第24話 まさかの共闘

「じゃあその出来損ないに負けたお前は何だって言うんだ? メドロック」


「フッ、さすがにもう兄とは呼んでもらえないか」


「当たり前だ」


 こいつとは二度と会いたくなかったが、仕方ない。今使える手はすべて使う。


「こいつ、魔王領の雲が晴れる機を窺っていたらしくてな。どうやら俺たちの魔王討伐に一枚噛もうとしていたらしい」


 ゼストさんが解説する。酸の雨を攻略できないから国境付近で待機していたのか。なんだか笑えるな。


「もう一度問おう。アレス。実家に戻るつもりはないか?」


 メドロックは懲りずにそんなことを訊いてくる。


「どうでもいい。そんなことは。とにかく今は力を貸せ、【王国の矛】」


「仕方ない。今は共闘といこうか。【王国の盾】」


 俺はもう王国を捨てた身なんだがな。


 酸の豪雨が降り注ぎ、徐々にこの塔も腐食していく。もう長くはもたない。あれを使うか。


「【城塞召喚・エアリアル・フォートレス】」


 塔は消え去り、全員が空中要塞の中に転移した。


「ほう。これで酸の雨を防いだか。だがこれで勝ったつもりか?」


 セーレはなおも余裕そうだ。


「お前たちは、私と同じ空気を吸い過ぎた」


「まずい、離れろみんな!」


 レイカさんが斬りかかり、セーレの動きを止める。


 その間に俺たちは部屋の端まで後退した。


 そうか。


 雨の魔女と呼ばれているからには、水蒸気と化し、空気中に混ざっている雨粒も支配できるということか。もしそんなものを体内に取り込んでいたら、肺を破壊されてしまう。


「右肺から潰してやるか」


 刹那、レイカさんの右胸が弾け、どくどくと血が流れ出した。


「ぐっ……」


 どうにか踏みとどまってはいるが、苦悶し顔を歪めている。


 やはり。


 雨の魔女は体内に取り込んでしまった雨粒まで支配する。これでは全員命を握られているのと同じだ。


 だが、その気になれば全滅させられたはず。そうしないということは、雨粒の操作には距離の制約などがあるのか?


「さて、この女の命が尽きるまで、昔話でもしようか。魔王アドラメレクは友人などではない。私を雨乞いのため、生贄に捧げようとしてきた村長だ」


 やはり。伝説は本当だったのか。


 だがなぜあんな姿に?


 いや、違う。


 今はそんなことより、攻略法を考えなければ。


「【星穿ち……」


「やめろメドロック。レイカさんまで巻き込むな」


「どうせあの女は助からないだろ」


 相変わらずの畜生ぶりだな。


「レイカさんは俺の命の恩人だ。もしそんなことをしたら、召喚を解除して酸の雲に叩き落してやる」


「分かったよ。すまなかった」


 すまなかった、だと? なんて軽い受け流し方だ。やはりこいつとの共闘は一回限りだな。

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