第21話 奥義【スカイツリー突き】

 目が覚めると、冷たい石の床に寝かされていた。


「ここはどこだ?」


「気付かれましたか! アレス様! 何ともないですか?」


 ヴィヴァーチェが縋りついてくる。なんで剣の姿に戻ってやり過ごさなかったんだ?


 というかここ、牢獄じゃないか。雨の魔女のアジトなのか?


「うるさいぞ貴様ら」


 鉄格子の間から、赤く光る眼が俺たちを睨みつけていた。


「デーモンナイト……魔王の近衛兵を務めるモンスターか」


 甲冑を纏った、有翼の黒い悪魔だった。俺は図鑑で見たモンスターが目の前にいることに感心してしまう。


 近衛兵がいるということは、俺は魔王城に囚われていたのか。ひとまず雨の魔女に殺されなくてよかった。


「ルーラオムの血を引く者は生かしておけん。貴様らは魔王様の前に引きずり出し、公開処刑される予定だ」


「なぜルーラオム家をそこまで憎む? 俺の先祖が何かしたか?」


「さぁな。セーレ様が憎まれているのだから殺す。それだけだ」


 なんという思考停止ぶりだ。俺は呆れてしまう。まぁ近衛兵に求められる資質は十分に満たしているのだろうが。


「もういい。お前からは何も情報を得られそうにないな。そろそろ出させてもらう」


「は? 何を言っている? どうやって……」


「【城塞召喚】」


 俺はレイカさんと共有した記憶のうち、ひときわ高い尖塔の外観を思い浮かべた。


 すると、青い光と共に俺たちは綺麗な内装のガラス張りの部屋に移動した。窓ガラスからは、尖塔に貫かれて崩壊していく魔王城の建物が見える。


「この程度で死なないでくれよ? 魔王アドラメレク。お前から聞き出したい情報は山ほどあるんだからな」


 尖塔は意外に高く、しかも床が透けていたため、俺とヴィヴァーチェは足がすくんでしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る