第22話 魔王討伐

「どういう趣味をしていやがる」


 なぜガラス張りの床にしたんだ? 未来人の考えることはよく分からない。後でレイカさんにでも訊いてみるか。


「私の城をこうも派手に壊すとはな。いい度胸だ。人間」


 不意に声がした。振り返ると、黒い外骨格に覆われた悪魔が立っていた。まさかこいつが?


「魔王アドラメレクか?」


「いかにも」


 次の瞬間には、魔王の剛爪が眼前に迫っていた。


「やば……」


「アレス様!」


 だが、アドラメレクの片腕は、斬り飛ばされていた。


「何が起こった?」


「私は元々魔剣ですよ? アレス様。こんな悪魔の腕を落とすくらい、訳ないことです」


 剣の姿に変身していたヴィヴァーチェが自慢げに言う。


 というか、どっから声を出しているのだろうか。


 まぁいい。助かった。


「ほう。さすが、単騎で私に向かってきただけのことはある。魔剣を従えていたとはな。ならば、」


「させねえよ」


 魔王は次なる攻撃の予備動作に入るが、俺はそんな隙を与えるつもりはない。


「【城塞召喚・解除】」


 とたんに床が抜け、魔王と俺たちは落下を始める。


「ふん。この程度の高さから落としたところで……」


「【城塞召喚】」


 俺は魔王の右側へ、横向きに建物を召喚する。レイカさんの記憶にあったコウソウビルというやつだ。


 魔王は横へ吹っ飛ばされそうになるが、どうにか受け切る。だがそのままにはしない。俺たちが地面にぶつかるまでのわずかな時間内に、魔王を倒し切る。


「【城塞召喚・六連】」


 上下左右四方向からの、コウソウビルによる息もつかせぬ突きを繰り出す。反撃の隙は与えない。


 そんな攻撃を六回も続けると、魔王の外骨格は完全に破壊されていた。


 俺たちもちょうど地面に激突しそうになった。


 相討ちか。


 だが、戦場に散る覚悟ならもとよりできている。これはこれでよい最期なのだろう。


「終わりだな。やれ。ヴィヴァーチェ」


「おっと。そこは私がやろう」


 見ると、レイカさんが俺を抱きかかえていた。


「あまり自殺行為のような戦い方はするなよ、アレスくん」


「すみません」


「だがまぁ、大質量のコンクリートの塊をぶつけまくるという無茶苦茶な戦法は、君くらいにしかできないだろうな」


 レイカさんは俺を地面にそっと置き、瀕死のアドラメレクに向かっていく。


「雨の魔女について、知っていることを吐け」


「フッ、そんなことを訊いてきた冒険者はお前が初めてだ。いいだろう。教えよう。奴は呪いの権化。今からちょうど千年前に……」


 と言いかけたとたん、アドラメレクの身体は爆散した。血の雨が降り注ぐ。


「口封じか。雨の魔女セーレ。近くにいるな」


 レイカさんは天上を睨みつけた。

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