第23話 尖塔旋穿

「アレスくん。さっきの【スカイツリー突き】を」


「へ? 【スカイツリーヅキ】? なんですそれ?」


「さっきの青い尖塔だよ。床が透けてるやつ」


「あぁ。【城塞召喚・尖塔旋穿】」


 俺はさっき考えた技名を叫ぶ。またしても塔が出現した。俺たちも中の部屋に自然と入り、上昇する。


「【尖塔旋穿】? 何をカッコいい名前を付けているんだ。【スカイツリー突き】だろそこは」


「はいはい。で、上へ行って何をする気なんです?」


「雨の魔女セーレを待つ」


 レイカさんは剣の柄に手をかける。全面ガラス張りの部屋で、俺は雲を見上げる。


 本当に奴は降りてくるのか? 口封じのため、『友人』と言っていたアドラメレクでさえ殺すような奴だ。警戒心は高い。このまま逃げられているということもありえる。


「逃げたかと思ったか? レイカ・タニガワ?」


 突然セーレの声がした。


 どこから入ってきた?


 全く反応できなかった。


 だが、レイカさんは素早く抜剣し、セーレと斬り結ぶ。


「よい建物だな、アレス・ルーラオム。これと空中要塞が奥の手か? だったら壊してやるよ。魔王領の雲全てを使ってな」


 奴が雨の魔女と呼ばれているのは、魔王領の周辺に酸の雨を降らせ続け、他国の侵入を阻んでいるからだ。その酸の雲を、一か所に集中させるつもりか。


「させるか!」


 レイカさんは嵐のような剣閃を連続して叩き込むが、全て防がれた。


 メドロックをも手玉に取ったレイカさんの剣技でも、やはり敵わないというのか。


 そんなことを考えている間に、雲の形は徐々に変わっていく。


 まずい。この建物も溶かされる。


 ゼストさんは行方不明のままだし、打てる手がない。


 そう思った瞬間、深紅の光を纏った矢が飛来した。窓ガラスが衝撃で全て砕け散り、セーレも一旦後退する。


「苦戦しているようだな、出来損ないめが」


 ゼストさんの天空竜ウラニアに乗って現れたのは、意外な人物だった。

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