも」
「「「「「嘘(でしょ??)だろ??」」」」」
女がタピオとイロナが腕を組んだ姿を見て疑問を口にしたら男がボケるのだが、結局は全員で首を傾げるのであったとさ。
* * * * * * * * *
タピオとイロナはべったりくっついて先に進み、初級ダンジョンとは違って、宝箱なんかも探していた。
「お! 今回は二個だ。でも、怪しい感じだな」
適当に入った小部屋で二個の宝箱を発見したタピオは、イロナに近付くなと言ってアイテムボックスから虫眼鏡を取り出す。
「あ~……やっぱり片方は人食い箱だ。もう一個は何か入ってそうだから、回収しておくか」
タピオは左の箱を開けて中身を取り出すと、薬草だったので「ハズレか~」とか言いながらイロナの元へ戻る。
「主殿は面白い物を持っているのだな」
「これか? まぁ一人で潜っているからな。できるだけ危険を回避するように、鑑定グラスを使っているんだ。ま、人は鑑定できないんだけどな。もしもシーフ辺りがいれば、こんな高いアイテム買う必要なかったんだけどな~」
「人族は、そんな面倒なことをして進んでいるのか」
「トゥオネタル族は違うのか?」
「だいたいこんな感じだ」
タピオが質問すると、イロナは閉じている宝箱に近付く。
「フンッ!」
そして踏み付け。その一撃で宝箱型のモンスター、人食い箱はなんとも言えない表情を浮かべながらダンジョンに吸収されていった。
「トゥオネタル族に装備できる武器防具も少ないからな。これで耐えられないなら必要ないから、宝箱は全てこうしている」
「もったいない……」
文化の違い……かなり高いレベルの装備以外、トゥオネタル族は踏み潰していたと聞いたタピオは、お金を踏み潰していると感じて悲しそうな顔になっていた。
「でも、そのやり方はありだな……今度から俺もそうしよっと」
いつもはみすみす人食い箱を見逃していたタピオであったが、まさか宝箱に攻撃をするという目からうろこのやり方を知って試すようだ。
「お! イロナのおかげでいい物拾った」
「なんだ?」
「こいつはたまに、オリハルコンの欠片を落とすんだ」
「また細かい物を拾うのだな」
「これでもかなりの額がつくんだぞ。これ一個で、昨日の稼ぎとトントンか、それ以上ってところだ」
「そんなにか。ならば人食い箱を中心に狙っていくか」
「あはは。人食い箱自体が少ないし、めったに落とさないからな~」
珍しく上機嫌なタピオの腕をイロナは組み、地下へと潜って行く。残念ながら人食い箱は少ないが、当たりハズレを二人は楽しみ、本当にデートしているかのようだ。
たまに出くわす冒険者パーティには変な目で見られているが……
そうして地下18階に到達すると、モンスターの強さがちょびっとだけ増したようだ。
「オーガか……さすがに一撃とまではいかなくなって来たな」
「蹴りでだろ? イロナの得意攻撃じゃないし、まだまだ手加減してるだろ?」
「バレていたか」
「俺の時とは音が違うし……てか、俺なんて本気で二発も殴ってやっとだ」
「主殿こそ得意武器ではないだろう」
「あ、忘れてた……ま、いっか」
「だな」
いまだに武器の出番が来ないのでタピオとイロナは笑い合い、腕を組んだまま先へと進むのであった。
* * * * * * * * *
その二人の戦闘をたまたま見ていた正当派パーティは……
「なんか凄い武道家カップルを見たんだけど……」
「俺も見た……でも、どっちも武術を習っているように見えなかった」
「お前もアレぐらいしろよ」
「できるか! オーガは硬くて重いんだそ! 拳が砕けるわ!!」
なんだか正当派パーティの武道家はいじられるネタとなっていたが、二人は気付かず進み続けるのであったとさ。
* * * * * * * * *
地下19階。宝箱も探していたからすでに夕飯時になっていたので、次のセーフティエリアで夜営にしようかと話し合って進む。
そうしてウルフの群れをぶっ飛ばして進んでいた二人は、地下へと続く階段の近くでオークの群れに囲まれた若い冒険者パーティを発見した。
「あのままでは全滅してしまいそうだな」
「まぁな~。でも、俺たちには関係ないし、横を抜けてしまおう」
「それでは助けるようなものではないか?」
「さあ? 運が良ければ助かるんじゃないかな?」
「フフ……変わったヤツだ」
タピオとイロナは腕を組んで壁際を歩き、静かにオークの群れを抜けようとするが、そうは問屋が卸してくれない。二人に気付いたオークが二匹、走り寄って来た。
一匹は、タピオが腕を掴んで壁にぶち当てて撃沈。もう一匹は、イロナに蹴られて遠くに吹っ飛び、こちらもダンジョンに吸い込まれる。
これを合図にオークの群れは、若手パーティとタピオパーティに分かれて戦いだした。
タピオとイロナは、迫り来るオークのほとんどを一撃で
そこでタピオは、指だけでオークが来てると合図し、そのままオークの群れを抜けて階段近くの一際大きなオーク。オークジェネラルと対峙するのであった。
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